※この作品は二次創作です
本人様のストーリーにはなんの関係もございません
誤字脱字がある可能性があります
最近よく変な夢を見る
双子の弟の夢だ
「なぁ、兄貴元気そうだな」
「なぁ、兄貴、集団行動苦手なのによくそんなとこにいるな」
「なぁ、兄貴。お前と俺は似てるよ」
「なぁ、兄貴。薄々気づいてるんだろ?俺がこの街にいることに」
「なぁ、兄貴。気付かないふりはやめようぜ」
「なぁ、兄貴。俺の事誰にも知られたくないんだろ?だからあの時黙ってたんだ」
「なぁ、兄貴。俺はあんたの汚点だろ?綺麗は警察官の弟が個人医なんて笑い事だな」
「なぁ、兄貴。」
真っ白い空間にアイツがただそう語りたけてくるだけの夢
最初はいつも何気ない言葉
だけど最後の言葉はいつも決まっている
「俺はあんたが大っ嫌いだ」
そう、いつも決まってる。
いつも、その言葉が最後だ
「ねぇ、ラディ。違うんだよ」
夢の中なのにどうしても彼に弁明したくて、いつもいつも否定の言葉を口にする
そんな事をしても意味が無いのに
「ねぇ、ラディ。団体行動は苦手だけど、誰かと一緒にいるのが楽しいんだよ」
「ねぇ、ラディ。俺たちは似ているはずなのになんで道がたがえたのかな」
「ねぇ、ラディ。みんなからお前のことを聞かされた時どうすればいいか分からなかったんだよ」
「ねぇ、ラディ。気づきたくなかったんだ。こんな事実に」
「ねぇ、ラディ。あの時咄嗟に嘘ついたんだ。ラディが闇医者なんて受け止めたくなくて」
「ねぇ、ラディ。もうやめよう俺の知っているラディはそんな事しないよ」
「ねぇ、ラディ」
ゆっくりと意識がハッキリしていく
そろそろ夢から起きるのか
そんな事を実感する
ゆっくり彼に近づくように手を伸ばす
「大好きだよ」
その手は空回った
空回ったと言うよりその手は綺麗な空に伸ばされていた
青々しい草木の匂いがする
夏の暑さが俺を襲う
あぁ、いつもそうだ
彼にこの言葉を言おうとした瞬間いつも目が覚める
彼に触れようとしたらいつも目が覚める
いつもいつもいつもいつも
いつも、俺は彼に何も出来ない
俺はこんなにも、こんなにも苦しいのに
俺は彼に何もやり返す返すことも救うことも出来ないんだ
「あぁ、あっつ」
気分を紛らわすように無線を繋げた
「なぁ、兄貴」
「何?ラディ」
「嫌いだよ。お前のこと」
「うん、知ってる」
いつもの真っ白い世界
真っ黒なオーラを漂わせている彼はいつも通り話しかけてくる
「双子で似ている俺たちなのに、なんで」
だけど今日は違うようだ
かれはゆらゆら揺れながらこっちに近づいてくる
「小学校も中学校も高校も一緒だったはずなのに」
「なぁ、いつからだ」
少し感情的に見えた
いつも何考えているか分からない彼がこの時だけ俺に何かを訴えてるように見えたんだ
「いつから俺はお前に劣等感を抱いちまったんだ?」
突然の告白に俺は自分でもわかるほど目を見開いた
ラディの言っていることが理解できない
理解しようとしていない
「俺はこの街に来た時からあんたの事やあんたの世間からの評価を気にして、安心して」
「嫉妬で狂って」
「俺は俺だからとか言って」
「だけど、あんたのことを気にして」
「どうしようも感情が混ざって」
「俺は…」
「なんであんたの弟に生まれちまったんだ?」
そう言われた瞬間俺の体はゆっくりと倒れて地面に着いた
それは転んだとかじゃなくてラディがぶつかって押し倒したということはこの目に映るものが物語ってきた
目の前にはラディの顔と彼が持っているナイフそして無限に綺麗な白い天井だけが映っていた
「俺はお前のせいで、全部壊れたんだ」
あぁ、そっか
そうなのか
俺が警察って言ったからお前は警察を避けたんだね
俺が医者の道を避けたからおまえは医者の道を選んだんだね
俺が白だったからお前は黒になったんだね
考えてみれば簡単だった
恨んでたんだよな
今まで一緒に生きてきた俺を
お前の人生の何かを壊してしまった俺を
