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#おんりー
ゼオ氏
165
202
#おおはらMEN
ドズル社好き
107
#おんおら
ドズル社好き
1,226
病室に、沈黙が落ちていた。
おらふくんは、手紙の最後のページを見つめたまま、動けずにいた。
『俺は、ずっと好きな人がいました』
そして、そのすぐ下に。
『おらふくん』
「……なあ」
おらふくんが、かすれた声で呟いた。
「これ……ほんまに、おんりーが書いたん?」
誰もすぐには答えられなかった。
いつものおんりーなら、こんな手紙を残すだろうか。
何でもひとりで抱え込んで。
平気な顔をして。
苦しいときでさえ、「大丈夫」と笑って。
――そんなこと、させていたのだろうか。
「……続き、読もう」
ぼんさんが、静かに言った。
おらふくんは、涙をこらえながら頷いた。
ドズルが、便箋に視線を落とす。
そして、ゆっくりと読み始めた。
『おらふくんへ。
この手紙をおらふくんが読んでいるなら、俺はもう、自分の口から伝えられなかったんだと思います。
ごめんね。
ずっと、言いたかったことがありました。
でも、言えませんでした。
おらふくんと一緒にゲームをしているとき。
くだらないことで笑っているとき。
俺が落ち込んでいると、何も言わずに隣にいてくれるとき。
そういう何でもない時間が、俺は大好きでした。
おらふくんが笑うと、俺まで嬉しくなりました。
おらふくんが悲しそうにしていると、何とかしてあげたいと思いました。
もっと一緒にいたい。
もっと話したい。
これから先も、隣で笑っていたい。
そんなことばかり考えていました。
でも、俺にとっての「好き」は、きっと、おらふくんが思っているものとは違うんだと思います。
だから、言えませんでした。
今までみたいに話せなくなったらどうしよう。
一緒に遊べなくなったらどうしよう。
おらふくんが俺を避けるようになったらどうしよう。
そんなことばかり考えて、結局、何も言えませんでした。
花締病のことも、誰にも言えませんでした。
胸に蔓が広がっていくたびに、怖かったです。
でも、それ以上に怖かったのは、みんなと過ごす時間がなくなることでした。
特に、おらふくんと過ごす時間が。
昨日、一緒に出かけられて嬉しかったです。
また行こうって言ってくれて、すごく嬉しかった。
だから、俺は「絶対ね」って返しました。
あの約束、本当に守りたかったです。
また一緒に出かけたかった。
また隣で笑いたかった。
もっと、もっと一緒にいたかった。
……ごめんね。
最後まで、わがままで。
本当は、ずっと言いたかった。
ずっと、伝えたかった。
おらふくん。
俺は――』
ドズルの声が止まった。
便箋の最後の一行。
そこには、少しだけ滲んだ文字で、こう書かれていた。
『おらふくん、好きだよ』
「…………っ」
おらふくんの手から、力が抜けた。
便箋が小さく揺れる。
「……なんで」
ぽたり。
紙の上に、涙が落ちた。
「なんでやねん……」
もう一粒。
「なんで、言ってくれへんかったん……」
声が震える。
「俺、そんなに頼りなかった……?」
誰も何も言えなかった。
「俺、おんりーのこと……大事やって、何回も言うたやん……」
昨日の会話が、頭の中によみがえる。
『俺、おんりーのこと大事やから』
あのとき、おんりーはどんな気持ちで笑っていたのだろう。
嬉しかったのか。
苦しかったのか。
それとも。
自分の気持ちを隠すために、必死だったのか。
「……俺、気づかんかった」
おらふくんは、顔を覆った。
「毎日、一緒におったのに……」
声が、どんどん小さくなっていく。
「こんなに近くにおったのに……」
気づけなかった。
おんりーが苦しんでいたことも。
本当は何を伝えたかったのかも。
そして、自分がどれほど大切に思われていたのかも。
「……おんりー」
おらふくんは、ベッドのそばへ身を寄せた。
そっと、その手を握る。
「なあ、起きてや……」
涙で、視界が滲んだ。
「俺、まだ返事してへんやん……」
握った手に、そっと額を寄せる。
「好きって言われて、俺、まだ何も返してへん……」
声を押し殺そうとしても、涙は止まらなかった。
「なあ……お願いやから……」
いつもなら、ふざけて笑ってくれるはずだった。
「おんりー……」
