※サイバー空間にいるロボット達はみんなペッパーくんの足あり状態みたいなロボット、あるいはドローンみたいなロボットばっかりです。人間のようなホラーロボットはいないのでご安心を(?)。あくまで主の捏造。
━━━━━━━━━カシャン。
1人の少女の持つライフルが音を立てる。
やけに静かなこの場に大きく響いた。
「…」
少女は黙ってそこら中に倒れている男達を見つめる。
その目は何にでもない、冷たく、怒りが混ざった冷酷の目だった。
そこへ場違いな元気な声が聞こえた。
「ねっねちゃーんっ!!」
その元気な声の持ち主は少女に思いっきり抱きつく。
「…っわ、えむ…ダメだよ、こっちにきちゃ」
「えぇー!!あたしもねねちゃんの役に立ちたいっ!!」
「ほら、もう行くよ。こんな穢れた空気の場所にえむなんて置いておけない」
「よよ?」
寧々、とよばれた少女はグイグイとえむという少女の背中を押してこの場を去る。
その空間を出るとぼんやりと視界がクリアになってきた。
さっきは本当に真っ暗闇、という感じだったがその場を出ればこの空間…サイバー空間は暗闇ではあるが ちらほらとネオンライトがついているため視界は開けている。暗闇だからといって全く見えないわけではない。むしろネオンライトが煌々と光っていて眩しいくらいだ。
「あっ!!類くーん!!司くーん!!」
えむが声を張り上げた先にいたのは2人の少年。
ラベンダーの髪に入ったターコイズのメッシュの髪色とイエローにサンフラワーのグラデーションがかかった髪色が暗闇によく目立つ。
「おや、えむくんもそこにいたのかい、寧々だけかと思っていたけれど」
「あたしは自分の任務が完了したから後からねねちゃんを追っかけたんだ!!」
「相変わらず早くて助かるよ」
「…てか、2人はなんでそんなに血まみれなの?気味悪いんだけど」
「あぁ、これか?ちょっとうるさかったから脳幹をこう…ナイフでグサッと…」
「えぇ…ちょっとまってよ想像しちゃう…てか返り血早く落としてきてよね」
「司くんいつも小型の銃使ってるのに今日は珍しくナイフなんだねぇ」
「…そういえばリンは…」
そう司が呟いた時、寧々の腕に付けてあるスマートウォッチがピッと音を立てた。
するとノイズが流れ、一気にブワッと明るい髪色の少女が現れた。
「リン」
「みんなお疲れ〜!!あたし寧々ちゃんにずっと着いてってたんだけど気づいたらウォッチの中で寝ちゃってた!!」
てへっと舌を出す仕草をするこの少女はリンと言うらしい。
リンの口から出る言葉は寧々たちとは違い、少しかすれている。まるでロボットのようだ。
姿も若干透けており、人間ではないことが見て読み取れる。
「あ、そういうことだったの。急に静かになったから類の所行ったんだと思った」
寧々がそう言った瞬間、この場に水を差すような音がした。
「……」
ため息混じりで寧々は音の下方向を向く。
それと同時に、リンたちも振り向く。
「…また、来たな」
「また、失敗作の子かぁ…」
えむと司が呟く。
失敗作、と呼ばれたロボットは、怒りに全てを支配されているように見える。
その姿はどうも無惨だった。
焼けただれたように赤いドロドロとした液体が切断された腕からとめどなく流れ続け、くり抜かれたような、本来目のある場所は黒ずんでいた。元々は白く、艶のある胴体だったと思われる身体は、灰と液体ですすけており、もう純白の色は見えない。
ギ、ギギ…と不気味な音を漏らす。
恐らく昔は、愛されていたんだろう。
でも、もう今は役たたずとして、ここに堕ちてきた。
失敗作は、もう、元には戻れない。
そんなものたちがここに来る。
そしていつまでたっても処理されない失敗作が増えていくと、この空間は危機に陥る。
だから、寧々達は今日も失敗作の処理を行う。
寧々は全てを悟ったようにライフルを構える。
「今回は私が処理する。一体だから時間もかからなそうだし。今のうちにみんなはシェルターに戻ってて。」
「…了解。気をつけてね」
「分かってる」
不安気に類は瞳を揺らしたが、寧々なら大丈夫、その確信をもって司たちとシェルターに瞬間移動していった。
最後に、えむがのこった。
「ー、えむ?ほら、早く行きな」
あたしは、この子のこと、何故かよくわかるきがする。
あたしはどこかでそう感じていた。だって…あたしも…っ
失敗作の子を見る度に、複雑な感情に襲われる。
「…ねねちゃん、あたしも一緒にやる」
「…そう。分かった」
いつものように静かに頷いてくれたねねちゃん。きっと心の中であたしの気持ちに気づいてくれてる。
ロボットが一気に飛びついてきた。
歯をむきだして襲ってくるのは軽くホラーだ。
でもそんなのにあたしたちはもう慣れっこ。処理するのはちょっと可哀想だけど。
「…ごめんね」
ねねちゃんに聞こえるか聞こえないかくらいの声量で呟き、マゼンタの輝きを放つハンマーを振り上げる。
同じタイミングでねねちゃんも引き金を引いた。
爆風が、吹いた。
「えむ、ありがと。ライフルだけじゃもう少し時間かかったから助かった」
…嘘。ねねちゃんはいつもそうやって優しい嘘をついてくれる。あたしの感情をいつも読んでくる。
そういう所がねねちゃんの好きなところ。
「…ううんっ!!あたしもねねちゃんとできて楽しかったよっ!!」
「この子の残骸、どうしよっか」
「また、あそこのお墓に埋める?」
「…そうだね。早めに埋めて帰ろう」
そう言って、あたしたちはお墓に向かった。
「だいぶ、お墓増えてきたね」
「それくらい失敗作が増えてきちゃったってことなのかな…」
あたしたちは、失敗作の子たちを処理するだけが仕事じゃない。
だけどまだまだ失敗作について追求しなきゃ。
この世界には闇がある。
物理的にも、心理的にも。
それでも、あたしたちは生きていく。
この、世界と言えるか分からない空間で。
コメント
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ああああ最高だあぁぁぁぁ 神神
いや、もう、神です。 話がちゃんと考えられてる....って感じ(語彙力消滅)ストーリー性が良き...♡1000失礼します!