テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
47
106
コメント
1件
読了しました……。この話、Ი𐑼の「止まれ」の短い命令から一気に引き込まれました。責めず否定せず、ただ事実だけを伝えるあの声の冷たさが、逆に安心できるって不思議ですよね。👁️🗨️が「見えるものを言え」から少しずつ世界を取り戻していく描写が繊細で、胸がぎゅっとなりました。かほさんのこういう心理描写、本当に好きです。次も楽しみにしてます🖤
崩れた視界
部屋の音が急に遠くなる。
👁️🗨️の視界が揺れていた。
聞きたくない言葉。
見たくない顔。
それらが一気に重なって、頭の中で散らばる。
「……っ」
息がうまく吸えない。
胸の奥が詰まる。
思考がまとまらない。
ただ“逃げたい”だけが強くなる。
「やめて……」
声にならない声。
手が震えて、どこにも置けない。
世界が速すぎる。
⸻
「👁️🗨️。」
声。
Ი𐑼はそこにいた。
いつも通り。
表情は一切変わらない。
でも、その声だけははっきりしている。
「止まれ。」
短い命令。
👁️🗨️の動きが一瞬止まる。
でも頭の中はまだ騒がしい。
「今、お前はパニックだ。」
事実だけを言う声。
責めない。
否定しない。
ただ“状態”を言い切る。
⸻
「呼吸。」
「吸え。」
「ゆっくりだ。」
Ი𐑼の声が一定のリズムになる。
逃げるためじゃない。
戻すための言葉。
「見えるものを言え。」
👁️🗨️の視線が揺れながら、部屋を見る。
「……机……」
「続けろ。」
「……床……手……」
少しずつ、世界が形を取り戻す。
⸻
「いい。」
Ი𐑼は一歩も動かないまま続ける。
「今のお前は“情報過多”だ。」
「全部処理しようとするな。」
「今は減らせ。」
一拍。
「一つずつだ。」
⸻
👁️🗨️は小さく息を吐く。
まだ完全には戻っていない。
でも、少しだけ“今”に戻ってきている。
「……うるさくて……」
かすれた声。
「全部、同時に入ってきて……」
言葉が途切れる。
⸻
「それでいい。」
Ი𐑼は即答する。
「壊れていない。」
「処理が追いついていないだけだ。」
⸻
少し沈黙。
そして短く言う。
「ここにいろ。」
「今はそれ以上しなくていい。」
「戻るのは後でいい。」
⸻
👁️🗨️の肩から、少しだけ力が抜ける。
まだ揺れている。
でも、崩れ続ける方向ではない。
「……はい。」
その返事は、かすかに現実に戻ってきていた。