帰りの車内では俊哉の不機嫌は頂点に達していた
そして家に帰るなり玄関でいきなり彼に、背中を突き飛ばされた、私は恐怖のあまり呆然としていた俊哉の言い分はこうだった
誰彼構わずに出会った男たちに色目を使うんじゃない、男を挑発するような言葉を口にするんじゃない、微笑むことも、首をかしげることも許さない
俊哉の非難は延々と続いた
私は恐怖と信じられない事に自責の念に打ちのめされた、俊哉の言うとおり私は無意識に男性を、挑発していたのだろうか
半年以上も俊哉以外の人とかかわりを、持っていなかったのでたぶん彼がとがめるような事を無意識にをしていたのかもしれない
学生時代に駅ですれ違うの男子校の男の子から、しばらくの間モテていた事を思い出した、友人は私の微笑みはセクシーで彼らを魅了しているとよくからかわれた
私自身はそう言われる理由がわからず、当惑したものだった
今彼は炎のように激怒している
「君は俺のものなんだよ!リンリン!俺一人のものなんだ!」
俊哉は激しい叱責を繰り返す
「他の男に媚びるようなまなざしを向けるのを、俺は黙って見過ごすつもりはない、君は決して俺から離れられない、自分一人では生きていけない女なんだ、君には俺が必要なんだよ 」
そうして俊哉は私の首に手をかけ、荒々しく抱き腰を振り続けた
私はそれは警告だとハッキリわかっていた、自分がもっと強い人間だったらと、どんなに思ったことか
だが私は実家からも見放され、人生経験の乏しい世間知らずの小娘にすぎなかった
ますます自分が卑小な存在になっていくようだった
俊哉は私を養い、面倒を見て、私のかわりにあらゆる決定を下すのが、夫たる彼の役目だと思い込んでいた
冷ややかな夜の海のような真っ黒の瞳を見て、彼が本気でそう信じているのがわかった
利口で人を巧みに操り、彼は完全に私を支配していた
しかし屈辱的に、激しく体を痛めつけられた後は・・・・
不思議なほど彼は穏やかで優しくさえあった、まるで何事もなかったかのようにふるまった
彼にとって妻を懲らしめるのは、夫の当然の権利にすぎなかった、妻に物事をわからせるのはそれが唯一の方法だと思っているようだ
愛しているなんてどうしていえるのだろう、まるで私を憎んでいるようにふるまったあとで・・・・・