テラーノベル
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秘密基地奥にある広間から響く声は、交戦中のレジスタンスと〝C・H・O〟の団員達にも聞こえていた。
「矢上先生、〝豹口鬼〟と〝炎猫鬼〟って何なんです?」
「フラウロスは魔法陣で縛らないと嘘を語ることで有名で、アイムはエジプトの女神が悪鬼に堕とされたとも伝わる、どちらもソロモン七二柱に数えられる強大な魔神よ」
遥花が生徒たちの質問に答える間にも。
黒山が変じた、全長五メートルの豹顔の魔人〝フラウロス〟が、天井に転移させた像や柱の残骸が雨のように降り注ぎ――。
凛音が無理矢理変えられた、全長三メートルの四つ足の魔猫〝アイム〟が咥えた松明から放たれる炎が広間を焼き尽くす――。
「桃太君!? 紗雨ちゃん!? 乂君!?」
「そんな、嘘でしょう!?」
遥花達が救出に向かうすべもなく、桃太達は絶命を待つのみだった。否!
「乂、ここは憑依解除で回避して立て直すぞ!」
「おうよ!」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は乂の仮面と黄金の短剣を一度外し、光の粒子となって落下物と炎を回避。
「紗雨ちゃん、やるぞお」
「サメっサメエ。待ちに待った出番サメエ!」
桃太は空飛ぶ銀色のサメこと紗雨を抱きしめ、左手に巻くヒビの入った勾玉に力を込めた。
「舞台登場、役名変化――〝行者〟。サメイクヨー!」
乂の肉体が仮面から蛇に戻り、黄金の短剣が錆び付くのと引き換えに、白銀の光がほとばしり、左手の勾玉が修復される。
同時に、桃太は真っ黒な忍装束から一転し、白衣に鈴懸を羽織った法衣姿となり、左目の上には、紗雨が変じたサメ顔の仮面を被っていた。
「サメエエエドリル!」
桃太は左手に水の掘削器を作り上げると、右手で黄金の蛇となった乂を掴んで地面を掘り進み、窮地を脱した。
「もはやわしを止められるものなどおらん。なんだとお!?」
「サプライズ? お前、サッカーを知らないようだな。勝負は延長戦ロスタイムの後だぜ!」
「乂、PK戦は残っているんだろうな? 俺は黒山を倒し、リッキーの仇を討つ。三縞代表のことは頼んだぞ!」
桃太は蛇姿の乂を、凛音が変じた魔猫の方角へ投げつけた。
「ああ、桃太。アイツのことは任せておけ」
黄金の蛇が光に包まれて、人間の肉体を取り戻す。
深紅の瞳と美しいストレートの金髪を持つ美男子は、背中に『漢道』と刺繍した革ジャンを素肌の上に羽織り、太腿の付け根から裾まで広いドカンめいたボトムを身につけ、足には金属輪で補強したライダーブーツを履くというド派手な格好で、ボロボロになった広間に着地した。
「凛音。こんな形で再会したくはなかったが、昔と違って、今のオレには頼れる相棒と、うるさいが可愛い妹分がいるんだ。やってみせるさ! 舞台登場 役名宣言――〝二刀剣客〟!」
乂は黄金に輝く短刀を腰に差したまま、巨大な魔猫を相手に、相撲でも取ろうとばかりに挑みかかる。
「ふん、刀も使わずに〝二刀剣客〟を名乗るとは、役名詐欺もいいところだな」
背後から、先ほど倒したばかりの宿敵から、呆れたような声が飛んでくるが、乂の背中はまるで揺るがなかった。
「おいおい、刀ならここに二本の手刀がちゃあんとあるじゃないか。アンタだって似たような戦い方をしていた癖に」
「こいつは、一本取られたな。まあいい、俺サマも一枚噛ませてもらおう。五馬乂、炎さえ乗り越えられればなんとかしよう」
そして不良青年の隣に、両腕を失った灰色のざんばら髪の剣鬼が並んだ。
「鷹舟俊忠。嘘つき野郎め、この時だけは信じるぜ」
「俺サマは嘘ばかり吐いてきた。しかし、凛音だけは裏切らん!」
#追放
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