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「瀬古さんは、ちょっと面倒やけど下手に出といて向こうに情持たせたらこっちのもんですよ」
ほのりに、ちょっと微妙な線をいくアドバイスをくれたのは木下だ。
「ん?」
週末に木下と偶然会い、好きだと自覚してしまってから数日が経っていた。
相変わらず営業の瀬古と打ち解けることのないままなのを、気にされているのだろうか。
首を捻りつつほのりは、ははは……と乾いた笑いで返した。
「それって後々面倒な関係じゃん」
「や、瀬古さんあれでザ・人情で生きてるから一瞬でも懐入ってもたらそりゃもう悪いようにはせん人ですよ」
「へえ……」
続いて、中田は、山内は……と。木下の演説めいたアドバイスが続く今は昼休み。
「あ、それよりさ。今日もよろしくね」
ほのりは演説をぶった斬り昼からの話題へと話を逸らそうとする。
ここ数日、午前中は溜まっていた事務作業をこなし、昼からは木下とともに客先への挨拶にまわっているのだ。
「はい、こちらこそ」
ニカっと歯を見せて笑う、少年の面影残る笑顔はどうしたって可愛くて困る。
ほのりは目を泳がせながら、次の話題を探した。
「そ、そういや木下くん量足りる?」
「ん? 飯っすか?」
「うん」
週が明けてから、昼からはほのりと行動を共にするため事務所に戻る木下。
なぜかお決まりのようにランチに誘われるのだが、彼は細いのによく食べる。
食べているのにこのスタイルを維持できているのは素直に羨ましい。
定期的に体を動かしているからなのだろうか。
「いっつもラーメンやらチャーハンやら大盛りでしょ。今日は可愛い量じゃない?」
「あー、ほんまっすね。まあええんですよ、吉川さんと一緒のとこ入りたかったし」
(……そうでございますか)
可愛くない量を食べる木下の本日のランチは、見渡す限り女性ばかりのイタリアンカフェだ。
客層が客層なので、ランチセットの量も中華セット大盛りに比べるとやはりボリュームダウンしてあるだろう。
それを気遣ったなら、含みを持たせるでもなくさらりと木下は言ったのだ。
さらには、そんなセリフを吐いておいてまわりの熱い視線や、かっこいい、この辺のビルで働いてる人かな? なんてコソコソと話す声には気が付いていないのか?
「居心地悪くない?」
「え、うまいっすよ」
腹減ったらまたなんか食いますわ、と笑う木下に、いや聞いたのはそれじゃないのよ、と突っ込みたくなる。
「めちゃくちゃ見られてるの、嫌じゃないの?」
「あー」
さすがに、刺さる熱い視線には気がついていたのか困ったように笑うけれど。
「別に知らん人から顔褒められても、面倒ですし」
(なるほどな)