テラーノベル
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直弥は床で絵を描いている。
秋がCDをかけて、
直弥の横で本を読み始める。
「おじさん、ぼく、この歌好き。」
「そう?」
「うん。」
「じゃあ覚えておきなよ。
ビートルズの『Here Comes the Sun』っていうんだ。」
「びー…?」「…???」
「まだ直弥には早いか」
「『Across the Universe』もいいんだけどな⋯」
「?????」
「後でいっしょに聴こう」
ーーーーーーーーーーー
直弥が学校から帰ってくる。
玄関を開ける。
珍しく、母親と秋が少し強い口調で話している。
直弥は「ただいま」と言うタイミングを失ってしまう。
すると聞こえてしまう。
母親が、「……別に好きで産んだわけじゃないの。」
その一言だけ。
秋は何か返す。
でもそこは聞こえない。
聞こえても内容はわからない。
その瞬間、母親が玄関の物音に気付く。
会話は終わる。
直弥「…ただいま。」
ーーーーーーーーーーー
数日後。
玄関に、子ども向けの植物図鑑と、
ビートルズのアルバムが置いてある。
『Abbey Road』と、『Let It Be』の2枚。
「…おじさんは?」
母親は目も合わせずに言う。
「あいつならもう来ないわよ。」
コメント
1件
えぬたさん、第6話読みました。直弥と秋が一緒にビートルズを聴く穏やかな時間がとても温かくて、その後の母親の「別に好きで産んだわけじゃないの」という言葉が刺さりました。あの一言が直弥にどう響いたのか想像すると胸が痛いです。でも、秋が置いていった植物図鑑とアルバムは、直弥にとって小さな灯火のように感じました。これからの展開が気になります。