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美咲は小屋を飛び出し、心臓が高鳴る音を感じながら校庭を走り抜けた。
遠くで響く鬼の足音が、彼女の背後に迫ってくる。
時間がない。絶対に逃げなければならない。
その思いが彼女を駆り立てた。
「出口、出口…どこにあるの…」
美咲は日記を胸に抱え、周囲を見回した。
学校の構造は複雑で、迷路のような廊下が続いている。
秘密の出口を探し出すには、まずこの学校の全体像を把握しなければならなかった。
思い出したのは、翔太と共に探検した時のこと。
校舎の中央には、古い図書室があった。
翔太が「そこには、学校の秘密が隠されているかもしれない」と言っていたのを思い出す。
「図書室だ…!」
美咲は決心し、全速力で図書室へと向かった。
走りながら、彼女は頭の中で日記の内容を反芻した。
鬼ごっこの起源や過去の生徒たちの運命、そして「秘密の出口」。
何かが結びつくはずだ。
美咲は、その情報をすべて思い出さなければならなかった。
図書室の扉を開けた瞬間、彼女は静けさに包まれた。
大きな本棚が並び、埃をかぶった本が無造作に並んでいる。
窓から差し込む薄暗い光が、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「これが…翔太が言っていた場所…」
美咲は心の中で呟きながら、図書室の中を慎重に歩き始めた。
彼女は本棚を一つ一つ調べながら、どこかに隠された秘密の手がかりがないか探していた。
何冊かの本をめくりながら、「鬼ごっこ」に関する記述がないか探ったが、見つからない。
「ここには…何もないの?」
焦りが募り、思わず声に出してしまった。
その瞬間、背後からかすかな物音がした。
美咲は振り向くと、そこには影が立っていた。
それは人間のような形をしていたが、すぐに目を疑った。鬼だった。
顔には不気味な笑みが浮かび、ゆっくりと彼女に近づいてきた。
「逃げられると思っているのか?」
鬼の声は低く、冷酷だった。
美咲は恐怖に凍りつきながらも、反射的に図書室の隅にある書類を掴み、近くの本棚の陰に隠れた。
鬼は彼女の行動に気づき、じわじわと近づいてくる。
「必死に隠れても、見つけられないと思っているのか?この場所には、君のような弱者の逃げ道はないのだ。」
鬼は冷笑を浮かべていた。
美咲は心臓が早鐘のように打つ音を感じていた。
逃げられない。
逃げる手段が、目の前の鬼によって奪われようとしていた。
しかし、その時、日記の一節が彼女の頭に浮かんだ。
「過去に逃げ切った者は、鍵を手にした」という言葉だ。
もしかして、その鍵はこの図書室に隠されているのかもしれない。
「どこかに…鍵が…」
美咲は再び周囲を見回した。
鬼が近づく中、彼女は意を決して本棚を引っ張った。
すると、壁に向かって小さな扉が現れた。
「これか…!」
美咲は鍵の存在を感じた。
鬼が目の前に迫る。
美咲は迷わず小さな扉に飛び込んだ。
扉はすぐに閉じ、彼女は暗いトンネルの中に消えた。
狭く、湿った空気が充満している。
「逃げたか…」
鬼の声が遠くから聞こえ、少しだけ安堵の息を吐いた。
だが、今はまだ安心できない。美咲は全速力でトンネルを進む。
トンネルは長く続き、どこまで行けば出口にたどり着くのかわからなかった。
暗闇の中を走り続けるうち、突然、光が見え始めた。
「出口…!」
美咲はその光に向かって突進し、トンネルを抜けると、目の前には広い空間が広がっていた。
そこには、一面に広がる青空と、大きな門が立っていた。
「これが…秘密の出口?」
美咲は驚きと喜びが入り混じった感情に襲われた。
しかし、その瞬間、彼女の背後にあったトンネルから鬼が現れた。
美咲は一瞬の恐怖に凍りつくが、すぐに逃げなければならないという思いに駆られた。
「行け、行け!」
美咲は自分に言い聞かせ、出口へと急いだ。
鬼が迫ってくる中、彼女は全力で走った。
出口の扉が近づくと、美咲は思い切って扉を押し開けた。
外に出ると、そこは静かな校庭だった。
暗い学校の外に出た瞬間、彼女はほっとした。
しかし、背後から響く足音は止まらない。
鬼は彼女を追ってきている。
美咲は振り返ることなく、逃げ続けた。
「絶対に逃げ切るんだ…翔太のためにも…!」
美咲は心の中で叫び、出口を目指して全力で走り続けた。