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私の幼少期はとても明るいと言えるようなものではない。信頼がないと話したくない。
そんな過去が私にはある。
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「私が彼のことを目で追うようになったのは、小学校の5年生からなんだよね〜」
私は休日に、高校で仲良くなった友達の中でも唯一信頼のおける友達と会って、私の過去の出来事を話していた。
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私が小学校に入学する頃、母は体を壊して月1回の通院が必要になっていた。
そのことを父は知っているはずなのにいつも仕事ばかりで家にはなかなか帰ってこなかった。
帰ってきたとしてもパソコンを開いて「大切な資料を作ってるから話しかけるな!!!」と怒鳴ってばかり。酷い日には母の体を叩いたりしていた。
そんな日々に私も母も息の詰まる生活を送っていた。
だけど、母が私の強い味方になってくれていたので唯一安心できる居場所でもあった。
ある日私は、母に着いて行って小さな公民館で開かれる地域の集まりに参加していた。
「母以外の人はみんなお父さんのように大きな声を出して痛いことをするかもしれない」
そう思っていたから母の隣でじっと座っていた。
すると男の子が声をかけてくれた。
「僕ね!まなとって言うんだ!あっちの公園で遊ぼ!」
そう言ってまなとくんは私の手を引いて公民館から外に出た。
「かすみちゃんは公園でなにがしたいのー?」
名前を呼ばれた私はびっくりした。
でもその時の服装は幼稚園の制服だったから名札を見てくれたんだなと思った。
「私は、お部屋で絵本読みたい…」
小さな声で言ったら「絵本はなにが好きなのー?」と聞いてくれた。
まなとくんは私の声を聞いてくれた。
それが嬉しくて私はまなとくんと手を繋いだまま安心感を覚えた。
そのあとはまなとくんと公園で遊んで母と家に帰った。
そしてその夜、私が寝たあとに母は父に離婚の話を持ちかけていた
その1週間後に母と父は離婚した。
それから数ヶ月が過ぎた頃、まなとくんは私と同じ小学校に通っていることを知った。
休み時間の間にいくつかの教室を探してようやくまなとくんを見つけた。
「1年3組…私の1つ下だ」
そうつぶやきながら見ていたらまなとくんが私に気がついた。
(少しづつ近づいてくる!なにを話そう?!)
考えている間にまなとくんが「かすみちゃん!この前遊んでくれてありがと!」と教室の入口で私の手を握りながら言ってくれた。
「え!あ、うん!楽しかったね!」
咄嗟に思いついた言葉を口に出す。
「またこんども遊ぼうね!」
その言葉に私は小さく頷いた。
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あれからあっという間に3年が過ぎて私は5年生になった。最近はまなとくんと話すことが少ないけど、校内ですれ違うまなとくんを目で追うようになっていた。
「まなとくん、私の事覚えてるかな…」
ふと、そんなことを考えてしまう時がある。
だって、私が3年生の時から話すことが減ったんだから仕方ないよね。
それにまなとくん、少し返事したらどこか行っちゃうし、返事してくれても私の名前呼んでくれないんだもん。
「私の名前忘れちゃったのかな…」と独り言をつぶやきながら廊下を歩いていると、誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい!私、前見てなくって…」
顔をあげながら謝った相手は、まなとくんだった。
「あ、かすみちゃん…大丈夫?」
まなとくんはぶつかった衝撃で床に座っていた私の顔の前に手を差し出してくれた。
「私の名前、呼んでくれた!」と、嬉しい気持ちを隠しながら その手を握って立ち上がった。
その時に私の口とまなとくんのほっぺが当たってしまった。
「ご、ごめん!」
私は恥ずかしさのあまり、自分の教室へ戻ってしまった。
その日の夜┈┈┈私は 「話せるだけでも嬉しいのに、ほっぺと口が当たっちゃうなんて〜!」 と自分のベッドでじたばたしていた。
じたばたしている私が「なんだか私じゃないみたい!」と思った私は鏡を見てみた。
鏡に映るのはりんごのように顔を赤くした私だった。
ふと、あの時のことを思い出した。
「まなとくんは普通だったな…」
そう思った私は考えてみた。
「顔は普通だったけど目線は…?耳は赤かったかな、」
考えていたらまた恥ずかしくなってきたのでもう考えることをやめることにした。
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私が小学校を卒業してから2年。
彼、真無人(まなと)くんが私と同じ中学校に入学したことを入学式で知った私は、早速彼のクラスへ顔を出すことにした。
「すいませーん!真無人くんは居ますか〜!」
彼の耳にしっかり声を届かせるために私は大きな声で彼を呼んだ。
しばらくの沈黙の後、彼が私の前まで歩いてきた。
「ちょ、ちょっと、佳澄先輩!そんなに大きい声出さなくてもちゃんと聞こえますよ!」
(敬語だ…)
そう思った私は自分でも意味不明なことを口走ってしまった。
「私と話す時は敬語は禁止!わかった!?」
これでいいんだ。私は好きな人に敬語を使ってもらうほど偉い人間じゃないからね!
