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管野アリオ
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「本当、ですか……?」
先に想いを伝えたのは朝陽の方だというのに信じられないものを見るように目を見開いた。
「本当だよ」
そんな朝陽に亜佑美は少し照れながら微笑む。
「私もね、ずっと朝陽くんと友達以上の関係になりたかった。でも、もし告白して断られたらって思ったら怖くて……どうしたらいいのか分からなかったの」
「俺、亜佑美さんから告白されて断るなんて絶対ないです! そんなの有り得ません!」
勢いよく返された言葉に亜佑美は思わず笑みをこぼした。
「ふふ、ありがとう。でもね、一緒にいる時間が心地良かったからこそ怖かったんだよ。もし駄目だったら、この関係まで失うんじゃないかって……」
「亜佑美さん……」
朝陽は愛おしそうに亜佑美を見つめる。
「でも、良かったです。もちろん告白してもらえるのも嬉しいですけど……男としては、やっぱり俺から伝えたかったので」
「朝陽くん……」
真っ直ぐで不器用なくらい誠実な人で、そんな朝陽だからこそ亜佑美は惹かれたのだと改めて思う。
ようやく想いが通じ合い、二人が恋人同士になれたその時だった。
亜佑美のスマートフォンが再び震え、画面に表示された名前を見た朝陽はすっと手を差し出した。
「亜佑美さん、貸してください」
亜佑美が戸惑いながらもスマートフォンを渡すと朝陽は迷いなく通話ボタンを押した。
「もしもし」
『あれ? この電話、木葉 亜佑美さんのものじゃ……?』
亜佑美の電話に掛けたのに聞こえてきたのが男の声だったことを不審に思った力弥が尋ねてくると、
「そうですけど?」
朝陽は落ち着いた口調で答えていく。
『は? それじゃあ亜佑美さんが出ないのはおかしいだろ!? 何なんだよ、お前』
「亜佑美さんの彼氏ですけど?」
『は? 訳分からねぇこと言ってんなよ。いいから亜佑美さんに代われって』
「それは出来ません。本人が嫌がっていますから」
ここまで会話を交わした力弥は電話の相手に心当たりがあるのか、
『お前、もしかしてこの前の……』
言いながら露骨に苛立った声を上げたけれど朝陽は少しも怯まない。
「だったら何ですか?」
それどころかむしろ挑発するように言い返していく。
「亜佑美さんは貴方からの電話やメッセージに迷惑していますので、今後一切止めてください」
『おい――』
「それでは失礼します」
そして、言いたいことだけを伝えた朝陽は最後まで力弥に言わせることなく一方的に通話を切った。
静かになったスマートフォンを亜佑美へ返しながら朝陽は少しだけ不満そうに眉をひそめた。
「もう掛かってこないといいんですけど」
その横顔を見た亜佑美はくすりと笑う。
「多分、大丈夫じゃないかな?」
「だと良いですけど……もしまた困ったことがあればすぐに言ってください! 俺、直接会ってでも止めさせますから!」
「ありがとう、頼りにしてるね」
真面目で誠実で誰よりも頼もしい、そんな自慢の恋人が隣に居ることが亜佑美はとにかく嬉しかった。
その後、近くの喫茶店で軽く食事を済ませた二人は車に乗り込み、朝陽は亜佑美の自宅へ向けて車を走らせた。
食事中はさほど意識していなかったのに、こうして二人きりになると急に落ち着かなくなる。
夕方、告白される前は、どこへ行くんだろうという期待で胸が弾んでいたけれど、今は行き先が自宅でこの時間が終わってしまうのが分かっているだけに亜佑美の胸の奥に寂しさが広がっていて、流れていく夜の景色をぼんやりと眺めていく。
一方の朝陽は、どこか憂いを帯びた表情を浮かべる亜佑美を横目に見ながら首を傾げていた。
喫茶店を出るまではいつも通りだったからこそ、何故急にそんな表情をしているのか分からなかったのだ。
やがて車は亜佑美の住む町へ入り、マンションまでもう少しというところまで来る。
その瞬間、亜佑美はぎゅっと拳を握りしめた。
(このまま帰ったら、きっと後悔する)
そう思ったからだ。
「朝陽くん……」
そして、意を決したように名前を呼ぶ。
「は、はい!?」
突然声を掛けられた朝陽は驚きながらも視線を向けたけれど、亜佑美は俯いたまま何か言いたそうに唇を動かしては止めていて、その様子に朝陽は心配そうに声を掛けた。
「あの、どうかしましたか? もしかして俺、何かしちゃいました……?」
すると亜佑美は小さく首を振りながら、「違う」と答え、そして消え入りそうな声で呟いた。
「……まだ、帰りたくない……」
「え……?」
その言葉に、朝陽の思考が一瞬止まる。
そしてすぐに思考を巡らせながら、
「あっ、すみません! 気づかなくて! どこか寄りたい場所があったんですね。言ってくれれば――」
「違うの」
即座に否定されて朝陽はますます混乱した。
何が違うのか分からず戸惑う朝陽を見て、亜佑美はとうとう痺れを切らしたらしい。
顔を真っ赤にしながら顔を上げ、そして少しだけ頬を膨らませて拗ねたような表情を浮かべながら、
「そうじゃなくて……」
一度言葉を区切り、恥ずかしさを押し殺すように続ける。
「まだ、朝陽くんと離れたくないから……帰りたくないの」
その言葉を聞いた瞬間、朝陽の心臓が大きく跳ねた。
コメント
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「両片思いがようやく通じ合った…!もう告白シーンから胸が温かくなりました。朝陽くんが『男として伝えたかった』って言うところ、不器用だけど真っ直ぐで本当に素敵ですね。力弥さんとの電話対応も、毅然としていて彼の頼もしさが伝わってきました。ラストの『まだ帰りたくない』は…もう、亜佑美さんの切ない気持ちが痛いほど伝わってきて、こちらまでドキドキしました。二人の距離が変わって初めての、あの甘くて照れくさい空気感がすごく良かったです。この先、どういう関係を築いていくのか、すごく気になります…!素敵なお話をありがとうございます。」