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大江戸高校の文化祭『大江戸祭』が目前に迫り、校内は異様な熱気に包まれていた。 至る所で女子生徒が黄色い声を上げ、男子生徒は意味もなく廊下を走り回り、普段は厳しい教師たちも「今日くらいは」と仏のような笑みを浮かべている。
そんな「キラキラした青春」の真っ只中、なんでも屋の部室だけは、冬のシベリアのような冷気が漂っていた。
「……新八。あの廊下の飾り付け、全部燃やしてきなせェ。眩しすぎて、俺の網膜が焼き切れそうでさァ」
ソファで丸まっている坂田誠の目は、いつもの5倍は死んでいた。
「銀さん、ダメですよ! あれは1組のみんなが徹夜で作ったお花紙なんですから! むしろ協力しなきゃいけない立場ですよ、僕ら!」
「嫌でさァ……。あそこで無理に高い声出して笑ってる男子どもを見なせェ。ありゃあ、祭りの魔力に当てられただけの操り人形でさァ。……あー、反吐が出る。甘ェもん……甘ェもんを持ってきなせェ」
誠は、銀時としての「はしゃぐ空気への嫌悪感」がピークに達し、普段のドSな攻撃性が消え、愚痴の止まらない**「面倒くさいツッコミ役」**へと変貌していた。
そこへ、準備に余念がない他のメンバーたちが乱入してくる。
「ねえ誠、出し物の『爆弾たこ焼き』の試作ができたわ。……全部に本物の火薬(クラッカー)を仕込んでみたんだけど、口の中で銀河が広がるわよ?」 **レゼ(渚)**が、パチパチと音を立てている皿を差し出す。
「広がらねェよ! 広がるのは救急外来のベッドだよ! 食べ物で遊ぶのはやめなせェ!」 誠がキレのあるツッコミを飛ばす。
「フッ……この学園を、漆黒の闇で塗りつぶす演劇の台本が完成したぞ」 **高杉(晋)**が、ポエム満載の台本を突き出す。
「塗りつぶす前にその包帯をほどきなせェ! 準備期間中にその中二病キャラを突き通す勇気だけは認めますがね、見てるこっちは恥ずかしさで心臓が爆発しそうでさァ!」
「坂田ァァ! お前もサボってないで、この『マヨネーズ神輿』を担げェェ!」 **土方(護)**が、巨大なボトルの形をした神輿を引きずってくる。
「担ぐかァ! 誰が自分の学校の文化祭で脂肪分を崇めるんでさァ! 先生! このマヨネーズ馬鹿を早く止めてくだせェ!」
視線の先には、準備で浮かれる生徒たちを優しく見守る教師の姿。 「まあまあ、坂田くん。今日くらいはみんなで楽しくやろうじゃないか(ニコニコ)」
「……あの笑顔が一番怖ェよ。この世界のルールが壊れてやがる……」 誠はついに頭を抱えて座り込んだ。
結局、なんでも屋の出し物は、誠の強い希望により**『人生相談(愚痴聞き屋)』**に決定した。
「いらっしゃいやせ……。悩みがあるなら言いなせェ。どうせあんたのその悩みも、祭りが終わればゴミ箱行きでさァ……」
死んだ魚の目で、淡々と客(とは名ばかりの冷やかしの友人たち)にツッコミを入れ続ける誠。
「銀さん、それ接客じゃなくてただの毒舌です! でも……」 新八がメガネを拭きながら、ふと気づく。
「……なんか、今日だけは僕よりツッコミが鋭いですね」
「うるせェ……。早く、早く日常に戻してくだせェ……。このキラキラした世界じゃ、俺の魂が蒸発しちまう……」
祭りの喧騒の中、一人だけ「平常心」という名の地獄に落ちた誠。 彼の長い長い文化祭(準備期間)は、まだ始まったばかりであった。