⚠嘔吐表現注意⚠
ほとけは、いつものようにスタジオでの歌の練習をしていた。明るく元気な彼の声は、いれいすのメンバーだけでなく、ファンにとっても癒しそのものだった。だが、最近、体調に違和感を覚えることが増えていた。
夜遅くまで歌詞を書いたり、収録の準備をしたりすることが日常だった。けれども、少しずつ体が重くなり、喉の奥に違和感が残る日々が続いていた。
「大丈夫、大丈夫だよ…」
自分にそう言い聞かせながら、ほとけは小さく笑った。メンバーやスタッフに迷惑をかけたくない。その一心で、異変を感じても黙っていた。いつも元気な自分でいること。それが、ほとけにとっての「らしさ」だった。
ある日の収録中、ほとけは急に目の前が暗くなるのを感じた。軽いめまいとともに、胸の奥が締め付けらるような感覚が襲った。慌てて椅子に座る。
「いむくん、大丈夫、?」
他のメンバーたちが心配そうに声をかけるが、ほとけはすぐに顔を上げて笑顔を作った。
「うん、ちょっと疲れちゃっただけ! 」
その場はそれで済ませたが、心のなかでは焦りが募っていた。「なんでこんなに体が言うことを聞かないんだろ…」と。
その夜、ほとけは自宅ベッドで横になっていた。熱があるのか、全身がだるくて、吐き気がおさまらない。胸の奥がムカムカする感覚がずっと続いている。それでも、誰にも言わないと決めていた。
ほとけはひとり、暗い部屋で耐え続けた。
「ッう…おぇ゙ッ」
「げほッげほっ…」
「はぁ…ぅ゙おぇ…」
目を閉じても眠れず、吐き気がひどくなるたびに洗面台へ向かい、水を口に含む。鏡に映る自分の顔は、いつもの明るさとはほど遠かった。
明け方近く、ほとけはようやく落ち着いたものの、体力がほとんど残っていなかった。ふらふらとベッドに戻ると、スマホが光った。メンバーの誰かからメッセージが届いているようだ。
「いむくん、明日みんなで打ち合わせやけど、無理せんとってな」
それは、ほとけの一番の親友、初兎からのメッセージだった。
ほとけは一瞬だけ、「話してもいいのかな」と思った。でも、次の瞬間には「やっぱり迷惑かけたくない」という思いが勝る。
「ありがとう!全然平気だよ~!明日も元気に行くね!! 」
ほとけはそう返事を打ち、スマホを置いてベットに身を投げた。
翌朝、ほとけはなんとか体を起こし、メンバーの待つ場所へと向かった。顔色の悪さを隠すためにマスクをして、笑顔を作る練習をする。みんなが心配しないように、いつも通り明るく振る舞うことが自分の役目だと思っていた。
「おはよ〜、みんな早くない!?」
明るい声で挨拶すると、Ifくんは「お前がいつも通り来るの遅ぇだよ!」といつものテンションで返してくれた。他のメンバーたちもそれを見て笑っている。初兎だけは、なんとも言えない表情をしていたが…。その瞬間、ほとけは少しだけ救われた気がした。みんなが自分を信じてくれている。だからこそ、自分は弱音を吐いてはいけない、と。
打ち合わせが終わり、全員でオリ曲の収録をしているとき、ついに限界が訪れた。高い音を出そうとした瞬間、胸の奥からこみ上げてきた吐き気に耐えきれず、ほとけはその場に吐いてしまった。
「うっ…」
えずくことなく、するすると胃の中のものがあふれてくる。
「ほとけ!?」
驚いたメンバーたちが駆け寄る中、ほとけはまだ迫りくる吐き気と戦っていた。
「あッ…ごめんなさいっ…」
涙が頬を伝う。
気がつけば、初兎がしっかりとほとけを抱き起こしていた。
その後、ほとけは病院に運ばれ、体調不良の原因が過労とストレスであることが判明した。メンバーたちは、ほとけが無理をしていたことに気付かず、自分たちの不甲斐なさを感じていた。
「いむ、なんでひとりで抱え込んでんだよ…」
リーダーのないこが、優しくほとけの肩を叩く。ほとけは申し訳なさそうに俯いた。
「だって、みんなに迷惑かけたくなかったし…」
すると、悠祐が笑いながら言った。
「そんなん俺らが許すわけ無いやろ!お前は仲間なんやからさ!」
その言葉にほとけは目を見開いた。そして初めて涙を流しながら「ありがとう」とつぶやいた。
休養を経て、ほとけは少しずつ元気を取り戻していった。メンバーたちの支えを受け、自分ひとりで抱え込む必要ないと気づけたからだ。
「これからはもっと頼るね」
ほとけが笑顔でそういったとき、いれいすのメンバー全員が心からの笑顔で頷いた。メンバーの絆がさらに深まった出来事だった。
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