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「おいベジータ、あの話聞いたか?」
「あの話?…なんの話だ」
「なんのって、アイツの話だよ!ほら、向こうを歩いてるあの女の話だ!」
「女だと?」
任務から帰還した直後のベジータにキュイが話しかける。キュイの言うあの女とはメイズのことだ。
ギニュー特戦隊でも敵わなかった敵をたった1人で倒した女がいる、とあっという間にその存在が広まっていったのだ。
訝しげな顔をしてキュイの指差す方向に目線を向けると、そこには確かにメイズの姿があった。
何者なんだ?今まであんな奴は見たことがない。サイヤ人の生き残りはほとんどいないから、もしそうであれば間違いなく覚えているはず。しかし彼女のような人物に心当たりはない。
メイズはどこを見ているのかサッパリ分からないような顔をして、1人で椅子に腰かけている。独特の髪型や揺れる尻尾はまさしくサイヤ人そのものだ。ベジータは目を疑う。
「あいつ、あのクウラ機甲戦隊のサウザーを1人で倒したらしい。お前よりも強いんじゃないか?」
「そんなバカみたいな噂を信じるのか?あんな女1人でサウザーを倒すなど無理な話……」
「噂じゃねえって!ギニュー特戦隊の奴らが話してたんだよ!あいつが助けに来て、サウザーを倒したって」
「なるほど?確かにギニュー特戦隊の奴らにあいつを持ち上げるための嘘をわざわざでっち上げる理由がない。あながち間違いとも言い切れんようだな」
再びメイズに目線をやると、彼女は複数の兵士に話しかけられていた。あくまでメイズは新人であるため、挨拶をしているといったところだろう。
メイズは同じサイヤ人でありながら、何か自分と違う部分がある。そう思ったベジータは、他の兵士が離れたのを見計らってメイズの元へ歩んで行った。
「お前、あいつに話しかけるのか?」
「ちょっと腕を見てやるだけだ、なにせあいつはサウザーを1人で倒した女なのだろう?まさかとは思うがな」
「おい、あいつと戦うつもりなのかよ!殺されるかもしれないぞ!?」
「殺される?この俺がそんな醜態を晒すと思うか?エリートをナメるなよ」
キュイを鋭く睨んだベジータはずんずんと歩くと、メイズの前に立った。それにすぐに気付いたメイズが顔を上げる。
ベジータは腕を組んでメイズを見下ろすが、メイズは特段驚いたり怖がったりすることもなくじっとベジータを見つめている。ベジータにはそれが少々気味悪く感じられた。
「よう、たった1人でサウザーを倒したサイヤ人さんよ」
「ああ…どうも。ところで、どちら様ですか?」
「は?」
「何やら不快そうな顔ですね…よく分かりませんが、もし失礼があったのならすみません。しかし私はあなたのことを知らないので……」
「黙れ!今のでもっと不快になったぞ。サイヤ人でありながらこの俺を知らないとはな」
「あの…皆様が言っているそのサイヤ人というのはなんなのですか?」
「なんだと…。」
メイズの人物像が想像とだいぶ違っていたため、ベジータは盛大に困惑していた。