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◻︎結城の気持ち
次の日。
ランチの時間に、早絵に街コンの報告をした。やっぱり若い人が多かったこと、同年代が1人いたけど訳ありだったことと、怪我をしてしまったこと、それから…
「あれ?そういえばなんで結城君がいたんだろ?本気で結婚相手を探しにきたとか言ってたけど、私たちと一緒に帰っちゃったんだよね」
今頃、不思議に思った。
「もう、結局うまくいかなかったってことね、結城君は」
「なによ?」
結城は朝から出張で、今日はまだ出社していない。
「私が教えたのよ、茜は街コンで結婚相手を探すみたいだよって」
「なんで?」
「なんでって、結城君は、茜のことが好きなんだけど、茜はちっともその気がないから相談されてたの、結城君に。どうしたら茜を自分に振り向かせることができるかって」
「また冗談を。そんなの本気じゃないって。それに…」
「それに?」
「私、誰かを好きなるってことがよくわからなくて」
「はぁ?もしかしてアイツに振られたことがトラウマとか?それって、逆にアイツをつけ上がらせてしまうよ、アイツなんかよりもっといい男見つけてさ、すっごい幸せになって見せつけてやればいいのに」
「そんなにいい男なんていない。いたとしてもね、モテるに決まってるから私なんか相手にされない…だったら最初からそんな男には近づかないって決めてるから」
もうあんな思いはしたくない。お互いに仕事をしているから、それぞれの時間も大切にして自立した付き合いをしようと話し合っていたのに、いつのまにかあんな裏切られ方…。
“結婚するんだ、この子と”
「茜は、ベタベタするような付き合い方はしてなかったけど、一途だったもんね。信じ切っていたアイツから受けた仕打ちがいまだに傷を残してるなんてね…」
誰かを好きになると、あれこれ窮屈で鬱陶しいと思うようになってしまった。でも、結婚はしたいと思う。どこか矛盾しているなとは思うけど。
午後3時を回った頃、結城が出張を終えて出社してきた。
「チーフ、昨日は、どうも…」
「どうも、じゃないでしょ?一度きちんとお詫びをしとかないと、と思ってるんだけど」
「はぁ、実は俺も反省してました。昨日は、あの三木って人が森下チーフのことを軽率に扱ってるように見えて、それで…」
「なんで、私のことが関係するの?とにかく、昨日は言ってなかったけど私はあなたの上司だし怪我をさせてしまったことは、謝罪しないとね。それに、動けないなら、家事も手伝わないとと思ってたから。今日、定時後行くわよ」
「は、はい!チーフと一緒なら喜んで!」
なんだか嬉々としている結城を見て、頭を捻った。
_____悪いヤツではない
それだけはわかるんだけど。いくら好かれてると聞いても、心が1ミリも動かなかった。