俺のことが嫌いだったからお前は真逆の道を行ったんだ
あーぁ、簡単だった
何もかもが分かりきっていた
「だからさ、兄貴」
「これからの俺の行動を理解してくれよ」
「俺たちは出会うべきじゃなかった」
「片方が成功して片方が失敗するなら双子で生まれては行けなかった」
「こんな気持ちがすれ違うなら俺たちは一緒に生きていいわけが無い」
「俺たちは一緒にいるべき存在じゃない」
「だから分かってくれよ」
彼が初めて俺の前で仮面をとった
久しぶりに見た彼の瞳は俺の記憶にある瞳とはまるで違くて
暗い暗い、深い海のような暗い瞳をしていた
それを見るだけで海の中にいるような気がして呼吸がおぼつかなくなる
怖い
初めてラディを前にしてそう感じた
俺は彼の兄だから彼を救わないといけない
なんとなくそう思っていた
けど今は怖いんだ
とっても
そんな俺を差し置いて彼はゆっくり笑った
「じゃあな、兄貴」
あ、死ぬ
夢の中だろうとラディに刺されたら死ぬ
直感でそう感じた
ラディがナイフを掲げた瞬間目を閉じた
だけどいつまで経っても痛みはこない
ゆっくり恐る恐る目を開けると
俺に刺さるはずのものはラディに刺さっていて
俺が流すはずだったものは彼がタラタラと流してる
「ら、でぃ?」
真っ白な世界は上からゆっくり黒に染っていく
「俺はお前が嫌いだ」
真っ赤に染っているその手で彼は俺の胸ぐらを掴む
けど、その手は小さい子より弱くて
震えていた
「だから、」
「お前が嫌がることをした」
お前は大切な人が目の前で死ぬことを1番嫌がるだろ?
そう言って彼は心底嬉しそうに微笑む
「俺を殺したのはお前だ」
「お前の意思だ」
「お前の存在だ!」
違う、
「違う違う違う」
そんなことない
ちがう、
俺は殺してない
俺はラディを傷つけてない
俺は、俺は?
俺が居なかったらラディはこんなに苦しまずにすんだのか?
「最高のトラウマだなぁ!」
嬉しそうに彼は笑う
「俺は嬉しいよ。兄貴」
「お前を地獄に落とせて」
「ね、兄貴。俺たちは似てるよ」
「俺が嫌なことはお前も嫌だよな!」
「違う、違う」
俺はこんなこと望んだわけじゃない
こんなこと、望んでない
なんでこんなことに
俺は彼を救いたかっただけで
「ねぇ、兄貴俺を見てよ」
ゆっくりと顔を上げて彼を見つめる
その姿は血まみれで顔は歪んだように笑って見えた
「俺というトラウマを一生背負って生きてね」
「ラディ…」
ゆっくり手を伸ばした
彼の足元、彼の後ろ、俺の足元、俺の後ろ
少しづつ真っ黒な闇におおわれていく
それでも必死に手を伸ばした
今ここで彼にこの手が届かなかったら本当に死んでしまう気がしたから
俺の中の何かが崩れる気がしたから
彼に触れたい
抱きしめたい
じゃないと本当に俺はどうしようもない兄貴になってしまう
最後まで弟を傷つけた
クソッタレの兄貴に
「じゃあね」
ラディは薄い桃色を宿した目をしてまた笑った
「待って!!」
俺の声は警察署に響いた
伸ばした手は空回った
青々しい草木の匂いはなく目の前には雪が積もっていた
どうやらだいぶ寝ていたようだ
今がいつか分からないけどそろそろ春になる頃だ
桜が綺麗に咲くだろう
あの桃色を思い出す
ラディ
俺はどうしたら良かったのかな
俺はお前とずっと仲がいい兄弟でいたかったよ
なぁ、ラディ
お前が俺を恨んでも憎んでも嫌いでも
俺はお前がいつまでも大好きだよ
「あぁ、さっむ」
受け止めないと
俺がお前を殺したんだと
俺の中にある何かにお前は殺されたと
この最高のトラウマを抱えて俺は生きていかないと
彼がそう望んでいたように
1月19日
「もう少しや!」
冬の冷たい海は肌に痛い
その痛みに耐えながらも必死に手を動かして前に進む
進まないとな
俺達が俺達らしく自由に生きるために
「俺の意思は継いでもらうよ。そのために俺は死んだ」
end
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