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『ねぇねぇ』
「ん?」
いつも通りの平和な昼下がり、一緒に昼ごはんを食べていた先輩が不意に声をかけてきた
『今度の休みさ、一緒に映画行こ』
(それは…デートのお誘い? )
「それはデートですか?」
『……そうともいう…かも、ね?』
ぷいっとそっぽを向く先輩は緑の髪から覗く耳が赤くなっている
「!…へへ、はい、行きましょ!」
『じゃ、またにゃいんで時間とか決めよ……じゃね!』
パンをむぐっと口に詰め込んで先輩は教室へ戻って行った
ー約束の日
「…ちょっと早く着きすぎちゃったなぁ」
今日は先輩と映画館に行く日
楽しみで張り切ってしまって20分早くついてしまった
「先輩来るまでどっかで時間潰すか…」
『ぇ』
「え?」
待っていた声がすぐ目の前で聞こえ、ケータイを触ろうと落とした視線を慌てて上げる
「せ、先輩?」
『は、ゎ、は、早かったね!!僕とのデート楽しみすぎて早く来ちゃったのかにゃ〜!?可愛いンゴねぇ〜!』
視線が交わった瞬間ぶわわっと耳まで赤くしたかと思うと全力でバカにするような顔でガハハと笑っているが、顔は赤いままだし若干涙目なため、虚勢であることは一目瞭然だった
「……先輩こそ、楽しみで早く来ちゃったんじゃないですか?」
なんだか可愛くっておかしくって、ニコニコとしながら先輩へ詰め寄る
『そ、そんなこと、ないもん…』
たじ…と少し後退する先輩は視線をあちこちへ泳がせる
「…ふふ、少し早いですけど、行きましょっか?」
じっと見つめているとだんだんと縮こまっていく様子は可愛らしく、思わず手を握ってしまった
『っ、!……ん、映画まで、時間あるし…別んとこも見るか……』
握られた手をびっくりした目で見てから小さく頷くと、きゅっ、と優しく握り返してくれた
それからは映画の時間までショッピングモールを回った
「そろそろチケット買いに行きましょっか」
『ん、ポップコーン食べたい』
「さっきもスイーツ食べてませんでした?」
『ポップコーンは別腹!』
「あははっ!いいですよ、一緒に食べましょうか」
『んむ!』
映画館でチケットとポップコーンを買い始まるまでにまだ少し時間はあるがそのまま会場へ向かった
先輩は広告を見るのも好きなようで楽しそうに映画の広告などを見ている
『ね!ね!あの映画さ、公開されたら見たいんだよね、面白そうじゃない!?』
『あ、この女優さん知ってる!あのね〜○○のドラマで出てて〜…』
『このゲーム新作出るんだ、僕も買おっかなぁ?買ったら一緒にやる?』
そうやってはしゃいでコロコロと変わる話題の中でも、俺と一緒に、という前提なのが本当に可愛い
「いいですよ、一緒にやりましょうか」
『ん!…あ、はじまるよ』
映画がはじまってからも先輩はおしゃべりで
『わぁー、すごい、映像がすごいよ、見た今の?すごいよ!(小声)』
『あの子可愛いね!ひゃ〜!すごい!(小声)』
基本的に「すごい」「やば」「わぁ〜」しか言ってないが、全力で楽しんでることがすごく伝わってくる
案外涙脆いようで途中でグズグズと鼻をすすっていたり服の袖で目元を拭いたりしていた
映画が終わってから、先輩はすごく満足気に笑う
『よかったねぇ〜!いいラストでした、最高!面白かったぁ〜!』
泣いていたからか少し目が赤く、鼻もすすっている
「すごい泣いてましたねw」
『んなっ、!あれは泣くだろ!だって!主人公が〜…!!』
また思い出し泣きのように瞳が潤み始めた
「ははっwさぁさぁ、早く出てもう少しぶらぶらしませんか?」
目をこすって拭いている先輩にそう声をかけ、手を引いて外へ連れ出した
不未 No.4
969
3,056
ᴿ ᴵ ᴺ🩵⚽
337
先輩は少し照れたように笑って手を恋人繋ぎのように絡ませ握り返してくる
それからはクレープを食べたりお互いの好きなところに交互に行ったり
夕方まで、沢山話してとても楽しんだ
『…そろそろ帰らなきゃだ』
「もうそんな時間でしたか?じゃあ、お開きに…」
“お開きにしましょうか”
そう言おうとすると、先輩は顔を伏せてしまった
「…どうしました?」
『…………………駅まででいいから、送って』
すごく悩んだような、長ーい間を開けてから小さく呟く
「!…先輩がよければ、家まで送りますよ?」
『っ、!!し、しょうがないなぁ!この僕を送りたいだなんて、、、と、とくべつだぞ、』
繋いでいた手を強く握りしめて前を歩く先輩
いつもと違ってハーフアップにセットされている髪から赤く染っている耳がのぞいていた
電車に乗って先輩の家まで送る
その間先輩は沢山喋っていると思いきやじっとこちらを見つめて黙ってしまったり、慌てて視線を外して会話を再開したり……忙しない様子で表情もコロコロ変わった
『あとはここを曲がって真っ直ぐ行くと僕の家〜』
繋いでいる手を少し後ろに引かれ歩くペースが段々とゆっくりになっていく
「……次は、先輩の家まで迎えに来ますね」
『つぎ……そう、だね、』
もうあと少し、数メートルのところで先輩は足を止めてしまった
「先輩?っわ、!?」
『……っ、!//』
ぐいっ!と胸ぐらを引っ張られ体勢を崩した
チュッ…
『……っ、つ、つつつぎっ、次はっ、!…ッ名前!で!!呼ぶことを許してやる!!!じゃーね!!!おやすみ!!!!///』
今にも泣き出しそうなほど涙を溜め真っ赤にした顔で吠えると、走って家へ入っていった
「……へぁ、?////」
俺はと言うと、驚きと可愛さと困惑でぽかんとしてしまって、その後どうやって帰ったのか記憶が定かでは無い。
【fin】