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入れ替わり
「イギリス、こっちに来なさい」
お兄様に呼ばれ、私は本を読む手を止める。
「はい、何でしょうお兄様」
お兄様は立ち上がり、私のネクタイをほどいた。
「また、お前の体を借りたいのだけど…」
…正直に言って、兄弟とはいえ他人に体を貸すのは嫌だ。
でも、お兄様の頼みを断ったらどうなるか…
これはお願いという名の命令だ。
「…わ、分かりました…」
…
ん、この感触は…
…成功したようだな。
「ん゛ん…あー、あー…よし、声も出るな」
イギリス…いや、イングランドはまだ寝ているようだ。
…遂に今日は計画を実行する…
…笑いを堪える。あと少し…
取り敢えず、誰かと会話したくて街へ出た。
「あッ!親父!!」
…コイツはイギリスの素行の悪い息子…アメリカか…
「どうも」
「何処行くんだ?」
…コイツは敬語も使えないのか…徹底的に教育してやりたい…
「少し散歩に出ただけですよ。」
「そうなのか!あれ、親父モノクルは?」
あ、体を交換したときに外したのか…忘れていた…
「目が疲れるので外しているだけです。」
「そうだったのか、あ、俺そろそろ行くな?」
そう言うとソイツは屈んで私にキスをした。
苛々としたので、胸倉を掴んで舌を入れてやった。
父親にこんなキスをされたら傷つくだろうな。ま、興味は無いが。
「親父、今日積極的だな♡」
舌舐りをして、下品な奴だ。
アメリカと別れ、パン屋に入る。
パン屋に入ると、パンの香りより先に情報として入ってきたのはフランスだった。
「あ、イギリスじゃん。どしたの?フランスパン食べる気になった?」
…またコイツも敬語が使えないのか…
フランスは会計を終わり、今から出るところだったようだ。
フランスパンの入った袋をふりふりと横に揺らし、
「食べる?」
と聞いてきた。
「要りません」
私は「話もそこそこに」と言い、横を抜けた。
少しパンを買い店を出ると、フランスが外で待っていた。
「ね、今から何か予定ある?」
「無いですけど…何ですか?」
「今からカフェ行こう!」
…無いなんて言わなきゃ良かった…
フランスにカフェに連れていかれたせいで帰るのが遅れた。
「ただいま」
自分の部屋のドアを開けると、イングランドが居た。
「あッお兄様!」
「早く私の体を返してください!」
…ははは、面白いな
「返すわけ無いだろう」
「は…?」
おや、私の絶望した顔というのはこんな顔なのか。
「あ、はは…お兄様、ご冗談を…」
「冗談じゃないぞ。本気だ。」
「ッ…!?」
「なッ何で!?返してください!」
何で…か。
「私に政治を任せれば、また大英帝国の…いや、それ以上になることが出来るだろう。」
「えッ…と、それはどういう意味で…?」
「私は本当に世界の支配者になりたいのだ。地球の。この星の主人になりたいのだ。その為には、幾らか自分より大きな器が必要だった。」
「…」
言葉を失ったか?随分と静かに話を聞いている。
「だから私はこれから大英帝国として生きていく。お前は、イングランドとして生きていく。良いね?」
「…ちょ、ちょっと待ってください!どうしてそんな…」
「世界の20%を支配していたが、それでは足りないのだ。大英帝国、というより地球を支配するのだ。」
「別に…別に今のままでも良いじゃないですか!!」
「…まぁ、お前が何と言おうと、私には関係無いな。」
「三枚舌、だからお前の…いや、イングランドの言うことなんか誰も聞かないだろう」
「嘘…そんな…」
「お前は体を取り替える術を知らない。もうこの体は私の物だからな。分かったか?」
「…」
返事の仕方も忘れたか?苛々とし、頬をひっぱたいた。
「!?」
「お、お兄様…?」
「返事は?」
「…はい、お兄様…」