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「私は、まだ臆病だったようだな……。愛にも、仕事にも……」
自戒するようにそう呟くと、「真中の処分は、自らに任せよう」と、彼が意を決したようにも口にした。
「えっ……、自らにって、任せてしまっても……?」
彼なりな判断だったけれど、それでいいんだろうかという気も少なからずあった。
「……いいんだ」と話して、彼が私の髪を手の平でそっと撫でる。
「私は、もっと早くに気づくべきだったんだ。彼を……真中を思いやっているつもりで、本当には何を考えているのかを知ろうともしなかったことに……」
さっき彼が口にした、『相手を思うふりで、実は相手の思いを汲むこともなく、ずっとないがしろにしていたのかもしれない』というセリフのわけを、ようやく理解する。
「でも、真中さんの裏にある本音に気づけなかったからと言って、貴仁さんが彼を黙認するのは……」
「黙認ではない」
私の話に応じて、彼が首を左右に振る。
「真中が抱えていた心情は汲んだ上で、進退は自らに任せる。──それが、組織というものだ。私から辞めさせれば、彼は不当な解雇だとメディアに通告することもできる。たとえ真中当人に罪があろうと、虚偽のリークなどいくらでもできるのだから。もしもそれで、圧力によるトカゲのしっぽ切りだとでも噂が立てば、KOOGAの名前自体に傷が付いてしまう。ならば集めた証拠を盾にして、彼の責任の取り方は自身で決めさせなければならない」
そう語る彼の顔には、もう先ほどまでの弱気さなどは微塵もなく、まさにKOOGAの王とも云うべき威光が備わっていた──。