TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

黒い影に包まれそうになった瞬間、アランは意識を引き裂かれるような感覚に襲われた。

――“君が選ぶんだよ、アラン。”


その声とともに、目の前の風景がまた一変する。

広場は消え、代わりに現れたのは見覚えのある場所――リリスと最後に話した、小さな湖のそばだった。


「ここは……?」


目を見開くアランの前に、一人の少女の背中が見える。淡い金の髪、静かに水面を見つめていた。


「……リリス?」


アランが声をかけると、その少女はゆっくりと振り返った。けれど、顔ははっきりと見えない。霧がかったように、ぼやけていた。


「アラン。あの時、私が何を考えてたか知りたい?」


まるで夢の中のような口調だった。

アランは震える声で答える。


「……お前を助けたかった。それだけだ。」


少女の表情が、ほんの一瞬だけ微笑んだように見えた。


「“あの時”に戻りたいと思ったことはある?」


アランは答えられなかった。


“もう一度……“あの時”に戻ろうよ”


その言葉の意味が、少しだけ分かる気がした。

戻るべき“過去”には、リリスの後悔も、アランの無力さも、すべてが残っている。


「でも、もう戻れない。だから――選ぶしかないの。」


少女は指を差した。するとアランの背後に、再び“今”の荒れ果てた世界が見えた。

そしてその向こうには、影に包まれながらもなお、希望を失っていないフィオナとカイルの姿があった。


「選んで、アラン。未来か、過去か。」


心が引き裂かれそうになる中、アランは静かに目を閉じた。

そして、言葉を絞り出す。


「……俺は、終わらせない。“今”を変える。お前の言葉に縛られない。」


少女の姿がスッと消え、視界が暗転した。


次の瞬間、アランは荒野に倒れ込むように戻ってきた。カイルが支えてくれる。


「おい、どうした!? 今、光に包まれて――」


アランはうつむきながら答えた。


「……見たんだ。“あの時”を。戻れないけど、前に進めるって……信じたい」


フィオナが静かに頷く。

「じゃあ、進もう。影の言ってた、世界を“終わらせない”ために」


アランは立ち上がった。もう迷わない。この世界と、リリスの運命を背負って。

この作品はいかがでしたか?

8

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