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明日提出の課題終わらなくて無理
こんなことしてる場合じゃなさすぎる笑
創作
⬇
「大丈夫?」
自分がさしていた傘を差し出す
こんなにも雨が降っている中傘もささずに座っている君がいた
君はびしょ濡れで、虚ろな目をしていた
まるで世界の全てに呆れて、何もかも諦めたような顔
「ぁ、」
ようやく僕の存在に今気づいたかのような反応をした
それでも他に何も反応を示さない
そうすると何かを言おうとしているのか、
口を動かしているが何を話しているか周りの車や話し声で聞き取れない
埒が明かないので無言で君の手をとり屋根のあるカフェまで連れていった
手を取った時、一瞬驚いた素振りを見せたが
それでも、君は無言で、期待をしている目をしているように感じた
カフェに着くと空いてる席へと案内された
そこに向かい側に座って君が話し出すのを待っていた
虚ろな目をしたまま、焦点が合わないその目を
ふと外の景色に目を向けた
若干の気まずさと心配を持ちながら話しかけてみた
「ねぇ、なんであそこにいたの?」
君は何も話さない
むしろ、少しこちらを睨んできたような気がする、
「ぁ、ごめん!聞かれるの嫌だったよね!ごめんね!」
それでも、君は何も話さない
でも、少し表情が柔らかくなった気がする
本当に分からない
君はなんであそこにいたの
どうして雨の中座っていたの
どうして、そんな目をしているの
「ねぇ、」
低くて鋭い声
少し怖い
「な、なに、」
恐る恐る返事をしてみる
すると君は言った
「なんで、」
「なんで放ってかないの」
予想外の質問にびっくりした
よく見るとその虚ろな目にはうっすら涙が浮かんでいた
ていうか、てっきりなんで余計なことしたんだとか
お節介だとか、責められると思っていた
だって、客観的に見たらただ座っていた人の手を引いて無理やりカフェに連れていったのだから、
それは言われても仕方がないか
それより、なんで、だったか
「特に理由なんてないよ、君が辛そうだったから」
そのとき思ったことをそのまま伝えた
そんな目をしている君を、放っておけなかったから
君はその虚ろな目をこっちに向けて言った
「聞いて、くれる?」
「…うん、なんでも聞くよ」
なんで、そこまで世話を焼いたのか自分でもよく分からない
君は言った
親に家を追い出されたのだとか
年齢は16歳
フードを被っていてよく見えなかったけど、よく見れば傷だらけでぼろぼろだった
家庭環境が悪くていつもは殴られたりするだけだったが遂に家を追い出されたのだと、
行く場所もなくて座っていたら雨が降ってきたらしい
警察に行けばよかったんじゃ?とも言ってみるが警察に行くという考えにはならなくて宛もなく街を漂っていたと、
親も親でバカだな
外に逃がしたら警察にでもなんでも言いに行くのになんで逃がすんだろ、自分だったらそんな甘い考えはしないな、なんて
最低な考えが浮かんできたけど今は目の前の君が泣きそうで、辛そうで、見るに絶えなくてそんなくだらない思考は放っておいた
それに、警察に行く考えがなかったと言っていたから、それくらい親に従って生きてきたのだと分かる
君の目から雫がこぼれ落ちそう
それは雨だったのかもしれない
辛そうだな、苦しそうだな
「そっか、」
そんな君を前に何ができるのだろう
「お会計で」
「ぇ、」
「いこ」
あそこで見捨てても良かったはずなのに、
面倒事は嫌いだ、巻き込まれたくもないし
なのに、どうして君は見捨てられなかったのだろう
そのままお会計をして君の手をとる
「あ、」
「うちくる?」
自分の家に着いた
そして、ドアを開けて気づく
これ誘拐になる???
