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「ヨーラが方向音痴じゃなくて良かった…」
ノースディオルに着いた瞬間、アルレイドが呟いた。
「もしかして、方向音痴二人で旅してたの?」
「だ・か・ら!アリシールの勘が鈍いだけだって!」
アルレイドは必死に誤魔化している。
「だって、北って言いながら東に進んでたんだもん。あれは普通に方向音痴でしょ。」
アルレイドは言い返せなくなった。
「それにしても、ノースディオルって寒いねー。」
「袖が無い服着てる奴に言われたくないな。」
そう言うアルレイドも、マントの下は半袖である。
「こんなガキが創造の魔法使えるのか?」
背の高い男性がアルレイドを見下ろして言った。
二人は迷路のような道に迷い、狭い路地を通っていた時、目の前にこの人が現れたのだ。
「イメージ!」
アルレイドは、先が刃のように鋭くなっている杖を作った。
「やっぱり魔法使いだな。男なら手加減はいらないか。」
男性が少し構えた。
「…私は女だ!男じゃねー!」
アルレイドは怒りに任せて杖を振り回したが、男性はナイフを持っていて、あっさりと杖を弾き飛ばされてしまった。
「チョロかったな、お嬢ちゃん。これでさよならだ。」
そう言って、男性がアルレイドにナイフの先を向けた時、
「魔女狩りですね…こんにちは…」
ヨーラは、目と口が三日月形に裂けた仮面をつけて来て言った。
「ヨーラさん!?どうして…!?」
「どうしてかって?…見てわからないですか?」
ヨーラはアルレイドと初めて会った時のように話している。
「どうしてその魔女の前に立っているのかがわかりません!ヨーラさんどいてください!とどめはオレが…」
「…私だけに任された任務を遂行しているだけです…どいてください…あなたに用はありません…」
「わかり…ました…」
ヨーラの言葉で、男性は逃げるように走り去った。
「危なかったね!アルレイド!大丈夫!?」
アルレイドの方を振り返って、ヨーラは言った。
「まあ何とかな。ありがとよ。」
ヨーラの謎のスイッチは、思ったより激しく切り替わるらしい。
「そう言えば、アルレイドの名字訊いてなかった。」
陽が落ちかけた時、ヨーラが言った。
「私の名字はオータム。ヨーラ・オータム。改めてよろしく!」
「私はフィレッジだ。アルレイド・フィレッジ。よろしくって言われた覚え無いけどな。」
アルレイドが名前を言った瞬間、ヨーラは固まった。
「……え、あのフィレッジ?」
「この名字の奴、他に誰がいるってんだよ。」
アルレイドはため息をつきながら言った。あまり言いたくなかったからだ。
「フィレッジって言ったら、創造の魔法を使ってる中で一番有名な魔法使いじゃん!一般人にも名が通ってる、本当に凄い魔法使いじゃん!」
ヨーラが叫ぶくらいの大声で言った。
「ちょっとぐらい静かにしろよ。」
魔女だとバレるとマズイので、アルレイドは小声だ。
「…って事は、ガレットと連れの二人を捕まえたのもアルレイドって事!?」
ヨーラは全く話を聞いていない。
「ガレットって…、お前のいた組織…、魔女狩りの団体だったのか?」
アルレイドがそう訊くと、ヨーラは頷いた。
「魔女狩りがすぐに魔法使いを始末しない事も謎で、私はあそこにいたの。私のお姉ちゃんを早く助けたい。だから、よろしくお願いします。」
ヨーラは深々と頭を下げた。
「アリシールも忘れるなよ。今日私の事助けてくれたし、信用してやってもいいかな。そんじゃ、これからよろしく。」
アルレイドからのちゃんとした返事をもらって、ヨーラは嬉しそうにしていた。