テラーノベル
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すると、その時
「うっわ……!」
スマホが鮮やかな光を画面に灯し、音を鳴らす。ピリリ、ピリリ、と無機質に。
メッセージの受信はもっと短い音のはずだ。
ということは、メッセージの返信ではなく電話である。
誰、誰がこんな時間に。
夜中、しかも部屋に一人きりという時にこの音は三十を超えた男としてもなかなか恐怖心を煽るものである。
案の定、ちょんまげの肩も僅かに震えている状態だ。
以前見た怖い映画の類だったらどうしよう。
そんな事今まで考えもしなかったのに、ただ今は怖くて無機質に鳴るスマホをじっと見つめる。
意を決して誰が電話をかけてきているのかを見た。もし非通知とでも書いてあったら今度こそ眠れなくなってしまう。
だが、そこに表示されていた名前を見た途端、ちょんまげは瞬時に電話に出たのだ。
「ターボー…⁉︎」
声は喜びではちきれそうだったが、一人といえど今は夜。ひっそりとボリュームを落として相手の名を呼ぶ。
恐怖を宿した瞳はどこへやら、キラキラと星が映ったように光り本当に嬉しそう。
「ごめんなさい。もしかして起こしちゃった?」
『いや、大丈夫』
そうは言うがターボーの声はくぐもっている。起こしていない事が事実だとしても、これは明らかに寝入る直前だっただろう。
申し訳ない事をしたという罪悪感がちょんまげに沸くけれど、それよりも電話をかけてきてくれたことに対する喜びが大きくて。
「てかわざわざ電話?」
『だってそっちの方がちょんまげ喜ぶだろ?』
「何言って…!」
電話越しにターボーが笑っているのが伝わってくる。
本心をズバリ言われちょんまげの頬は真っ赤だ。反抗してみても語尾が掠れてしまっているので迫力はない。
『…で、眠れないのか?興奮して』
「……バッ…!誰が興奮してるって!それはターボーの方でしょ!」
『まぁこんな時間ですから』
「いや、否定してよ」
クスクスと笑いを堪えながらターボーの声に耳を澄ませる。
ターボーの声は温かくて心地が良い。
耳を低音でくすぐり、眠れなかった不安もちょっとの恐怖心も全部吹き飛ばしてくれるようだ。
それもこれもちょんまげがターボーを好きだからなのだけれども。耳からじんわりと広がる温もりに酷く安心する。
「―――…何かターボーの声って気持ちいい」
『そうか?』
「…うん、何かボーっと…するっていうか…」
ちょんまげの言葉の歯切れが悪くなる。
切るべき所ではない所で文章が切れたり、妙な間が開いたり。
『ボーっとする…ってちょんまげお前、それ眠くなってきてるんじゃないか?』
「そう…かも…」
ターボーが苦笑する。
そう言ったが最後、電話の向こうからは安らかな寝息が聞こえてきた。小さく、規則正しく、でもしっかりと。
愛する恋人の声を聞いて安心しきったのだろうか。小さく拳を握り眠る姿は、母親の声を聞き眠る幼子のよう。
『ちょんまげー、ちゃんと電話切れよー』
ターボーが電話の向こうで笑ったが、その声はもう既にちょんまげ自身には届いておらず。
愛する恋人の声の温もりの中、ちょんまげはまどろみへと落ちた。
END
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