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「――とりあえず、お化粧を直しましょうね」
介添人の女性が、手早く涙で崩れた愛美のファンデーションとチーク、そしてアイメイクを直してくれた。
「……まだ少し目が赤いですよね。彼は気づくでしょうか」
純也さんは優しい人だから、もし気づいたとしてもきっと気づかなかったふりをしてくれるだろうけれど。他のカップルの場合はどうなんだろう?
「他の新郎様の場合ですと、気づいて指摘される方とあえて気づかなかったふりをされる方がいらっしゃいますね。そこはご主人の性格次第なのではないでしょうか」
「そうなんですか。じゃあ、彼はきっと気づかないふりをしてくれると思います。わたしの知っている彼はそういう人なので」
愛美が気づいてほしいと思っていることにはさりげなく気づいてくれるけれど、気づかないでいてほしいと思っていることには、もし気づいていたとしても知らん顔をしてくれる。純也さんという人は、出会ってからずっとそういう人だった。
「さようでございますか。新婦様はステキなご主人に巡り会われたんですね。本日はまことにおめでとうございます」
「ありがとうございます」
愛美はそんなステキな男性と結婚できる幸せを改めて噛みしめた。
「――ところで、新婦様は先ほど施設のご出身だとおっしゃっていましたが。本日はどなたか式においでなのですか?」
「はい。大学までの親友が二人と、親友のお兄さまと、施設の園長先生と他にも職員の方が何人か。あとは高校時代と大学時代の寮母さんも招待しています。それから仕事関係で、お世話になっている文芸レーベルの編集長さんと担当編集者さんも」
新郎側の親族席には辺唐院家の人たちが大勢来ているだろうけれど、新婦側だって人数では負けていない。そこに千藤ご夫妻と天野さん、佳織さんも招待しようかと思ったけれど、今は農作業が忙しくて東京までは来られないらしい。
「――では、新郎様がお待ちでございます。そろそろフォトスタジオまで参りましょうね」
「はい」
愛美はスツールから立ち上がり、ブーケを持って介添人の女性の後をついて行く。靴のヒールが高くて少し歩きにくいけれど、「ゆっくりでいいですからね」と前から声をかけてくれるのでゆっくりと一歩一歩進んでいった。
#純愛
からむーちょ😝💥💚
152
#感動
猫ハチぷりん🐈🍮
11
からくり時計
67
コメント
1件
あー、もう、この回泣けるわ……。愛美が「純也さんは気づかないふりをする」って信じてるところが、二人の積み重ねを感じさせてじんわりきた。施設出身って過去があっても、今はたくさんの人に祝福されてるのが本当に尊い。新婦側の顔ぶれも温かすぎるし、ヒールで歩きにくそうな描写も愛美らしくてほっこりした。True Ending、着実にいい最終章を走ってるな🔥