TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

九、魔王の証




イザは、魔族達がまだ、心底から自分を認めていないと感じていた。


それはそのはずで、抱き方で分かるのだ。

彼らのほとんどは、イザを抱く時には女王だなどと思っていない。


ただ、都合良く精を注げる『モノ』のように扱う。

痛くないように優しく抱くのは、その魔玉の効果が表れているから。


むしろ、その魔玉に対する感謝でしかない。

イザも、最初はそれでも良かった。


受け入れさせるには、どんな切り口でも良かったから。

でも、魔玉の主としての、何とも言い難い自尊心が現れはじめた。




それで会議の場で言ったのだが、単なる出まかせではない。


一人だけ、イザを女として多少の好意を持っている男が居るのだが、彼に注がれた時だけは、魔玉の力をより強く感じるのだ。


奇しくも、最初にイザを抱いた男、グリークがそうだった。


彼は、イザの容姿を気に入っている。

美しく整った顔立ち、白い肌、細身であるのに豊かな胸。


そして人間には珍しく、無駄な毛が無い。

魔族は、顔と頭に生えるもの以外に体毛など無い。


だから人間など汚らわしいと思っていたのに、イザはそうではなかったからというのが、最初だった。


激しく抱いても文句ひとつ言わない。

罵倒しながら抱いても甘んじて受け入れる。


そのような堪え性のある女は、魔族ではありえない。

それが段々と、愛おしく感じるようになったらしい。




そんなグリークの心境の変化など、イザは知る由もないが。

ただ、受ける精と魔玉の反応だけは、しっかりと感じていた。


だから、イザは言う――。


「人間を心から憎いと思うのであれば、人間でありながら人間を憎む私を受け入れなさい」


そして、こうも言った。

「これからは、私の何か一つでも愛しなさい。愛をささやけない者には、抱かせない」


その瞳の奥が、妖しく光る。

「それに……。もう、捌け口無しでは……あなた達であっても耐え難いはずよ? 私を抱かなくては、満足に眠れなくなるでしょう」




それは確信だった。


毎日減らない男達。

魔玉のため、魔力の恩恵のためだとぼやいていたのは、最初だけだった。


イザを捌け口に使った男達は皆、自分の妻や恋人では満足出来なくなっていた。


欲望をさらけ出し、思いのままに美しい女を抱く快感と快楽は、他の何にも代え難い魂への麻薬であった。


その甘い蜜の味を知り、いつでもそれを味わう事が出来る状況であるなら……我慢など出来ようはずがない。




会議の場にいた者が言った。

「貴様……謀ったのか!」


だが、イザは冷たく言い放つ。


「馬鹿な男……。自覚が足りないのね。己が愚か者に過ぎないと知りなさい」




「人間の分際で無礼な。皆に抱かれて勘違いをしたか! ……この場で殺して、魔玉を胎の中から取り出してやっても構わんのだぞ」

男は本気のようで、魔力をその手に集めて攻撃するつもりだった。


それを誰も止めようとしないのは、皆少なからず、イザの言葉に苛立ちを覚えていたから。


「可笑しい。もう誰も、私に敵わないことも分からないのね。私を犯すことに夢中で、頭が悪くなってしまったのかしら?」


そう言ってイザは、下腹部をなぞるようにして手を当てた。

その仕草だけで、男達は欲情してイザを襲いたくなった。

しかし、こんな場で女を犯そうものなら、魔族の品格に傷が付くどころではない。




「はやく。それで私を殺せると思っているなら、ここにでも打ち込んでみればいいわ」


そしてなまめかしく胸を持ち上げ、丸く柔らかなそれに、細く白い指を食い込ませた。

布越しでもはっきりと分かるその質感に、皆、それを揉みしだいた記憶が蘇る。


釘付けになった男達を一瞥し、イザがその美しい顔で微笑むと、攻撃しようとしていた男の魔力が霧散した。


「なにっ! 魔力が!」


イザはそれを見て、少し呆れた声で言った。

「まだお分かりにならないの? 皆、欲望の中で私をどこかしら、愛してしまったのよ。素直に認めて、それを私にささやけばいいの。そうすれば、いつもみたいに……この私を好きに出来るのよ?」


その言葉で、皆の心は折れた。

実際に、今すぐに押し倒して犯したいという欲求が、頭の中を支配しているのだから。


「私は、部屋に戻ります。一番に来てくれるのは、どなたかしら」

そう言ってイザは、その場を後にした。

**

そして、イザの部屋。


イザが部屋に着くや否や、あの会議の場に居た男達が並んだ。

その日一番の栄光を手にしたのは、イザを殺そうとした男ではなかったけれど。


「ようこそ。早速来てくれたのね。嬉しい」


「あ、ああ。それよりも、早く抱かせてくれ。愛でも何でもささやこうじゃないか。そうだな、俺はお前の従順さが好きだ。従順に抱かれて見せるお前が、愛しくてたまらない」


欲を満たすためか、本心からか、男はイザの言った通りに愛をささやいた。


だが、素直にそれを告げたせいか、男がその時に得た快感も満足感も、普段の比ではなかった。

全身でイザを抱き、貪るように何度も犯した。

本当に、その時間だけは本気でイザを愛した。




そしてそれは……イザと魔玉に、さらなる力を与える。


同時に、彼にも力を与えた。


そう。これからは……イザを深く愛した者ほど、強い力を得る事が出来る。


それが知れ渡るのは、もう少し先とはなるが……。

魔族達は、ここに最高の女魔王を生み出したのだった。

この作品はいかがでしたか?

55

コメント

1

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