いつもなら、「うるさいなあ」なんて言いながら、困ったように笑ってくれるはずだった。
なのに。
「……俺も、言いたいことあんねん」
おらふくんは、震える息を吸った。
そして、ずっと胸の奥にあった気持ちを、初めて言葉にした。
「俺も……おんりーが、大好きやねん」
その声は、誰にも届かないくらい小さかった。
けれど、おらふくんは続けた。
「友達として大事、だけやないねん……」
「おんりーが笑ってたら嬉しいし、他の人と楽しそうにしとったら、なんか気になってまうし……」
「一緒におると安心するし、帰ったあとも、また話したいって思うし……」
涙が頬を伝う。
「俺も、ずっと一緒におりたかったんよ……」
握った手を、離さない。
「やから、お願い……」
「もう一回、俺の名前呼んでや……」
「また一緒にゲームしよ……」
「また、出かけよ……」
「今度は俺が、ちゃんと伝えるから……」
おらふくんは、顔を上げた。
眠ったままのおんりーを、まっすぐに見つめる。
「……好きやで、おんりー」
その瞬間だった。
「……え?」
おらふくんが、目を見開いた。
おんりーの胸元。
服の下に広がっていた、あの緑色の蔓が――
ほんのわずかに、淡く光った。
「今……光った?」
MENが息を呑む。
ドズルも、ぼんさんも、顔を見合わせた。
そして。
おんりーの胸元に広がっていた蔓が、ゆっくりと動き始めた。
まるで、何かの声に応えるように。
絡みついていた蔓が、少しずつ、少しずつほどけていく。
「……うそやろ」
おらふくんは、握った手を見つめた。
「おんりー……?」
そのとき。
ほんのわずかに。
本当に、ほんのわずかに。
握り返された気がした。
「…………っ!!」
「おんりー!?」
おらふくんが顔を上げる。
「おんりー、今、手……!」
全員がベッドへ駆け寄った。
そして、静まり返った病室に。
かすかな声が響いた。
「…………らふ、くん……」
おらふくんの息が止まった。
聞き間違いなんかじゃない。
ずっと、ずっと聞きたかった声。
「……おんりー?」
閉じられていたまぶたが、ゆっくりと震える。
「おんりー!!」
おらふくんが呼ぶ。
すると、おんりーは苦しそうに眉を寄せながら、ほんの少しだけ目を開いた。
ぼんやりとした視線が、やがておらふくんを捉える。
「……なんで、泣いてんの……」
かすれた声。
いつもの、少し落ち着いた声。
おらふくんは、もう我慢できなかった。
「ばかぁ……っ!!」
涙を流しながら、おんりーの手を握りしめる。
「ばか、ばか……! ほんまに、ばか……!!」
おんりーは、困ったように目を細めた。
「……ごめん」
「謝らんでええから……!」
おらふくんは首を振った。
「謝らんでええから、もう勝手にひとりで抱え込まんといて……!」
おんりーの目が、わずかに揺れた。
「……手紙、読んだん?」
「読んだよ……全部、読んだ……!」
「……そっか」
おんりーは、ゆっくりと目を閉じかけた。
その顔に、ほんの少しだけ安堵が浮かぶ。
「……なら、よかった」
「よくない!!」
おらふくんが即座に叫んだ。
「全然よくないから!! まだ返事もらってへんのに寝ようとせんといて!!」
おんりーは、かすかに笑った。
「……うるさ」
その一言を聞いた瞬間。
病室にいた全員が、泣きながら笑った。
――おかえり。
誰もが、心の中でそう呟いていた。
けれど。
おんりーの胸元には、まだ消えきっていない蔓が残っていた。
そして、おらふくんはまだ、伝えきれていない。
手紙に書かれていた気持ちへの返事を。
今度こそ、本人の目を見て伝えるために。
おらふくんは、涙を拭った。
「……おんりー」
「……ん?」
「ちゃんと元気になったら、俺の話も聞いてな」
おんりーは、少しだけ不思議そうな顔をした。
それから、ゆっくり頷いた。
「……うん。約束」
その言葉に、おらふくんは泣き笑いのまま頷いた。
今度の約束は。
絶対に、ふたりで守るために。
コメント
1件
うわあ……読み終わってしばらく動けなかった。おんりーからの手紙、あの「好きだよ」の一行に全部詰まってたね。怖がりながらも最後に伝えたかったこと、それを読んだおらふくんが返事をするシーン、涙なしには読めなかった……。しかも蔓が光って、おんりーが目を開けるところは本当に鳥肌立ったよ。でもまだ蔓が完全には消えてないし、これからの展開がすごく気になる。ほんと、おかえりって言いたくなる回だった。