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数日後。
病室の空気は、
眼に見えるくらい重くなっていた。
機械音が増えた。
点滴の数も。
出入りする医者や看護師の表情も、
どこか張り詰めている。
こさめは椅子に座ったまま、
ぎゅっと拳を握っていた。
🦈「……っ」
苦しい。
見ているだけで。
すちは眠っている時間が増えた。
起きても長く話せない。
呼吸をするだけで精一杯みたいで、
喋るたびに喉が掠れる。
それなのに。
🍵「こさめちゃん、今日もかわいいねぇ」
なんて笑う。
そんな余裕ある顔しないでよ。
こさめは泣きたくなる。
一週間渡した。
あれだけ渡せば、
もっと持つと思ってた。
なのに。
全然足りない。
むしろ、
日に日に悪くなってる。
怖かった。
“間に合わない”って、
嫌でも分かってしまった。
🦈「……やだ」
夜。
病室には、
すちの浅い呼吸だけが響いていた。
こさめはベッド横で俯く。
怖い。
でも。
もう迷いはなかった。
ポケットから端末を取り出す。
残り寿命の表示。
数字を見て、
自分でも少し笑ってしまう。
🦈「……いっぱいあるじゃん」
こさめには、
まだ未来がある。
普通なら。
大人になって、
働いて、
恋して、
歳を取って。
そういう時間。
でも今、
そんな未来に意味を感じなかった。
だって。
その未来に、
すちがいないなら。
🦈「……こさめね」
眠るすちの手に触れる。
冷たい。
前よりずっと。
🦈「すちがいない未来とか、いらない」
声が震える。
涙が落ちる。
でも手は離さない。
🦈「忘れてもいいよ」
ぽつり。
🦈「全部なくなってもいい」
本心だった。
すちが生きるなら。
笑うなら。
それだけでよかった。
端末が起動する。
譲渡量設定。
こさめは震える指で、
数字を増やした。
一日。
一週間。
一ヶ月。
警告表示が赤く点滅する。
――記憶障害の可能性があります。
🦈「……うるさいなぁ」
涙声で笑う。
そんなの、
とっくに知ってる。
それでも。
こさめは認証に指を重ねた。
光が溢れる。
瞬間。
頭の奥を、
何かが無理やり引き剥がしていく感覚がした。
息が詰まる。
視界がぐらぐら揺れる。
何か大事なものが、
崩れていく。
怖い。
怖いのに。
すちの呼吸が少し落ち着くたび、
こさめは泣きながら笑ってしまう。
🦈「……よかった」
何を忘れるんだろう。
もう分からない。
でもきっと。
最後まで、
後悔だけはしないと思った。
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