まぁ、人助けだと思えば大丈夫かと思考を放棄して君に話しかける
「おいで、お風呂入ろ」
すると君は顔を少し赤くして言った
「ひとりで、入れるから、」
たしかに、この歳はひとりで入れるか笑
「ん、入っておいで笑」
「お風呂、ありがとうございました」
お風呂上がり自分のシャツを貸した
若干サイズが違うけどまぁいっか
「もう疲れたでしょ」
「寝よっか」
自分の部屋のベッドに向かう
すると君は袖を引っ張ってこう言った
「一緒に、寝てくれませんか…」
小恥ずかしいのか目を逸らし、小さく控えめな声でそう言ってきた
正直驚いた
さっきまで警戒心MAXで正直家にも着いてきてはくれないと思っていたのに
でも、君はずっと1人だったんだ
たまには人と寝るのも悪くないよね
少し微笑みながら優しく話す
「いいよ、行こうか」
腕の中でぐっすり寝る君
さっき少しちらっと見えてしまったが、
体には頑張った証拠がたくさんある
「今まで辛かったね」
ぼそっと呟くが君にはもう届いてない
届かなくていい
今、ここだけは安心して眠ってほしい
おやすみ
朝、アラームの無機質な音で目が覚める
腕には暖かいぬくもりがあった
下を見るとまだぐっすりと眠る君
その寝顔を見るだけでなぜか安心した
今日は特に予定もないし、朝話し合ってこの子がどうするかを考えるくらいだったなと回らない頭を動かして今日の予定を思い出す
たまにはいいか
もう一度眠りにつく
まだ、安心していてね
「ん”、…」
「今何時…、?」
あくびをしながら掠れた声でそう呟く
久しぶりに沢山寝たからか
それとも昨日色々なことがありすぎたからか
少し体が痛い
目を開けると目をしぱしぱさせた君がこちらを見ていた
「おはょぅ、…ございま、、…」
「最後まで言えてないし、笑」
寝ぼけた声で言う君に愛おしさを感じていると同時にこれからのことについての真剣さを持つ
「おはよう、顔洗って、朝ごはん食べたら少しお話しよっか」
朝、ソファーに腰をかけ君に聞く
「どうしたい?これから、」
少しの沈黙が流れる
急に言われても困るよなとも思いながら返事を待つ
口を開いた
「家に、帰りたくない」
「だから…警察に、行く」
「…そっか」
目には少しの不安と覚悟が滲んでいた
この子に取っての最もいい選択肢なんか分からない
ただ、その選択肢はこの子がただ前に突き進むためだけの通過点
将来元気に過ごせていればそれでいいと思った
「警察署まで着いていくよ」
「ありがとう」
そのあとは結構ぱっぱと進んだ
君の身体を見ればすぐに
それに近所からの証言もあり
親はあっけなく逮捕され、君は施設に行った
誘拐にならないかとか心配もしていたがそれはこの子の証言のおかげで逮捕されずにすんだ
そして施設に行く前、君は去り際に言ってくれた
「ありがとう!またどこかで、」
「大好き!」
20xx年後
「あぁー、雨降ってきた、…」
「どーしようかなー…」
最悪だ、家に鍵を忘れて家に入れない…
おまけに雨が降ってきた、傘も持っていない
コンビニで傘を買おうにも財布には10円玉2枚と一円玉が5枚しか入っていない
そもそも雨宿りのできそうな場所がない
やばい、風邪ひくわ、
とりあえずどこか座る場所を探す
すると見覚えのある場所にたどり着いた
「…元気してるかな」
あの日、雨が降っていた日、君が座っていた場所
無言でその懐かしい場所に座る
今思うと、傘を差し出したけどもう間に合わないくらいにびしょ濡れな君を連れ回して、
誘拐になるかもとか心配して、笑
最後はいい結果になってよかったけど、
あの時の君は虚ろな目をしていたな
家を追い出されて絶望しているところに雨が降り出してきたら生きる気力さえも失うと思う
でも、よく頑張ったと褒めてあげたい
あそこで傘を差し出して良かった
救われたと君に思ってもらえるのなら、あそこで見捨てなくてよかった
あぁ、懐かしいことを思いだしたな
でもそんな少し暖かい思考に反して身体は冷たく限界を迎えている
雨に打たれて寒い、帰りたい
そんな思考がぐるぐると頭を駆け巡る
膝を抱え込み顔を下に向ける
もうやだな、と諦めかけたそのとき
雨に打たれる感覚がぴたっと止んだ
「ぇ、?」
横を見てもぽつぽつと地面を打ち付ける雨はまだ続いていた
「なんで、…」
「ねぇ、」
困惑していると上から声をかけられた
誰だと思いながら上をみると
「大丈夫?」
笑顔で、懐かしい顔をして、
傘を差し出している君がいた。
end