私の名前は三嶋朋子(みしまともこ)。どこにでもいるような普通のOLだ。しかし一つだけ普通ではないところがある。それは私が『転生者』であるということだ。
この世界に生きる人々は、生まれた時から魂を持っている。肉体が死んだらまた新しい体に生まれ変わるのだ。
だがごく稀に、死んでもまた別の人間として生まれる人がいる。それが『転生者』と呼ばれる人達なのだ。
なぜ自分がそうなったのかはよくわからない。気づいた時にはもう既にこの世界の人間ではなかったからだ。
最初は戸惑ったが、今はすっかり慣れたものだ。今の体は二十歳前後なので、記憶も鮮明に残っている。
今生きている時代では魔法が発達している。おかげで生活はかなり楽になった。電気の代わりに魔力を使った照明器具が普及しており、テレビなどの電化製品もある。
魔法を使うために必要なものは『魔導書』と呼ばれている本である。この本は誰でも読むことが出来るのだが、一度読んだだけでは効果がない。何度も読み返し、実践を繰り返していくことでようやく使えるようになるらしい。
もちろん私もその本を何冊も読んできた。今では簡単な魔術なら使うことも出来るようになった。
「ただいまー!」
家に帰ってきた私は元気よく挨拶をした。返事はないが気にしない。一人暮らしだからだ。
私は家に帰るなり玄関で靴を脱ぎ散らかしリビングへと向かった。
「ただいまー!あぁ~疲れた!」
しかし誰もいない部屋からは当然のように何も返って来ない。私は少し肩を落としながらも鞄を置きスーツを脱いだ。
それからお風呂に入り、ご飯を食べテレビを見ながらゴロゴロしていたらいつの間にか22時を過ぎていた。今日は特に予定もなくダラダラしてしまった。明日も仕事なので早く寝ようと思いベッドに入ったもののなかなか寝付けなかった。
仕方ないのでスマホを手に取りSNSを開いた。
『もう寝てるかな?』
私は友人に向けて言った。「君の小説に足りないものは、これだよ」
彼女は答えた。「うん。わかっているよ」
この世に完璧というものは存在しない。だが、それに近いものはあるはずだ。完璧な文章というのは存在しないかもしれないが、それに限りなく近いものがあるはずなのだ。
私の友人の書いた短編小説を読んで思ったことを率直に述べた。
「君の小説に足りていないものがわかった」
「どんなところ?」
「『情熱』だね」
「うーん。確かにないかなぁ」
「うん。全然違うね」
「でもなんで?」
「えぇっと……」
「あ!わかった!」
「『愛』だよね!?」
「うん。そうだよ」
「『あい』っていう字は『I』と『A』の組み合わせだし、『愛』って漢字自体が『アイラブユー』の略だからねぇ」
「それにしても意外だったよ」
「だっていつも冷静沈着じゃん」
「そんなイメージがあるから」
「あぁ~でもわかるかも」
「でもそういうところも好きだけどね」
「ふぅん。そうなんだ」
「なんか照れるなぁ」
「じゃあさ」
「僕が君のこと好きだって言ったら付き合ってくれるかい?」
「うん。いいよ」
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