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翌朝。
校門へと続く並木道。隣を歩く遥との距離は、昨日までとは少しだけ違う。
指が触れそうになるたび、二人して不自然に歩幅をずらしては、また意識してしまう。
「朝倉、遥。……朝っぱらからニヤけてんじゃない。校門をくぐるまでは気を引き締めろ」
聞き覚えのある鋭い声に、私たちは揃って肩を跳ねさせた。
振り返ると、そこにはポケットに手を突っ込んだ小谷先生と、その隣で可笑しそうに肩を揺らしている成瀬先輩の姿があった。
「いいじゃないですか先生! ほら見て、二人ともなんだかキラキラしちゃって。……紗南ちゃん、よかったじゃん! 遥くん、やっと覚悟決めた?」
成瀬先輩が私の肩を抱き寄せて、自分のことのように嬉しそうに笑う。遥は顔を真っ赤にして頭を下げた。
「……おはようございます、成瀬先輩。そんなんじゃないですから……」
「嘘おっしゃい。顔に『幸せです』って書いてあるわよ」
成瀬先輩が楽しそうに遥をからかうのを、小谷先生が「よしなさい、成瀬」とため息混じりに制した。
先生は私を真っ直ぐに見つめ、ふんと鼻を鳴らしたあと、ほんの少しだけ口元を緩める。
「……朝倉。お前、いい顔になったな。……その景色、絶対忘れるなよ」
先生の言葉に、私は胸を張って、はっきりと答えた。
「はい!」
先生は満足げに頷くと、成瀬先輩を連れて先に校舎へと歩き出した。
言い合いながら歩く二人の後ろ姿。私は、以前聞いた「あの合宿」の話を思い出し、彼らの間にある長い年月の重みをふと感じた。
「……おい、行くぞ」
遥が私の手を軽く引き、前を見据える。
私たちは新しい一歩を踏み出し、朝の光が満ちる教室へと向かった。