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「風がちゃんと戻るまで」
「……」
時間すら、味方じゃない。
「だから」
耳元で、静かに囁く。
「どっち?」
その一言が、
何よりも重く落ちる。
「……」
部屋は静か。
風は、ベッドに四肢を固定されたまま、天井を見ている。
動けない。
逃げられない。
それだけで、じわじわと神経が削れる。
「……風」
すぐ横から、声。
近い。
「起きてる?」
分かってるくせに聞いてくる。
「……」
答えない。
わざと。
「無視?」
くすっと笑う気配。
その直後、
指が、頬に触れる。
びく、と体が反応する。
「……やめろ」
小さく、でもはっきり言う。
「嫌なんだっけ、これ」
夕の声は、相変わらず優しい。
でも、手は止まらない。
頬から、顎へ。
ゆっくりなぞる。
「触られるの」
「……」
視線を逸らす。
でも意味がない。
逃げられないから。
「ねぇ」
指が止まる。
「なんで嫌いなの?」
「……」
答えない。
答えたくない。
「言ってくれたらやめるかもよ?」
「……嘘だろ」
「うん、嘘」
あっさり言う。
「やめない」
そのまま、また触れる。
わざと、分かってて。
「っ……」
息が詰まる。
ぞわ、とした感覚。
「反応するね」
楽しそうですらある。
「やめろって言ってるだろ」
少し強めに言う。
「じゃあ、答えて」
「……」
「演じてる?」
核心。
「……違う」
即答。
でも、
夕は笑う。
「そういうとこ」
指が、今度は首筋に触れる。
ゆっくり。
逃げ場なく。
「演技っぽい」
「……っ」
体が強張る。
呼吸が浅くなる。
「ほんとに堕ちてるならさ」
耳元で、囁く。
「嫌がらないよね」
「……」
言い返せない。
「ねぇ、風」
手が、止まらない。
ずっと触れてくる。
逃げられない距離で。
「嫌?」
「……嫌だ」
絞り出す。
正直に。
「そっか」
少しだけ、間。
「じゃあ、まだだね」
結論みたいに言う。
「……」
心臓がうるさい。
ドク、ドク、と。
「ほら」
今度は、わざとゆっくり。
頬を撫でる。
「これ、平気になるまで」
「やめろ……」
「やめない」
被せる。
静かに。
「風が戻るまで」
「……」
その“戻る”が、
どこを指してるのか分かる。
堕ちた状態。
従う状態。
「……絶対、ならない」
小さく呟く。
でも確かに反抗。
夕の手が、一瞬止まる。
「……そっか」
ぽつり。
でも次の瞬間、
少しだけ強く触れる。
逃げられないのを確認するみたいに。
「じゃあ、長くなるね」
さらっと言う。
「……っ」
ぞわ、と寒気が走る。
「時間、いっぱいあるし」
「俺、待てるって言ったよね」
「……」
「風が折れるまで」
その言葉が、
じわじわと重くのしかかる。
「ねぇ」
また、顔を覗き込む。
「どこまで耐えられるの?」
優しい声。
でも中身は、完全に試してる。
「……」
風は、目を閉じる。
触れられてる感覚を、無理やり遮断しようとする。
でも消えない。
「逃げられないよ」
静かに告げる。
「ここじゃ」
「……知ってる」
かすれた声。
「でも、認めない」
その一言。
夕が、少しだけ目を細める。
「いいよ」
あっさり言う。
「そのままでも」
また、優しく撫でる。
さっきと同じ動き。
同じリズム。
でも意味は違う。
「どうせ」
耳元で、静かに。
「最後は、風が俺を選ぶから」
「……っ」
否定したいのに、
言葉が出ない。
「ほら」
もう一度、頬に触れる。
「これ、嫌でしょ?」
「……嫌だ」
「じゃあ、どうする?」
答えは一つ。
分かってる。
でも、
「……」
言わない。
言えない。
「……ふーん」
夕が、小さく笑う。
「じゃあ続きね」
その一言で、
