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四話
ヒトだった化物
私と皇刃くんは、薬草店を訪れていた。
店内には、薬草独特の匂いが漂っていますが不思議と嫌いな匂いではありません。
店を営んでいるのは、仲の良さそうなご夫婦です。
皇刃くんが男性店主に、欲しい薬草を伝えています。
『わかりました。お待ちください』
そう言って店主は、二人に背を向けると、棚に並んだ薬草を探し始めました。
これならすぐ、あの二人と合流できそうね。
その間、私と皇刃くんは店主の奥さまと世間話をしていました。
やはり、この地域も化物の出現率は上がっているようです。
しばらくして。
「……長いなぁ」
皇刃くんが呟きました。
確かに長いですね……。
「皇刃くんが頼んだのは珍しい薬草?」
「僕が頼んだの、は……幻覚作用を、緩和するやつだから、一般にも使用されてるやつだけど……」
店主は、まだ背中を向けたままでした。
ですが何かボソボソと呟いているようです。
何でしょう……。
嫌な予感がします。
奥さまが不思議そうに店主へ近づこうとした、その瞬間。
皇刃くんが叫びました。
「だめだ!!」
私は咄嗟に動き、間一髪で奥さまを助けだしました。
振り返った店主の顔は、紫色に変色していました。
「!!っな、に……っ」
「……初めて見るタイプだね、早乙女さん……」
顔は大きく腫れ上がり、ボコボコに変形しています。
もはや、人間だった頃の面影すら残っていませんでした。
「きゃああああ!!」
奥さまが悲鳴を上げ、倒れかけたのを支えます。
色んな意味で悲鳴を上げたくなります。
私だって色んな意味で悲鳴をあげたい……。
そして奥さまは私の制服を掴み、助けを求めてきました。
「助けて!! あなたたち、このために訓練してるんでしょ!!」
「!!っ……」
確かにそうです。
こんな時の為なのでしょう……。
私たちが命を賭けて訓練をし討伐しているのは。
でも、何でしょうか……とても不愉快な気分です。
その直後、化物が出現したことを知らせる緊急通報が、椥辻さんたちのもとへ送られました。
同時に、学校にも連絡がいったはずです。
しかし、私は倒すための武器を持っていないため、防御壁を展開し、奥さまを守るのに徹底することにしました。
一方、皇刃くんは店の外へ出て、周囲の住民を避難させてくれました。
やがて、椥辻さんと御厨くんも現場へ到着しました。
「大丈夫? 綺ちゃん!!」
「なんや……この化物は……」
二人は、これまで見たことのない姿をした化物を前に、思わず狼狽えていました。
そんな中、奥さまが二人に向かって叫びました。
「お願い! あの人を助けて!!」
その言葉で、二人は悟りました。
目の前にいる化物は――
元は、人間だった。
その事実を知った瞬間。
誰も、手が出せなくなりました。
コメント
1件
うわ……読んでて息が止まりました。店主が化物になる瞬間、あの「人間だった面影すらない」って描写が本当に生々しくて。奥さまが「あの人を助けて」って叫ぶところ、胸がぎゅっとなりました。元が人間だと知って手が出せなくなる4人の葛藤、すごく伝わってきます。輪廻さんの描く“化物”の設定、ただの敵じゃなくてちゃんと物語に重みがあって好きです。続きが気になります…!