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三文小説
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みらさん、第13話の感想を読ませていただきました。 目黒くんと阿部くんが、ゼロから曲を作っていく工程がとても丁寧に描かれていて、胸が温かくなりました。特に「帰ってこられる場所みたいな曲」という言葉が優しくて、2人の関係性がそのまま音楽になっていく感じが素敵でした。完成した曲が「お守り」になるという発想も、この物語にぴったりだなと。 夜景のロケ地が決まったところで、今後の展開がますます楽しみです🌷
数日後の朝。
目黒と阿部は事務所が用意してくれた音楽スタジオにいた。
部屋にはピアノやギター、キーボードが並び、防音された静かな空間が広がっている。
「なんか緊張するね。」
阿部は苦笑しながら、用意されていたアコースティックギターを手に取った。
「俺たち、作曲なんてほとんどやったことないもんね。」
目黒も笑いながら椅子へ腰掛ける。
「だからこそ面白そう。」
「うん。」
二人は顔を見合わせて笑った。
「まずはどんな曲にしたい?」
目黒がノートを開きながら尋ねる。
阿部は少し考えて答えた。
「バラードかな。」
「聴いた人が安心できるような。」
「俺もそう思ってた。」
目黒はすぐに頷いた。
「帰ってこられる場所みたいな曲。」
「いいね。」
阿部はギターを軽く鳴らす。
静かな音が部屋に響いた。
「こんな感じかな。」
「もう少し優しい方が好きかも。」
「じゃあ、こう?」
コードを変える。
「あ、それ。」
「今の好き。」
そんなやり取りを何度も繰り返す。
少し作っては止まり。
また最初から弾いてみる。
「ここ、サビにしたい。」
「でも盛り上がりすぎない方がいいかな。」
「じゃあサビはメロディじゃなくて歌詞で気持ちを伝えよう。」
「いいね。」
昼になり、スタッフが差し入れのお弁当を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
二人は休憩しながらも、
「このあとどうする?」
「イントロもう一回考えよう。」
と、頭の中は曲のことでいっぱいだった。
午後。
ようやくメロディが形になり始める。
「できた……。」
阿部がギターを弾く。
目黒が小さく鼻歌を乗せる。
二人とも自然と笑顔になった。
「これだ。」
「うん。」
「俺たちらしい。」
その勢いのまま、歌詞も考え始める。
ノートには何度も書いては消した跡が増えていく。
思いついた言葉を一つずつ並べていく。
途中で二人とも立ち上がり、完成途中の歌を歌ってみる。
「ここ、音が高いかな。」
「じゃあ半音下げよう。」
「今の方が歌いやすい。」
また歌う。
また直す。
時計を見る余裕もないまま、時間だけが過ぎていった。
「できた!」
阿部が最後のコードを鳴らす。
目黒がノートを閉じる。
「完成……。」
二人は顔を見合わせた。
阿部が時計を見る。
「もう夜?」
「朝からいたのに。」
目黒も思わず笑ってしまう。
「時間忘れてた。」
阿部はギターを抱えたまま大きく伸びをする。
「曲を作るのって。」
「こんなに大変なんだね。」
「うん。」
目黒も深く頷く。
「一曲できるまでに、こんなに時間と気持ちを込めるんだね。」
「今まで歌ってきた曲。」
「もっと大事に歌わなきゃって思った。」
阿部は完成したノートをそっと胸に抱く。
「でも。」
「大変だけど。」
「すごく楽しい。」
目黒も穏やかに笑う。
「俺も。」
「この曲は。」
「きっと一生忘れない。」
二人は完成したばかりのデモをもう一度流す。
スタジオいっぱいに響く優しいメロディ。
それは、恐怖を乗り越えようとする二人の想いと、これから先も隣で歩いていこうという約束が詰まった、世界でたった一つの「お守り」の歌だった。
