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第12話「血とネオンの円卓、黒羽の席次」
地獄の最高権力者たちが集う、カミラ・カーマインの巨大な兵器工場。
その最上階にある厳重な会議室の円卓には、全地獄の魂を裏で牛耳る上級悪魔――オーバーロードたちが一堂に会していた。
武器商人のカミラ、地獄最古の悪魔ゼスティアル、カニバル・タウンの女王ロージー。
そして、Veeズを代表して不機嫌そうにスマートフォンをいじるベルベット。
張り詰めた沈黙が流れるその部屋の重厚な扉が、静かに開いた。
「遅れてごめんなさいね。カラスたちが道案内を巡って、少し喧嘩をしてしまって」
少しふわっとした黒髪を揺らしながら、いつもの落ち着いた低い声が響く。
現れたのはノア――全地獄にその名を轟かせる新たなオーバーロード
『フェザー・デーモン』だった。
その肩には相棒の大烏レインが静かに止まり、彼女の影からは、30羽の赤い眼光が薄暗い会議室を鋭く見つめている。
「チッ、来たわね。あのラジオ野郎の新しいオモチャ」
ベルベットがスマートフォンから目を上げ、露骨に嫌悪感を剥き出しにする。
彼女のボスであるヴォックスを、言葉だけで完全にノックアウトしたノアの存在は、Veeズにとって最大の目障りだった。
だが、ノアはそんなベルベットの敵意にも全く動じず、空いていた椅子に優雅に腰掛け、いつものフランクな笑顔を浮かべた。
「ハロー、ベルベットちゃん。ヴォックスの画面の傷はもう直ったかしら? 今度、彼に壊れない液晶のメーカーを教えてあげるって伝えてね」
「テメェ……!」
ベルベットが激昂して立ち上がろうとするが、円卓の最上席に座るカーミラが、鋭い目つきでそれを制した。
「やめなさい、ベルベット。……ようこそ、ノア。あなたが新入りでありながら、地獄の王ルシファーの『親友』となり、あの傲慢なVeeズを退けた実力者ね。今回の会議にあなたを招いたのは他でもない。間近に迫った天使たちの『年に一度の虐殺(エクスターミネーション)』について、あなたのその30羽の凶鳥の軍勢をどう動かすか、確認するためよ」
カミラの言葉に、隣に座る老悪魔ゼスティアルが、不気味に長い指先を絡ませながら、低く掠れた声で続けた。
「ふむ……。天国より理不尽に落とされし10歳の魂が、これほどの漆黒の魔力を紡ぐとは。ノア殿、お主のその隠された左目が、天使の軍勢を前に何を見据えるのか、我らも興味がある」
オーバーロードたちの冷徹な視線が、一斉にノアへと集中する。
彼らは皆、ノアを自分たちの陣営に引き込むか、あるいは脅威として排除するかを品定めしていた。
だが、生前に誰も近づいてくれなかった孤独の深さを知るノアは、彼らのどんな計算高い瞳に対しても、境界のない優しいイケボで、静かに、だが絶対的な拒絶を交えて語りかけた。
「私はね、天国にも地獄の権力争いにも、あまり興味がないの。ただ、チャーリーちゃんが頑張っているあのホテルと、そこにいる私の大切な仲間たちを守りたいだけ。……もし、そのホテルや私のカラスたちに手を出そうとする者がいるなら、それが天使であれ、ここにいるオーバーロードであれ……」
ノアのふわっとした黒髪が、地獄の重圧を跳ね返すように大きくうねる。前髪の奥の「左目」が、紅い光を放ちながら静かに開帳された。
背中から広がった「漆黒の翼」が会議室のネオンを完全に飲み込み、30羽のカラスたちが円卓の頭上で一斉に羽ばたき、死の影を落とす。
「……その時は、容赦なくお掃除させていただくわ」
圧倒的なオーバーロードとしての本性を突きつけられ、カーミラは息を呑み、ベルベットは椅子に深くのけぞった。
ゼスティアルだけが、その気高き闇の力に
『実に見事な覚悟だ』
と満足げに目を細める。
ノアがフッと左目を閉じると、部屋には再び静寂が戻った。
彼女はいつもの優しいお姉さんの笑顔に戻り、低い声で
「さあ、会議を続けましょう?」
と微笑むのだった。
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第12話「血とネオンの円卓、黒羽の席次」
終わりぃ!
次のお話はぁ……
第13話「黄金の執行官と、漆黒の反逆」
黄金の執行官とは誰でしょうねぇ……