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大宮駐屯地、第32普通科連隊所属の加瀬浩太郎2等陸尉は、機関室でじっと目を閉じている鷹野に話しかけた。それは、東京テロの英雄を純粋に知りたいと思ったからで、実際にこの計画に、鷹野を指名したのも加瀬本人であり上念の了承も得ていた。
新座貨物ターミナル駅を出発した機関車は、府中本町方面へと向かっていた。
東京ジェノサイドが発生して以来、陸路や鉄道を使っての自衛隊機材輸送は主に深夜に行われていた。
重火力や小火器に至るまで、首都圏に近い駐屯地から運び出された機材は、立川広域防災基地をはじめ、川崎広域防災拠点へと輸送された。
第2の東京ジェノサイドが発生するやも知れない現在、東京区の幹線道路や高速道は避難民達の車で溢れ返り、大混乱に陥っていた。
最後の搬出となる任務を任された加瀬率いる小隊の隊員は、皆、東京サイケデリック・クリエイターズのメンバーで構成されていた。
というのも実際問題、多くの自衛官らも行方不明となっていて、避難指示が発令されてからの人員は加瀬に一任されていた。
鷹野だけは免職処分扱いとされていた為に、新座駅からターミナル駅へと向かうスロープ高架下での合流となった。
勿論、加瀬は国からの命令に従うつもりなど微塵もなく、梶が谷ターミナル駅では水陸特務隊の反政府メンバーと合流する手筈も整えていた。
「鷹野君、君は御家族は?」
加瀬は鷹野を見て言った。
その顔が、小さな窓から溢れるオーロラの明かりに照らされていた。
加瀬は、英雄との会話を楽しんだ。
「妻がいます。お腹には赤ちゃんも」
「そうか、おめでとう」
「ありがとうございます」
機関車は45キロのスピードで。東所沢駅へと進んでいる。
加瀬は笑いながら、
「まるでゆりかごだな」
と言うと、鷹野もふふと笑って白い歯を見せた。
時刻は21:00になろうとしていた。