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*.꒰ঌ𝕐𝕦𝕚𝕜𝕒໒꒱.*
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*.꒰ঌ𝕐𝕦𝕚𝕜𝕒໒꒱.*
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夏の陽射しは強く、頬に当たる風は生温い。だが、太陽を見上げるとこも頬を拭うこともなく、壮太は黒い革靴を前へ前へと進める。
立ち止まってはいけない。
振り返ってはいけない。
立ち止まってしまったら、今の壮太の心を表すように足が鉛のように重たくなって、そこからはもう一歩も歩けそうにない。
ちょうど正午のサイレンが、夏の青い空の中に響く。
『思い出せないんです…』
それがどういう意味なのかは、わからなかったが、もう会いたくないと思っていた男が目の前に現れたときの驚き、ショック、困惑、そのどれも藍の表情には浮んではいなかった。ただ本当に初対面の人に向ける眼差しを藍は壮太に微笑んだ。
「初めまして…」
「おーい、ちょっと待って、待ってくれ。七瀬くん」
どこかで名前を呼ばれている気がして、壮太は振り返った。すると藍の父の貴憲が白いビニール袋を抱えて駆けて来る。
「きみ足速いんだね。陸上選手だったとか」
壮太に追い付いて、肩で大きく息をしながら貴憲が言う。陸上なんてやったこともなかったし、足が速いと言われたのも今までなかった。
「追いついてよかったよ。これ大判焼き。持っていって」
息を整えながら、半ば強引に抱えていたビニール袋を押し付ける。今はそんな気分ではないのだが、それを突き返すことは壮太にはできず受け取ったビニール袋は温かった。
「それときみ、湊川高校の子なのかい? ああ、ごめん。さっき藍と話しているところを聞いてしまった」
壮太はうなずいた。
「もしかして壮太くん?」
壮太は大きく目を見開いた。
「やっぱり…、そうか、きみが壮太くんか。藍がね、壮太、壮太って高校生の頃よく言っていたんだ」
首筋に流れる汗を壮太は感じた。同じように首筋に流れる汗を、首から下げていた白いタオルで拭う貴憲と並んでしばらく歩いた。貴憲が話しを続ける。
「とうとう藍にもボーイフレンドができたんだって思ったね。僕は男親だから喜ぶというよりショックもあり、いい男かどうか見定めてやるから連れて来いっていう強気な気持ちにもなったり複雑な思いだったね。でもあの頃だけなんだよ。藍が嬉しそうに男の子の話をしたのは」
「何があったのでしょうか? 藍さんは当時のことを思い出せないのだと言っていましたが」
困惑した顔つきのまま壮太が聞く。
貴憲がうつむいた。かぶっていた野球帽を脱ぐと、両手で強く握り締めた。その当時のことを思い出そうとすると胸が潰されるようで、かすれる声で貴憲は言う。
「近所の歩道橋の一番上から足を滑らせて、転がり落ちたんだ」
「そんな…。そんなニュース…」
知らない、聞いていない、テレビでもそんなニュースは見ていないと言うように、壮太はただ首を左右に振るしかできなかった。
コメント
1件
うわ、第4話…めっちゃ重い展開きたね😢 藍さんが壮太くんのこと完全に忘れてて「初めまして」って言うシーン、胸がギュッてなったよ。それに歩道橋から落ちたって…そんな事故があったなんて。貴憲さんが思い出そうとすると胸が潰されるって言うのもリアルで、この家族に何があったのか気になって仕方ない。壮太くんの立ち止まれない感じも、走り続けるしかない感じも伝わってきた。続き、絶対読みたい…!