テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
スタートーー!
翌朝。
東京から車で二時間。
山深い森の中に、その建物は姿を現した。
国立星見ヶ丘天文観測所。
十五年前、研究員・倉橋俊介が消息を絶った場所。
白い巨大な観測ドームは、長い年月を経てもなお静かに空を見上げていた。
車を降りた美月は、小さく息をのむ。
「ここが……。」
コナンもドームを見上げる。
「全部は終わってない。」
「ここで何かが待ってる。」
安室は周囲を見渡し、静かに言う。
「人気がなさすぎる。」
「閉鎖されてから十年以上。今は管理人が週に一度見回るだけです。」
灰原はわずかに肩を震わせた。
「嫌な予感がする……。」
⸻
第七観測棟
施設の正門は錆びつき、重い鎖で閉ざされていた。
安室は管理局から預かった鍵で門を開ける。
ギィィ……。
金属音が静かな山に響く。
建物の中は薄暗く、床には落ち葉やほこりが積もっていた。
天井から差し込む光が、長い廊下に帯を作る。
「十五年、誰も使っていないのか……。」
美月は静かにつぶやく。
すると、その足が止まった。
「……待って。」
「どうした?」
コナンが尋ねる。
美月は床を指差した。
「足跡。」
土ぼこりの上に、新しい靴跡が残っていた。
「これ、最近のもの。」
安室がしゃがみ込む。
「しかも複数人。」
コナンの表情が鋭くなる。
「俺たちより先に誰かが来てる。」
⸻
消えた管理人
一行は管理室へ向かった。
机の上には湯飲みが一つ。
まだ中には少しだけ温かいお茶が残っている。
「……おかしい。」
유리
16
坂田銀にゃん
15
安室が湯飲みに触れた。
「ついさっきまで誰かがいた。」
その時。
部屋の隅から、かすかな音が聞こえた。
コン……コン……。
「!」
コナンが耳を澄ます。
床下からだ。
安室と二人で床板を持ち上げる。
その下には小さな地下室があり、一人の男性が縛られていた。
「う……うう……。」
「大丈夫ですか!」
安室が縄をほどく。
男性は観測所の管理人だった。
「黒い服の男たちが……急に入ってきて……。」
「どこへ行ったんです?」
「第七観測棟です……。」
その言葉に、全員の表情が変わる。
⸻
第七観測棟・観測室
巨大なガラスドームの下。
古びた望遠鏡が静かに空を向いていた。
美月は十五年前の写真を取り出す。
「この場所……。」
写真と見比べる。
望遠鏡の位置。
壁の時計。
非常口。
すべて一致している。
「ここだ。」
その時だった。
コナンが足元で何かに気付く。
「これ……。」
床に小さな金属片が落ちている。
拾い上げる。
「ライフルの薬きょう……。」
灰原の表情が青ざめる。
「銃撃があったのね。」
コナンは静かにうなずく。
「倉橋さんは、この部屋で撃たれた。」
⸻
密室の謎
美月は写真を見つめながら首をかしげる。
「でも、おかしい。」
「何が?」
「写真では、この扉は閉まってる。」
「でも倉橋さんは、ここから逃げた。」
コナンも図面を見る。
「確かに……。」
「出口がない。」
部屋は完全な密室。
窓も開かない。
「どうやって?」
美月はゆっくりと天井を見上げた。
「……あ。」
「観測ドーム。」
望遠鏡の真上にある巨大なドーム。
「開閉式だ。」
コナンも気付く。
「逃げたんじゃない。」
「上へ登ったんだ!」
安室が非常階段を照らす。
「屋根へ続く階段がある!」
⸻
屋上
全員が階段を駆け上がる。
扉を開けると、冷たい風が吹き抜けた。
山々が見渡せる高台。
美月はゆっくり歩き出す。
突然、足を止めた。
「ここ。」
しゃがみ込む。
コンクリートの隙間に、小さな金属製のプレートが埋め込まれていた。
そこには刻印がある。
“K・K”
「倉橋……俊介。」
コナンがプレートを押す。
カチッ。
鈍い音が響いた。
地面の一部がゆっくりと開き始める。
「隠し部屋……!」
地下へ続く狭い階段が現れた。
⸻
地下資料室
懐中電灯を照らしながら進む。
そこには、十五年前のまま時間が止まったような部屋があった。
星図。
観測日誌。
古いパソコン。
そして壁いっぱいに貼られた写真。
その中央には、一枚だけ赤い印が付いた航空写真。
美月が近づく。
「これは……。」
赤い丸で囲まれていたのは、観測所の敷地ではなかった。
少し離れた山の中。
「別の場所……?」
コナンは日誌を手に取る。
最後のページには、震える文字でこう書かれていた。
『星は嘘をつかない。だが、人は星を利用して嘘をつく。』
その下には、数字が一列。
42.17.09
「座標?」
博士がつぶやく。
安室は地図を開く。
「違う。」
「これは観測データの番号だ。」
すると突然――
ピッ……ピッ……
小さな電子音が響いた。
コナンの表情が変わる。
「伏せろ!!」
全員が床に飛び込む。
次の瞬間――
ドォォン!!
地下室の入口が爆発した。
激しい衝撃。
土煙。
崩れ落ちる天井。
悲鳴が響く。
「きゃあ!」
美月が倒れかける。
コナンがとっさに腕をつかんだ。
「美月さん!」
安室が叫ぶ。
「全員無事か!」
灰原も咳き込みながら立ち上がる。
「これは……。」
コナンは煙の向こうを見る。
崩れた入口の前に、黒い人影が立っていた。
銀色の長い髪。
黒いコート。
帽子の下からのぞく鋭い瞳。
ジン。
その隣にはウォッカ。
さらに少し離れた暗がりには、ベルモットの姿もあった。
ジンは静かに笑う。
「ようやく見つけた。」
「その証拠を渡してもらおうか。」
コナンは美月をかばうように前へ出る。
「絶対に渡さない。」
静まり返る地下資料室。
銃口がゆっくりと持ち上がる。
そして、物語はついに最大の対決へと向かい始める――。
⸻
――第7章 終――
次回予告
第8章「ベルモットの選択」
地下資料室でコナンたちと黒ずくめの組織がついに対峙する。ジンの銃口が美月へ向けられたその瞬間、ベルモットが思いもよらない行動に出る。そして、十五年前に倉橋俊介が命を懸けて守ろうとした本当の秘密が、少しずつ明らかになり始める――。
コメント
3件
いぬ🐶さん、第7章読みました! 天文台の重くてひんやりした空気、映像が浮かぶみたいな描写がすごく好きです。美月ちゃんが足跡に気づくところから地下室の爆発まで、一気に引き込まれました…。ジンがついに登場して、次回「ベルモットの選択」ってタイトルにもうドキドキが止まらない🖤 倉橋さんの遺した暗号みたいな言葉も気になるし、早く続きが読みたいです…!