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『静かな檻で ―崩壊の記録―』
【第1日:拒絶】
「おい、離せ!!触んな、気持ち悪い!!」
りうらは最初、獣のように吠えていた。
俺に唾を吐きかけ、腕に噛みつき、怒鳴り散らした。
その目は鋭く、殺意すら滲ませていた。
でも、それがいい。あの光が、いつ消えるのか――俺はその瞬間を待っていた。
手始めに、水を与えなかった。
48時間。
声は次第にかすれ、口数が減る。喉が渇き、唇が割れ、それでも「謝る気はない」と目で訴えてきた。
次に、眠らせなかった。
蛍光灯をつけっぱなしにし、大音量のノイズを流し、床に寝かせなかった。
時間感覚を奪い、記憶を混濁させていく。
3日目には、目の下に濃いクマができ、立っていられなくなっていた。
「……寝かせろよ、クソ……」
その声に、俺は微笑んだ。
「お前が、“りうら”じゃなくなるまで、無理だよ」
【第5日:屈辱】
次は、羞恥と屈辱だった。
裸にして鏡の前に立たせる。
反抗しようとすれば、鞭のようなコードで背中を叩く。
「見ろよ、どんな顔してる?」
「……クソが……殺してやる」
その時点では、まだ瞳に火があった。
でも、俺は繰り返した。
食事もトイレも、すべて監視下で。少しでも反抗すれば、それを奪う。
一口でも残せば、その日の食事は取り上げる。
そして、性的羞恥も加えた。
身体を触れなくてもいい。ただ、目の前で下着を取り上げて嗅ぐだけでいい。
それだけで、りうらの表情は激しく歪んだ。
「っ、やめろって……やめてって……!」
「どうして? お前は可愛いんだから、匂いくらい嗅ぎたいだろ?」
「ふざけんな!!……俺はっ、お前のもんじゃ……」
俺は言葉を遮るように、頬を叩いた。
「間違い。お前は“俺のもの”だ」
【第10日:沈黙】
10日目、りうらは叫ばなくなった。
床に座り、虚ろな目で何も見ていない。
「りうら、おはよう」
「……」
「りうら、声、聞かせて?」
「……うるさい」
ようやく返ってきた。
けど、その声には棘も、怒りも、感情すらなかった。
もう、ほとんど終わりだ。
ただし、最後の一線――「名前を呼ぶ」ことだけがまだ残っていた。
【第14日:崩壊】
その日、りうらをベッドに寝かせ、そっと手を握った。
「りうら。今、誰と一緒にいる?」
「……ないこ、でしょ」
初めて名前で呼んだ。
「もう、俺のこと嫌じゃない?」
りうらは小さく、うなずいた。
「俺……ない君のものなんでしょ……」
「うん。ずっと、そうだったよ」
「……もう、わかんない。考えるの、疲れた。だから、命令して……」
「……りうら?」
「ない君が、全部決めて……俺は、従うから」
俺はゆっくり、その額に口づけた。
冷たい汗の匂い。呼吸は浅く、瞳はもう完全に光を失っている。
名前を呼ばれた瞬間、勝利を確信した。
ああ、やっと──壊れた。
**
今、りうらは部屋の片隅で膝を抱えて座っている。
俺が来ると、微かに微笑む。怯えてもいない。期待もしていない。ただ、命令を待っている。
「りうら」
「……ない君」
「こっちに来て」
「うん……」
ゆっくり立ち上がる。鎖はついていない。鍵もかけていない。
でもりうらは、逃げようとしない。俺から離れようともしない。
その心が、もう“俺の檻”の中にあるからだ。
コメント
7件
ちなみにこれ完全私の性癖ですすみませんでした
ちょっと桃君の口調荒めにしてみたけどやっぱり違和感あるな🤔