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薄暗い部屋。雨が窓を叩く音が静かに響く中、リクは狭いベッドに横たわっている。部屋の隅には乱雑に積まれた本やノート。無造作に置かれたイヤホンからは微かな電子音。
リクは目を閉じ、浅い眠りに落ちていく。頭に浮かぶのは壊れかけた写真と遠い誰かの声。
やがて薄暗い光の中で目を覚ますが、景色は歪み、不気味な物音が遠くから響く。まだ現実か夢か判別できない。
ベッド脇のスマホを手に取ると、知らない番号からの着信履歴。意味深なメッセージが残されている。
「君が探しているものは、もうすぐここに現れる――」
リクの瞳が揺らぎ、何かが動き始める。
眠気に襲われ、すとんとリクは眠りについてしまった。
リクは暗闇の中で目を覚ます。周囲の景色はひび割れたガラスのように歪み、不規則に色彩が変化。
遠くから意味のわからない囁き声や音が聞こえ、時空が歪む異界に迷い込んだ感覚。
「ここは……どこだ?夢か、それとも現実か?」
記憶は断片的で、すぐに消えそうになる。
視界は揺れ、身体はふわりと浮く感覚。
無機質な廊下のような空間だが壁はねじ曲がり、時間の流れも歪んでいる。
影のような不定形の存在が現れる。輪郭は揺らぎ、声も性別も不明。
記憶の収集者
「お前はここに何を求めている?」
「記憶の断片は、この迷宮のどこかに散らばっている。見つけることができるか?」
「まて、何が起きている、ここはどこなんだ教えてくれ。もしかして誘拐犯か!?すぐに僕を離してくれ!金ならやる!まだいろいろなことが終わってないんだよ!」
リクに急な目眩が来るーー
「くっ、まただ、記憶がっ、」
リクの足元に薄く光る小さな球体が浮かぶ。過去の一場面を映し出す記憶の断片だ。
映像は誰かの笑顔や温かい光に包まれた日々。だが突然、映像は歪み、暗転する。
リクは断片を握りしめ、決意を固める。
リク(心の声)
「ここがどこであれ、俺は自分の答えを見つける――」
そう言って、さらに深い迷宮へ足を踏み入れる。
リクはねじれた廊下を静かに歩く。
足音が響かない異様な空間に、彼の呼吸だけが一定のリズムを刻む。
壁には歪んだ影が揺れ、不気味な囁きが耳元をかすめる。
手を伸ばして壁に触れると、冷たくざらついた感触が指先を刺す。
「ここにあるのは、断片だけか……」
薄暗い空間の中で、彼は記憶の断片を探し続けている。
けれど、見つけたものはすぐに消え、また別の断片を求めて歩き出す。
時折、不意に視界が揺れ、体が宙に浮くような感覚に襲われる。
それでもリクは動じず、冷静に周囲を見回す。
「俺が答えを見つけるまで、ここを離れられないんだ……」
孤独と不安の中で、リクは前へ進み続ける。
リクが静かに迷宮を進んでいると、遠くから突然、甲高い叫び声が響く。
「ギャー!!!お化けが出たー!!!」
その声が反響する暗い廊下を、元気な少女が勢いよく走ってくる。
慌てた足音と息遣いがすぐ近くに迫り、次の瞬間、彼女はリクにぶつかって転びそうになる。
「うわっ、ごめん!びっくりしてつい…」
少女は慌てて顔を上げ、元気いっぱいの笑顔をリクに向ける。
「大丈夫か?」リクが声をかける。
少女は顔を上げ、目を丸くしながらも必死に答えた。
「お化けが…出たんだよ!ここに…!」
リクは眉をひそめて周囲を見回しながら言った。
「この迷宮に…?お前は一人か?」
少女はうなずき、震える声で言った。
「うん、怖くて…」
リクは軽く息を吐き、少しでも心強い味方ができたことに気づいた。
「…ところで、お前の名前は?」
少女は少し照れたように顔を背けるけど、やがて小さな声で答えた。
「アイビー…」
リクはその名前を心の中で反芻した。
「アイビーか。よろしくな、俺はリクだ。」
二人の距離が少し縮まった瞬間だった。
リクは少し落ち着いたところで、アイビーの持ち物を見せてもらうことにした。
アイビーは照れくさそうに小さなバッグを差し出す。
リクがバッグを開けると、中には
• ぼろぼろの地図の切れ端
• 手作りらしい小さな木のペンダント
• かじりかけの干し果物(何かの実)
• 使い込まれた鉄パイプの握り部分に巻かれた布
リクはそれぞれをじっと見つめ、意味を考えた。
「この地図、ここで迷わないために作ったのか?」と聞くと、アイビーは頷く。
「うん、でもよくわかんなくなっちゃうんだよね」
リクはペンダントに目を留めた。
「これは?」
「昔、家族からもらったの。守ってくれるって言ってたんだ」
リクは少し微笑んだ。
「大事にしてるんだな」
リクとアイビーは歩みを進める。ねじれた廊下、崩れかけた階段、異様な静寂に包まれた広間。
壁のひび割れから冷たい風が吹き込み、二人の呼吸が白くなる。
「この先に何かいる気配がする…」リクが静かに呟く。
アイビーは握りしめた鉄パイプを少し強く握って応えた。
「怖いけど、逃げないよ。」
床には足跡のような濡れた跡が続いている。二人は慎重にその跡を辿った。
途中、謎めいた文字や古びた絵画が壁に描かれている。
それは何かのメッセージかもしれないとリクは思いながら、見つめていた。
時折、遠くから「ギギッ」という金属音や低い呻き声が聞こえ、緊張感が高まる。
「準備はいいか?」リクが言う。
「もちろん!」アイビーが力強く答える。
二人は深呼吸して、さらに奥へと歩を進める。