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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第63話 〚見えない場所で、歪む視線〛(恒一視点)
楽しそうな声が、遠くから聞こえた。
笑い声。
弾んだ足音。
夜の住宅街に、まだ残っている余韻。
——ハロウィンパーティー。
俺は、その場にはいない。
けれど、全部知っている。
誰が行ったか。
何人だったか。
どこでやったか。
……澪が、笑っていたことも。
(……面白くない)
スマホの画面を閉じて、
暗い部屋で天井を見上げる。
最近、計算が合わない。
りあは完全に俺から離れた。
海翔の周りは、前よりも固い。
澪は——
「守られすぎてる」
思わず、声に出た。
俺が近づく前に、
誰かが必ず割り込む。
偶然?
違う。
完全に、包囲されている。
「……でも」
恒一は、ゆっくり口角を上げた。
守る輪があるなら、
壊す必要はない。
——ずらせばいい。
澪の予知。
あれは、未来を“見る”力。
でも最近、動きが鈍い。
見えていない時間が増えている。
(完璧じゃない)
人は、安心した瞬間が一番脆い。
ハロウィン。
笑顔。
仲間。
守られているという錯覚。
その全部が、
澪の注意を外に向けている。
「……今じゃない」
恒一は、そう呟いた。
今はまだ、動かない。
でも、準備は進める。
直接触れなくてもいい。
言葉も、姿も、必要ない。
視線だけでいい。
澪の世界の端に、
「違和感」を置く。
それだけで、人は揺れる。
スマホを手に取り、
何件かのメッセージを確認する。
——未送信。
——下書き。
——削除。
「もう少し」
暗闇の中で、
恒一の目だけが静かに光る。
澪はまだ、知らない。
自分が今、
“見えない場所”から
見られていることを。
そして——
その視線が、
まだ終わっていないことを。
夜は静かだ。
けれど、
歯車は、確実に回り続けていた。