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メンバーは登場と同時に、横一列になってお辞儀をすることになっていた。が、俺はしなかった。すかさず気付いた卓が、耳元で「絶対に失礼な真似だけはすんなよ。お前見てると、何か不安なんだよなあ」と釘を刺してきやがった。彼はまだ何か言いたげだったが、メンバーが各ポジションに散ると、諦めてドラムの定位置に座った。
俺はマイクの前へ進み出る。
「今日は、尊敬するバンドの曲をやります。ジェットの、『美の神に捧ぐ』」
コピー曲かよ、という声が客席から聞こえた。
「でもないぜ」と俺は答えた。
司会席の英治と偶然目が合う。彼は不安そうな顔をしている。
卓のカウントのあと、ドラム・ベース・リズムギターが唸りを上げ、曲がスタートした。
そこへ俺のリードギターが入り、そして歌い始めた。
メンバーがのけぞる。
歌詞が違う。
「金儲けのために魂売って、耳障りのいい音ばかり探して、音楽をツールにしやがった。ただほしいのはカネ、カネ、カネ、カネ、カネ、カネ、カネ、カネ。音楽は、カネを釣るためのツツッツ、ツール。そんなあんたにゃわからないだろう、ロックンロールは楽じゃない、アートするって楽じゃない、音楽の神は楽じゃない。魂の雄たけび、聞こえるかい~」