___________
翌日。
目黒と阿部は、朝から再び音楽スタジオにいた。
昨日完成したメロディーと歌詞。
今日は、それを一曲として形にしていく日だった。
パソコンの画面にはDAWが立ち上がっている。
「ここにピアノを入れて……。」
目黒がマウスを動かす。
「そのあとにストリングスが入ったら綺麗かも。」
阿部はヘッドホンを片耳だけ外しながら答える。
「うん。」
「でも最後まで盛り上げすぎない方が、この曲らしい気がする。」
「静かに終わる感じ?」
「そう。」
「余韻が残るような。」
二人は何度も再生しては止め、音色を変え、また聴き直す。
「このピアノ、少し優しすぎるかな。」
「じゃあ少しだけ音を硬くしてみよう。」
「うん、その方が好き。」
時間を忘れて作業を続けていると、スタジオのドアがノックされた。
コンコン。
「失礼します。」
入ってきたのは、事務所で音楽制作を担当しているスタッフだった。
「お疲れさまです。」
「曲、できたって聞いて。」
「よかったら聴かせてもらえますか?」
目黒と阿部は顔を見合わせ、小さく頷いた。
「もちろんです。」
目黒が再生ボタンを押す。
静かなピアノから始まり、優しく重なるギター。
二人の仮歌がスタジオに流れ始めた。
スタッフは何も言わず、最後まで耳を傾ける。
曲が終わると、静かな時間が流れた。
やがてスタッフはゆっくり微笑む。
「……すごくいい曲ですね。」
二人は少し照れたように笑う。
「ありがとうございます。」
スタッフはノートを開きながら話し始めた。
「少しだけアドバイスしてもいいですか?」
「もちろんです。」
「Aメロは、このままのシンプルさが魅力です。」
「でも、二番だけ少し音を増やすと、最後のサビがもっと印象に残ると思います。」
「あと、サビのコーラス。」
「今でも十分綺麗ですが、二人の声が重なる部分を少し増やしたら、この曲のテーマがもっと伝わる気がします。」
目黒は真剣にメモを取り始める。
阿部も何度も頷いていた。
「勉強になります。」
「ありがとうございます。」
スタッフは笑顔で続けた。
「それと。」
「この曲。」
「ぜひミュージックビデオも作りたいですね。」
「本当ですか?」
阿部が目を輝かせる。
「派手な演出はいりません。」
「ダンスもいらない。」
「二人がこの曲を歌っている姿を、そのまま映したいんです。」
目黒は興味深そうに尋ねた。
「どんな場所を考えていますか?」
スタッフは少し考えて答える。
「静かな背景。」
「夜の街でもいいですし。」
「海でもいい。」
「二人が自然に歌える場所がいいですね。」
阿部は目黒と顔を見合わせる。
そして、ほぼ同時に口を開いた。
「夜景。」
スタッフが笑う。
「やっぱり。」
「二人とも同じ意見でしたね。」
目黒も笑顔で頷く。
「夜景を見ながら歌いたいです。」
阿部も続ける。
「派手じゃなくて。」
「静かな場所で。」
「星が見えたり、街の灯りが見えたり。」
「そんな景色の中で歌えたら嬉しいです。」
スタッフは満足そうに頷いた。
「決まりですね。」
「夜景を中心にロケ地を探してみます。」
「きっと、この曲にぴったりの場所が見つかりますよ。」
スタッフが帰ったあとも、二人はしばらくパソコンの前に座っていた。
「なんか。」
阿部が笑う。
「本当に曲になるんだね。」
「うん。」
目黒も画面を見つめながら微笑む。
「最初は、『二人のお守り』を作りたかっただけなのに。」
「気付いたら。」
「たくさんの人に届ける曲になりそう。」
阿部は完成に近づいていくDAWの画面を見つめ、小さく頷いた。
「この曲が。」
「誰かの帰る場所になれたらいいね。」
「うん。」
目黒は静かに答えた。
「そうなったら。」
「アンクレット以上のお守りになるかもしれないね。」
二人はもう一度再生ボタンを押した。
スタジオには、二人が未来へ向かって歩き始めた証となるメロディーが、優しく響いていた。