また会いたいな
初めて僕はこう思った
また会う時は遅くなかった
「お待たせ。検査で遅くなっちゃった」
彼女が来た。今度はカゴを持っている
「今日はね、看護師さんに頼んで色々持ってきたの。林檎と、葡萄と〜あ、なんでも食べていいからね。」
ミライはにんまりとした笑顔でいう
少し顔がやつれている
病気の影響なのかもしれない
「…ミライは、1人は寂しくないの?」
2人とも親を失っている
僕はそれから無表情なのに
彼女は笑っている
「寂しいよ。けど今は別。秀次君がいるから」
僕の胸が熱くなった
初めての感覚だ
彼女の周りが輝いて見えてくる
なんかの病気か?
「ねぇ。今度さ。私の病院の丘の上に行ってみない?私まだ行けてないんだ。絶景なんだって」
僕が林檎を頬張っていると彼女が言った
丘の上、行ったことがなかった。絶景か…
「でも私が元気になってからね。治療頑張るよ、次ね、手術があるから」
「うん。頑張って」
そうやって僕は丘の上に行く約束___生きる為の目標であり、2人の夢でもあるところへ行く。
コレは絶対に叶えさせたい。彼女のためにも
それから何日か。2人で話2人で食べ物を食べる時が増えた
だが急にはったりとなくなった
全然来ないもんだから、病院に行ってみた
「すみません。あの…ここのミライさんって子。いますか?」
受付の人に聞いた
「ああ、夢野さんですね。一応入れますが、もう少しで手術ですので手短に」
「はい」
短い会話を済まし。僕は彼女の病室へ向かう
【305夢野】
そう書かれた扉を開けると
点滴をたくさんつけた彼女がいた
「しゅ…じくん」
とてもいつもの彼女とは思えない、弱々しい声
「びょうき…あっかしたみたい…で…今日…最終手術…だって。丘の約束叶えられないかも…」
僕の胸がとても熱くなった
前とは違う感覚だった
「弱気になんないでよ!丘の上は絶対に行くんだ!!」
僕は初めて怒鳴った。彼女は普段おとなしい僕が
怒鳴ったことで驚いた表情をしている
すると泣き出した
「ごえん…ごめんねぇ」
そう言う彼女を横目に僕は病室を去った
月日がたった
一向に彼女は来ない
僕は死んだのだと思った
僕は約束の場所へ向かった
何も思わずただ無心に
なんだか、心が
『行け』と言っているみたいだった
丘に行った
もう時は夕暮れ時に近い
「修二君」
後ろから声が聞こえた
あの優しい声
凛々しく堂々としている
あの子の声
ミライの声だ
「修二君、私治った。治ったよ…!」
僕の目尻が熱くなって
頬に生ぬるい水がつたった
「ミライ…」
2人は抱き合った
抱きしめ合った
夕暮れ時の
夕日と共に
かれらは
ずっと、肩を寄せ合い
星を見ていた
丘を駆け回った
生きる心地がした
嫌いだった未来に向かって
少し前向きに考えてみよう
僕たちはもう、孤独じゃないんだ
【丘を駆け抜けろ孤独の少年少女】(終)
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