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――エルドアーク宮殿――



※王の間



「各師団長四十七名、全員集結致しました!」



豪華な大理石の柱が建ち並ぶ広大な広間内に、一つの声が木霊する。



多数の人物が、この広間内に規則正しく整列していた。



「第三軍団長及び、城内待機中の軍団長、以下十九名。全員集結」



続けて一つの声が上がった。



“全員集結”



それは即ち、狂座の全戦力が此処に集結したという事になる。



“エルドアーク宮殿 王の間”



その奥に向かって敷き詰められた、一本の黄金装飾の絨毯。それは正に、王の下へと続く道標で在るかの様に輝いている。



数多の人物を掻き分ける様にその道標を辿り、玉座に向かって歩みを進めるルヅキの姿。



その傍らにはユーリとハルの姿も在った。



「お帰りを、お待ち致しておりました……」



道標が途切れた所で、ルヅキが上を見上げて口を開いた。



三人は階段状の上にある玉座に向かって膝を着き、深々と頭を下げる。



その黄金の玉座に、頬杖を突きながら居座る人物。



「我等が当主ーー」



ルヅキは徐々に顔を上げながら、その人物に向けて呟く様に口を開く。



「冥王……ノクティス様」



王の間に一際と緊張が走る。今再び、冥王が此処に復活せん事を。



玉座に居座る、冥王ノクティスと呼ばれし者。



その身に纏う、金銀装飾に彩られた中世衣装は、皇帝の如き威厳を醸し出し、驚く程に白い肌の色に溶け混む様な、長く輝かしいまでに煌めく金色の髪が艶やかだった。



金と銀の二つに別れた両の瞳。その見てるだけで瞳の奥に吸い込まれそうな、美しいまでに神々しいヘテロクロミア(金銀妖眼)を以て、眼下を見据えている。



“男性なのか女性なのか?”



その存在感は“性別”といった次元で括れるものでは無い。



それはまるで、性別の無い至高の存在。



“天使”



アンドロギュノス(両性具有体)とも表現すべき姿であった。



玉座に頬杖を突いたまま、ノクティスがゆっくりと口を開く。



「随分とその数が減ってしまったね……。私が不甲斐ないばかりに苦労をかけた。済まない……」



ノクティスはその中性的な声で、眼下の者達にそう労いの言葉を紡ぐ。



「いえ。冥王様の御身在る限り、我等は常にノクティス様と共に在ります」



ルヅキは再びノクティスを見上げ、その忠誠心を顕にしたのだった。



「ありがとう。君達の心義、傷み入る。そしてそれは何時如何なる時も、忘れる事が無い様……」



ノクティスの表情とその声は驚く程に穏やかで、その言葉には言霊の様な卯像無形の力が含まれていた。



「御意……」



ルヅキ以下全員が、一斉に玉座のノクティスへ向けて、平伏す様に跪いた。



「そう言えば……」



ノクティスが辺りを伺う様に口を開く。



「アザミの姿が見えない様だが、何か任務中なのかな?」



ノクティスのその言葉の意味に、一同に緊張が走る。



この不在の間、その経緯の事は何も知らないのだ。



ユーリの表情が悲痛に帯びる。しかし平伏している為、その表情の程を伺う事は出来ない。



「アザミは光界玉奪取の任務中、その命を……落としました」



そう淡々と事の顛末を伝えてる様に見えるルヅキだが、その声は確かに震えていた。



それは誰も気付けない程の、小さな憂い。



「そうか……。あのアザミがね……。これは狂座にとっても私にとっても、非常に由々しき事態」



ルヅキの心情を汲み取ったのか、ノクティスはその恐ろしい迄に精悍で美しい表情に憂いを帯びる。



「ルヅキ。君のその心情、察して余りある。済まなかった……」



それは弔いと労いの言葉。



ノクティスは“王を頂く者”として、ルヅキに自らの過ちとも取れる、謝罪の言葉を述べていた。



「勿体無き御言葉……」



ルヅキはノクティスに頭を垂れたまま、その表情を見せる事無く呟く。



その想いを噛み締めているかの様に受け止めていると。



『ルヅキ……』



ユーリには、そう見えたのだった。



「それにしても解せない事がある。アザミを倒せる程の者が、この世に居るとは思えないのだが……」



ノクティスは頬杖を突いていた右手を口許の方へ持っていき、考える様な仕草でそう促す。



もしそれが有り得るとするなら、それは臨界突破者の中でも更に特別な存在である事。



「信じられない事ですが、特異点に生き残りがおりまして。しかもそれがあの四死刀の後継者との事……」



「ほう……。特異点、しかも彼等の後継者とはね……」



ルヅキの報告に、ノクティスは口許を厭らしく歪める。だがその美しい表情は些かも変わらない。



一同皆目。その姿に震撼する。



玉座に居座ったままのノクティスからは、確かに感じ取られる程の気質が溢れていたからだ。



それは肌に放りつく様な、常人ならそのまま魂を抜かれる程の、殺気に近いもの。



『うっ……』



誰もがその殺気に充てられ、こう思っていた。



“明らかに怒っている”ーーと。



「申し訳ありませんノクティス様! 特異点は直ちに総力を以て始末しますゆえ。どうか……」



ルヅキはそう懇願する。



その先に続くのは、赦しを乞う言葉なのか?



「フフフ……」



それまで玉座に居座り続けていたノクティスが、そうゆっくりと立ち上がった。



「そんな事する必要は無いよ。勿体無いじゃないか」



ノクティスのその一言に一同唖然。



“勿体無い?”



まるで自分の危機さえも、楽しんでいるかの様に。



「実に興味深い存在。是非会ってみたいね……その特異点に」



ノクティスの、その真意を理解出来る者はいない。だが、それを口に出す者もいない。



“冥王の意志は絶対”



それが狂座に於ける、絶対不変の真理。



「楽しみだね。そう思わないかいルヅキ?」



「はい。仰せの通りでございます」



楽しそうに語るノクティスに受け答えるルヅキを尻目に、ユーリが誰にも聴こえる事無く「ちっ……」と呟いていた。



“――全く! この期に及んで何を悠長な事を……。ルヅキの気持ちも分からず、特異点に会ってみたいだぁ? アンタの気まぐれに付き合ってる暇は無いんだよ!”



ユーリは心の中で毒づいた。



“あんな奴、さっさと殺せばいいものを。大体ね、アンタが不甲斐ないからルヅキはこんなにも苦労してたんだよ!”



「どんな子だろう? きっと焔の様に強い魂を持った子なんだろうね」



そう自分に言い聞かせる様に、何処か遠い目で語り続けるノクティス。



『……いい事思い付いちゃった☆』



それを良しとしないユーリの瞳に、ある邪(よこしま)な光が宿っていた。


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