テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
41
817
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝の光が、病室へ静かに差し込んでいた。
久しぶりに、
身体が軽かった。
呼吸が楽だ。
胸の痛みも、
ここ最近では信じられないくらい穏やかで。
すちはぼんやり天井を見つめる。
……なんで。
そう思うくらいには、
体調が良すぎた。
怖いくらいに。
コンコン、と扉が鳴る。
返事をする前に、
ひょこっとこさめが覗いた。
🦈「すちー! 起きてる?」
🍵「起きてるよ」
その瞬間、
ぱぁっと笑う。
今日もころころ表情が変わる。
今日もかわいい。
なのに。
🍵「……」
すちは少し息を止めた。
なんだろう。
違和感。
こさめは笑ってる。
いつも通り元気に喋ってる。
でも。
どこか、
無理やり笑ってるみたいに見えた。
🦈「すち見て〜、今日髪巻いた!」
🍵「ほんとだ。かわいい」
🦈「えへへ」
笑う。
でも一瞬だけ、
その目が揺れた気がした。
疲れてるみたいな。
泣いたあとみたいな。
🍵「……こさめちゃん」
🦈「ん?」
🍵「ちゃんと寝てる?ご飯食べてる?」
こさめがぴたりと止まる。
それからすぐ、
いつもの調子で笑った。
🦈「寝てるよぉ〜!」
🦈「すっちー毎日聞いてくるね笑」
嘘だ。
分かる。
すちは胸がざわついた。
最近ずっとそうだ。
こさめを見るたび、
言いようのない不安が膨らむ。
このまま、
どこかへ消えてしまいそうで。
🍵「……こさめちゃん」
🦈「なぁに?」
気づけば呼んでいた。
こさめが首を傾げる。
その仕草だけで、
胸が苦しくなる。
好きだ。
たぶん、
ずっと前から。
でも。
自分は死ぬ。
残せない。
隣にいられない。
だから言わないつもりだった。
なのに。
🍵「……付き合って」
声が落ちた瞬間、
自分で驚いた。
病室が静まる。
こさめが固まっている。
すちの心臓が遅れて跳ねた。
何言ってるんだろ俺。
今さら。
🍵「……ごめ、今の忘れて」
🦈「やだ」
即答だった。
すちは目を見開く。
こさめは、
泣きそうな顔で笑っていた。
🦈「忘れるの、やだ」
その言葉が、
妙に胸へ刺さる。
🍵「……こさめちゃん?」
🦈「こさめね」
ゆっくり、
こさめがすちの手を握る。
あたたかい。
でも少し震えていた。
🦈「すちの彼女になりたい」
その瞬間。
すちの視界が、
ぐにゃりと歪んだ。
嬉しくて。
幸せで。
なのにどうしようもなく苦しい。
🍵「……俺、死ぬかもしれないのに」
掠れた声で言う。
するとこさめは、
少しだけ眉を下げて笑った。
🦈「知ってるよ」
その笑顔が、
なぜか泣きそうなくらい綺麗だった。