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さくらんぼ_シーズン2:きいちご

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さくらんぼ_シーズン2:きいちご

3 - 世界が急に近づいた日:違う甘さの、いちご

♥

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2026年01月04日

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:学校という、小さな世界


合格発表の翌朝。

日向いちごは、いつもより少し早く家を出た。

ランドセルを背負う肩が、まだ現実に追いついていない。

(……合格、したんだよね)

夢みたいだった。

でも、スマホの通知欄に残る事務所からの連絡が、それを否定しない。

学校の門が見えた瞬間、胸がぎゅっと鳴った。

(今日……普通でいられるかな)


教室に入った、その瞬間。

「……え?」

空気が、止まった。

ざわざわ。

ひそひそ。

視線が、一斉に集まる。

「ねえ……」

「昨日のオーディション、出てたよね?」

「テレビ、映ってた」

誰かが言った。

ちぇりーの妹、だよね?」

いちごの指先が、冷たくなる。

(あ……)

担任が慌てて手を叩く。

「はいはい、席につきましょう!」


でも、もう遅かった。

休み時間。

「ほんとに合格したの?」

「もう芸能人じゃん!」

「すごーい!」

その声の中に、

混じる――

「ズルくない?」

「最初から注目されてたじゃん」

「結局、コネでしょ?」

「事務所のお気に入り」

「実力無いのに」

いちごは、笑えなかった。

「……」

ノートを見つめるふりをして、

心の奥で、静かに縮こまる。

(知ってる)

(みんなが思うこと)

(私も、同じこと……思ってた)


放課後、校舎裏。

いちごは、ひとりで座っていた。

春の風が、制服の裾を揺らす。

「……べりー、か」

まだ慣れない芸名を、小さく呟く。

(私は、お姉ちゃんみたいに輝けない)

(それでも……)

スマホが震えた。


:姉・ちぇりーの反応


楽屋の鏡の前で、私はスマホを握りしめていた。

《合格、おめでとう》

送ったメッセージは、それだけ。

本当は、

言いたいことなんて、山ほどあった。

――誇らしい。

――嬉しい。

――怖い。

全部、本音。

でも。

(……私は、喜んでいいの?)


楽屋の外では、スタッフの声。

「やっぱ話題性すごいね」

「ちぇりーの妹、ってだけで記事になる」

胸が、ちくりと痛んだ。

(違う)

(あの子は、“私の妹だから”じゃない)

それでも、世界はそう見ない。

私は、ふっと息を吐いた。

(……昔の私みたい)

デビューした頃。

「運が良かっただけ」

「事務所の推し」

「顔がいいだけ」

そう言われて、

何も言い返せなかった自分。

――同じ道を、歩かせてる?


考えすぎていると、

マネージャーが声をかけてきた。

「さくら、今日、家に帰れる?」

「……はい」

「妹ちゃん、今日学校どうだったかな」

その一言で、胸が締めつけられた。


:夜、姉妹の会話


夜。

リビングの明かりは、柔らかい。

いちごは、ソファの端に座っていた。

「あ……おかえり」

「ただいま」

一瞬、沈黙。

先に口を開いたのは、ちぇりーだった。

「学校、どうだった?」

いちごは、少し考えてから答えた。

「……すごかった」

「そっか」

「でもね」

いちごは、ぎゅっと手を握る。

「言われたよ。“ちぇりーの妹だから”って」

ちぇりーの肩が、ぴくっと揺れた。

「……ごめん」

「ちがう!」

いちごは、思わず声を上げた。

「お姉ちゃんのせいじゃない!」

一気に言葉が溢れる。

「私が勝手に追いかけて、勝手に同じ場所に行こうとしてるだけ!」

目に涙が滲む。

「……でも、怖い」

ちぇりーは、黙って聞いていた。


そして、ゆっくり言った。

「ねぇ、いちご」

「なあに……?」

「あなたが合格した理由、知ってる?」

いちごは、首を振る。

ちぇりーは、まっすぐ見つめた。

「え……」

「誰よりも、まっすぐだった。誰よりも、嘘がなかった」

そっと、微笑む。


「それは、私には真似できない」

いちごの目が、大きく開く。

「……ほんと?」

「ほんと」

ちぇりーは、いちごの頭に手を置いた。

「だからね。比べられるのは、きっと辛い」

「でも」

一拍置いて。

私の妹であること、誇っていい

「それと同じくらい、“べりー”であることも、誇っていい」

いちごの頬を、涙が伝った。

「……お姉ちゃん……」

「大丈夫」

ちぇりーは、静かに言った。

「あなたは、私の影じゃない」

違う甘さの、いちごだよ」


:次への予感

その夜。

いちごは、ベッドの中で天井を見つめていた。

(私は、まだ幼いかもしれない)

(でも……)

(歩き出したんだ)


同じ夢じゃない。

同じ光でもない。

それでも、

同じステージを目指す覚悟だけは、本物だった。


――べりー。

その名前が、胸の中で、少しだけ馴染んだ気がした。

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