それはそうと、ちゃんとした用事があって私はここに来たんだ。
「真無人くんには私と同じ部活動に入ってもらいます!」
そう、恒例の部活動勧誘だ。
だけど私は帰宅部。 入部届けなんてあるはずがない。
それでも私は、あるはずのない帰宅部の入部届け(佳澄お手製)を真無人くんに手渡した。
こう見えても真無人くんは頼まれ事が断れない。そのことを私は知っているので必死に頼み込んで名前を書いてもらった。
(ちなみに、彼と下校することを目的とした部活動勧誘だ)
用事も済んだから自分のクラスへ戻る途中、「俺の部活ライフが〜!」と嘆いている声が聞こえたけど名前を書いてくれたので聞かなかったことにした。
それから数ヶ月後、私は図書館で彼の姿を見つけた。
こっそり近づいて彼の耳元で囁くように声をかけたら「うぁぁ!?佳澄先輩!?」と敬語は禁止という約束を破りながら100点満点のリアクションをしてくれた。
そのあと係の人が歩いてきて「図書館ではお静かに」と注意をされてしまった。
「ごめんね…真無人くん」
私は小さな声で謝った。
数分後、私は真無人くんの隣に座って本を読んでいた。
すると、真無人くんが私の耳元で「何読んでるの〜?」って囁いてくるという仕返しを受けてしまった!
「ビクっ!!」
思わず大きな声が出そうになるのを咄嗟に口を手で塞いでこらえる。
「もぅ!」と言うように目線を送ったらクスッと笑われた。
その顔があまりにも可愛くて…ついムスッとしたように本のページに目線を戻した。
数分後、今の時間は17時。
夕焼け空に変わっていく時間帯に私は図書館を出た。
と、彼に後ろから声をかけられた。
「佳澄先輩!仕返し大成功っす!!」
ピースを前に出しながら歯を見せて笑う彼を見て、私の彼を思う気持ちは更に強くなった。
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時が過ぎるのは早いもので、私はもう中学3年生になってしまった。
今は2月。卒業まで時間が無い中で私は彼に気持ちを伝えるか迷っていた。
「2人でゆっくり話すタイミングは…?」
一日中考えていたら下校時刻になっていた。
私は慌てて教室から出た。
すると、いつもとは違った表情の真無人くんを見かけた。
怒っているような、そんな顔。
なにがあったのか気になってしまった私は、声をかけようとした。
だけど、その場に立ち止まって考えてみた。
「もし、真無人くんが聞かれたくないことだったら不快にさせる…?」
私はあえて、なにがあったのかは聞かずに静かに彼の隣を歩くことにした。
ただ静かに、一言も話さずに寄り添って歩いた。
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月日は経って、私は卒業生。彼は在校生(2年生)として卒業式を迎えた。
卒業ソングを歌っている時、私の目線は彼の顔に留まった。彼と目が合ったのだ。
彼は泣いていた。でも、口元は笑っていた。
「真無人くん、ずるいよ…、」
歌いながら私も泣いた。だけど、口元は笑えるように頑張った。
そのあとは別れの言葉だったり、在校生の言葉とかが予行演習の通りに進んで卒業式は終わった。
数分後、真無人くんに「2人で写真を撮りたい」と声をかけられた。
「ほらほら!笑って〜!撮るよ〜!」
そんな声かけをした後に私の母が写真を撮ってくれた。
そこで私はあることを思い出した。
「真無人くんの連絡先知らないなぁ」
口をついて出てしまった。
この言葉が聞こえていたのか、彼はスマホを取り出してくれた。そして連絡先を交換した。
「よろしくね!」とお気に入りのスタンプで挨拶をした。彼もまた、スタンプで返してくれた。
卒業式を終え、家に帰った私は真無人くんとLINMを交換出来たことが嬉しくて過去最高にニヤついていた。正直、今の顔は真無人くんには絶対に見せたくない!!そのくらい酷い顔だ。もっと彼と深い関係になったら見せてもいいけど…っと、いけないけない。
明日はひとりで進学する高校まで行ってみないといけないんだから気を引き締めないと…!
こんな感じで私の中学校生活は幕を閉じた。
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私は友達に過去の出来事を全て話した。
長い話を聞いてくれた友達があることを疑問に思ったらしい。
「ねぇ佳澄、そのまなとくん?って人は今どこに居るの?」
聞かれた私はギクッとした。
「えぇ〜とぉ〜、実はそれからずっと疎遠だから分からないんだぁ…アハハァ、」
最後にわざとらしく笑ってみたが「誤魔化すな〜」と友達に頬をつつかれた。
でも、「本当に分からないんだから仕方ないよねっ!うんうん!」と再び誤魔化していたら、母から電話がきたので友達との会話はここで途切れた。
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私の過去はとても明るいと言えるようなものではない。
だけどこうして1人でも話せる相手が居ることで、私は高校生活をめいっぱい楽しもうと思えたのです。