ドーンドーンと大きな爆発音が耳に通る。
その爆発音とは、今最も世界で最強と言われた我々国とその隣にある貿易で有名なイノサキ国が大きな戦争を起こしているからだ。
段々イノサキ国に押されていく我々国、町は既に火の海になり、そこら中に鉄の匂いが広がる。
『どうしよう、グルちゃん……!』
完全に領土の半分以上が火の海となり、城の中まで敵の軍勢が迫ってきた我々国の総統室ではとある少女と緑の軍服を着た男の幹部が総統と総統補佐の男に現我々国の現状を伝える。
今まで一度も戦争に負けたことがないこの国が負けるはずがなかった。
宣戦布告された時、軍の準備も万端で今まで通りの楽しみな戦争だったのだ。
「やばいでグルッペン、もうシャオロン達のインカム繋がらん」
幹部達は焦っていた。初めてこんなに戦争で押されたことに驚き、更に殆ど全滅状態の前線部隊と死にかけの後衛部隊の誰一人インカムでの連絡が不可能となっていたのだ。
『私、前線行ってくる』
そんな中、この国で二人しかいない女幹部の彼女が真剣な顔で言った。
勿論、隣にいた緑の軍服を着た男と総統補佐は彼女を止めた。
「お前は暗殺部隊や、戦闘には不慣れやろ…!俺が行く」
『それだったらゾムも暗殺部隊じゃん!!』
zm「俺はいつも戦争では前線出てるからええねん!」
緑の軍服を着た男、世界的に有名な味方最大の脅威と呼ばれるゾムが彼女の判断に反対した。
「もう敵の軍勢が此処に向かってきてる、早よ対処せんかったらグルッペンが死ぬねん…!」
『だから私も行く、止めないでよ!』
戦争真っ只中、もう敵は総統室の近くまでやってきているというのに、国の代表の目の前で喧嘩を始める二人。
その時、全員の耳についたインカムからジジジ…とノイズ音が鳴った。
「グルッペン、もう無理そうやわ…」
『…!ロボロ!』
インカムから聞こえたのは情報部隊隊長、兼幹部の一人のロボロの声だった。
既に情報部隊は壊滅していたのだが、奇跡的に生き残ったのか最後の力を振り絞って現状況を総統達に知らせた。
rbr「ルイーサがスパイやったんや、今敵国の総統室でこの国が滅ぶ所を楽しみに見とる…」
rbr「幹部はトントンとゾムとコトミ、まぁ俺は死ぬからカウント無しで…その他の奴等は全員死んだ。」
rbr「前線部隊のコネシマとシャオロンは敵国の幹部に、後衛の鬱軍団は不意打ちでルイーサに、オスマンとひとらんらんは敵国との外交中に客室で、ペ神兄さんとエミさんは魔術で、俺はルイーサの仕掛けた爆弾で。」
rbr「あと数分もせずに死ぬ身やわ、この後は任せたで」
そして、もう一度ジジジとノイズ音が鳴ると、インカムの通信が切断された。
この国の幹部は総統合わせ16人、そして現在生き残っていると思われるのは6人。
更に、そのうちの一人、自身の今いる位置を教えず救出を諦めたロボロ、敵国からスパイとしてこの国の幹部になったルイーサ。
戦えるのは我々国でも極めて強いと言われた四人のみ。
圧倒的な人数の差だ、この戦争に我々国が勝利することは不可能。
gr「コトミ、ゾム、行きたいんだろう」
gr「必ず帰って来いとは言わん、行ってこい」
そんな状況の中、総統は焦る顔ひとつせずニコニコと楽しそうに笑いながら二人の幹部にそう言った。
zm「…なんや、もう死ぬ覚悟は出来てるっちゅうわけか」
『……』
gr「そりゃそうだ。俺が一体何年この国の総統をやってきたと思っている。」
〝 1000年だぞ 〟
zm「なぁコトミ」
zm「この戦争が終わったらその指に指輪はめてええか」
敵軍が居る所までの移動中、ゾムは少し照れくさそうにコトミに言った。
『え、何今プロポーズ?』
だが、そんなゾムの勇気ある一言に危機的状況で更に頭が混乱するコトミのキョトンとした表情で全てが壊れた。
だが、そんなことお構い無しにゾムは話を続けた
zm「一応買っとんてんで?この戦争の後に渡す予定やったし。」
その言葉と同時に、遠くから聞き覚えのない兵士の居たぞ!という声が耳を通った。
『残念、貰う前に私、死んじゃうかも』
気づけば敵の軍勢に囲まれていたコトミとゾムは死を悟った。
ざっと100人以上はいるだろう。
最強と言われた二人の幹部でも、この人数じゃ相手はできない。
zm「んじゃ今渡すわ」
ゾムは自身のポケットから指輪の入った箱を出し、箱だけ地面に捨てコトミの指にピッタリとはめた。
zm「コトミ覚えてないかもやけどな、今日は俺らが交際初めて5年記念や」
zm「んでそんな大事な日になんやねん、この有様は」
敵の兵士達に囲まれながらも呆れたのか溜息を零し、ピッタリとはまった指輪を眺めた。
『仕方ないよ、戦争国家だから。』
『それに、ゾムはこれでよかったって思ってるでしょ』
zm「…wバレたかぁ」
二人は背中を向け合い、愛用武器を手に持った。
zm「また来世でな」
『うん、出来れば次は平和な時代がいいかなぁ』
全く怯えることなく、死への扉を開ける二人。
数十分後、コトミの指についていた銀の指輪は真っ赤に染まっていた。
約1000年続いた戦争国家、我々国はこの時のイノサキ国の手により、滅ぼされてしまった。
町は火の海、総統も幹部も全滅、残った民は最強の名を手にしたイノサキ国の奴隷として、戦国時代は過ぎていった。
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コメント
2件
めっちゃ好きやわ🤦🏻♀️ 続き楽しみにしてますᡣ𐭩