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こんなに更新が楽しみなノベル初めてかもしれない……… 本当に私今二次創作じゃなくて普通に小説読んでる気分だわ……そっか、二次創作か。 あとノベルにも手を出したんですねチャットでも素晴らしかったのに…… めっちゃ面白いです!!更新楽しみ〜!!!!
「手前……誰だ?」
木陰でひっそり休んでいると、一人の男が俺の横に座っていた。
姿は俺に似ていた。
いや、服装も髪の色も瞳の色も、間違いなく、俺だった。
「私? 私はねえ、君だよ、君」
俺が世界で一番嫌いな阿呆と同じ話し方に、俺にそっくりな容姿。
第一に思った。コイツは誰だ?
第二に思った。これは夢か?
第三に思った。異能の類か?
どっちにしろ心底腹が立って、俺はコイツの顔を殴ろうと手を振った。
「君は……自分の顔を殴るのかい?」
「……は?」
コイツは俺の頬を触り、ふわっと腰をかがめて、俺の顔を覗いた。
その笑顔にゾッとした。
「君は自分の顔を殴っていいのかい?」
「……手前を殴ったら、俺の顔にも痕がつくのか?」
「さあ? 私にわかるわけがないじゃないか。でも、私を殴ったら、君自身を殴ったようなもんだろう?」
コイツは、なんなんだ。
やっと客観的に見れたようで、ゾッとした。そもそものはなしだが、何故俺はここにいる? 夢だとしても、夢なのだから起きられる筈だろうに、起きられない。
「ねえ、君、もし、もしね、よかったらなんだけど、私にここのことを教えてくれないかい? どうにも、私はここがよくわからないんだ。なあ、いいでしょう?」
「……それより、手前は誰だ。」
「……時がくればわかるよ。それより、道を教えてくれたまえよ。教えてくれなかったら、君の帽子、捨てちゃうけど」
「……仕方ねぇなぁ。終わったらさっさと消えろ。それか死ね。」
「わあ、口が悪いねえ。お礼を言えばいいのか、文句を言えばいいのかどっちなんだろう?」
「あ? いいから、つべこべ云わず着いてこい。俺は忙しいんだ」
「そうか。なら、感謝しないとね。ありがとう。」
「……気持ち悪い……」
消え入る様な声だった。きっとアイツには聞こえてない。
「それでね、私、この辺をくるりと回ってみたのだけれど、ここは、とても清々しいね。空気も澄んでるし、それに環境がとても整備されてる。いいね、君、こんな恵まれた所で、さぞかし悩みも吹っ飛んでしまいそうだ」
「そうか……そりゃあ、よかったなァ」
「ああ、いいね、ここ。私、すっかり気に入ったよ。ねえ、私と君で交換してみないかい?」
「ハッ」
俺は鼻で笑うと、ソイツよりぐんぐん先を行った。ソイツはぼそっと、およ……と呟くと、
「ねえ〜、待ってくれよ〜、待ち給え〜」
俺の肩を触った。
「触んじゃねえ。とりあえず、ここ行ったら交番あるから、そこで教えてもらえ。俺は暇じゃあねえんだ」
ソイツは黙り込んだ。なんだ、交番に行きたくないのか。……俺だと、思われちまうからか?
「そっ、かあ……うん、仕方ないね、わかったよ、私はもう君の前に現れない、君はすっかり私のことを忘れてしまっているみたいだからね」
「は?」
「ほら、あの水面見てごらんよ、君を呼ぶ大切な人の顔が映ってるよ」
「……は」
その川の水面を見た。たしかに映っていた。俺の名前を呼ぶ人の顔。
「ほら、行ってあげなよ、そもそも、ここは君のいていい世界じゃあないんだ」
「あ? どういう意味だよ」
「それは……ここが、地獄だから?」
歪んだ。たしかに歪んだ。
ぐにゃりと地盤が歪んで、ソイツの顔も歪んで、ああ、俺の手も、歪んでる。
「君は化け物だから」
ソイツがつぶやいた。
そうだ、俺は化け物だ。
人を喰っちまう化け物だ。
本当の俺の姿は、ああ、ここは地獄か?
にゅっと生えてきた白い腕は俺の口を塞ぎ、俺を頭から川の中へと引き摺り込んだ。
息が、できなかった。