終わらないことが確定する。
逃げられない時間が、
また、積み重なっていく。
「……っ」
息が浅くなる。
さっきから、ずっと。
触れられてる。
逃げられない距離で。
頬も、首も、もう慣れたはずなのに——
「……風」
耳元で、優しい声。
「まだ耐える?」
「……っ、」
答えない。
答えたら、終わる気がして。
でも、
夕の手は止まらない。
今度は、ゆっくりと位置が下がる。
「……っ、やめろ」
はっきり言う。
でも、声が揺れてる。
「ここ、嫌いだよね」
わざと確認するみたいに。
触れる。
腰に。
「っ……」
びく、と体が跳ねる。
拘束されてるのに。
逃げられないのに。
「反応、分かりやすい」
くすっと笑う気配。
「……やめろって言ってるだろ……!」
さっきより強く言う。
でも、
手は止まらない。
むしろ、ゆっくりなぞる。
確かめるみたいに。
「ここも?」
次は、お腹。
「……っ、ぁ、」
息が漏れる。
抑えようとしても無理。
「ねぇ、風」
声が近い。
逃げ場がない。
「まだ演じる?」
「……っ」
言葉が出ない。
頭が真っ白になる。
触れられるたびに、
思考が削られていく。
「ほら」
また、ゆっくり。
「嫌なんでしょ?」
「……っ、やだ……」
本音が漏れる。
隠しきれない。
「じゃあ」
一瞬、間。
「言えば?」
静かな声。
でも、完全に追い詰める言い方。
「……」
限界が近い。
分かる。
このままだと、
もっと、壊れる。
「……っ、やめて……」
かすれた声。
「やめない」
即答。
「言うまで」
「……っ」
呼吸が乱れる。
心臓がうるさい。
逃げられない。
終わらない。
「……っ、」
数秒。
耐えようとする。
でも、
また触れられて、
「……っ、やめろ……やめて、」
崩れる。
「……演技、」
小さく漏れる。
「……してた……」
沈黙。
夕の手が、
一瞬だけ止まる。
「……やっぱり」
ぽつりと呟く。
でも、
すぐに——
また触れる。
さっきと同じように。
「……っ、は……?」
理解が追いつかない。
「言ったよね」
優しい声。
でも、逃げ場はない。
「どっちにしても、って」
「……」
「白状するか、堕ちるか」
「……っ」
「今のは、“白状”」
さらっと言う。
「じゃあ次は?」
その一言で、
背筋が凍る。
「……待って、言っただろ……!」
「うん」
「じゃあ終わりで——」
「終わらない」
被せる。
はっきりと。
「なんで……」
「だって」
少しだけ笑う気配。
「言うの遅かったし」
「……っ」
「それに」
また、ゆっくりなぞる。
逃げられない場所を。
「さっきまで、嘘ついてたよね」
「……」
「お仕置き、必要でしょ」
軽く言う。
まるで当然みたいに。
「……やだ……」
弱い声。
さっきまでの抵抗は、もう薄い。
「知ってる」
優しく返す。
「でもやめない」
「……っ」
触れられるたびに、
思考が崩れていく。
嫌なのに、
止まらないのに、
でも——
「ねぇ、風」
囁く。
「どっち?」
「……」
「このまま耐える?」
「それとも」
少しだけ間を置いて、
「楽になる?」
その言葉。
ずるいくらいに、甘い。
「……っ」
耐えたいのに、
もう限界が近い。
触れられるたびに、
嫌悪と、
別の感覚が混ざってくる。
それが、怖い。
「……やめて、」
最後の抵抗。
「……お願い……」
夕の手が、少しだけ止まる。
「お願い、か」
小さく呟く。
「じゃあさ」
顔が近づく。
「何お願いするの?」
「……っ」
答え、分かってる。
でも言いたくない。
言ったら終わる。
「ほら」
優しく促す。
逃げ場なく。
「ちゃんと言って」
「……」
数秒。
沈黙。
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