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【プロローグ】
東京の高層マンション。その最上階の一室は、外の世界から完全に切り離されていた。壁は分厚く、防音は最新の技術で施され、隣室の足音すら届かない。外の街のざわめきも、車の音も、夜の叫びも、ここには何一つ届かない。
その部屋に座る澪は、冷たい金属の感触を足首に感じていた。銀色の鎖が巻きつき、床の金具に繋がっている。体を少し動かすだけで、鎖が微かに音を立てる。恐怖と不思議な安堵が入り混じった感覚に、澪は心を乱される。
目の前には葵が立っていた。可愛らしい顔立ちに、時折見せる鋭い視線。柔らかな声と冷たく静かな眼差し。
「外は危険だから。ここにいれば安全だよ、澪」
その言葉は甘く響くが、逃げる自由を奪われている現実を否応なく突きつけた。
こうして二人だけの時間が始まった。澪の心は、恐怖と愛情の間で揺れ動く。
【第一章 鎖の始まり】
最初の夜、澪はベッドの縁に座り、足首の鎖を手で確かめた。冷たく、重く、ずっしりとした感触が皮膚に食い込む。抵抗すればするほど、自由を奪われる感覚が強まる。
「……これは……何のために?」
葵はベッドのそばに腰掛け、柔らかく笑った。
「守るためだよ。澪は優しくて、簡単に傷つく。だから、ここにいて、私と一緒にいてほしい」
その言葉に、澪は思わず涙を浮かべた。恐怖とともに、心の奥底でほっとする感覚も芽生えていた。
恐ろしいほどに依存されていることの重さと、その愛の温度が、混ざり合っていた。
【第一章・続き 日常と葛藤】
朝。澪はゆっくりと目を覚ます。
体を動かすと、足首の鎖が音を立てて床に擦れる。冷たくて硬い金属。動こうとするたびに、その感触が現実を突きつける。
葵はすでに起きていて、部屋の空気は柔らかな光に包まれていた。窓の向こうには東京の夜明けが淡く光り、遠くの街の騒音も届かない。
「おはよう、澪」
葵は澪のベッドの脇に座り、そっと髪を撫でる。
「……おはよう」
言葉は小さく、震えている。
朝食の準備は葵が整えてくれていた。パンの焼ける香り、カフェオレの甘い香り。澪は鎖に繋がれたまま席につく。
自由に動けない状況は息苦しい。だが、葵の手元から漂う香りや、柔らかな笑顔を見ると、不思議と心が落ち着く。
食事をしながらも、澪の心は揺れていた。
「外に出たい」という思いと、「ここにいる安心感」の間で揺れ続ける。
昼、澪はベッドで読書を試みるが、視線は鎖に釘付けだ。
手首の自由も制限され、ページをめくる指先は慎重になる。
心の中で何度も葛藤する。
――逃げることはできるのか?
――でも、もし失敗したら……。
そんな思いが頭を巡る頃、葵が近づき、澪の肩に手を置いた。
「澪、今日もここで一緒にいてくれる?」
その声には疑いも命令もなく、ただ純粋な愛情が宿っていた。
澪は小さく頷き、胸の奥が温かくなるのを感じた。
――怖い。でも、離れたくない。
日が傾き、夜になった。
澪はベッドに座り、足首の鎖をじっと見つめる。逃げたい衝動が再び胸に湧く。
窓の向こうの外界は、光も音も遠く、手の届かない世界のように見える。
それでも、どうしても外に出て自由を感じたい衝動が消えない。
しかし、葵の気配を感じると、その衝動は一瞬で萎える。
背後からの視線、微かに聞こえる呼吸の音、近くにある手の温かさ。
全てが澪を縛り、同時に包み込む。
澪は鎖を握り締め、胸の鼓動を抑えながら、やがて小さな吐息を漏らす。
――逃げても無駄だ。
けれど、ここにいるのも悪くない。
その夜、澪は初めて、鎖の重みを「守られている証」として感じるのだった。
【第二章 逃走の試みと道具の深化】
澪は再び、外への衝動に駆られていた。
夜の静けさの中、ベッドから抜け出し、足首の鎖を引き寄せる。床に金属が擦れる音が微かに響く。呼吸は荒く、心臓は早鐘を打つ。
窓のロックを押し開けようとした瞬間、背後から静かな声が響いた。
「……また逃げようとしているね」
振り返ると、葵が手に光沢のある手錠を持って立っていた。
その瞳は怒りや悲しみではなく、深い愛で満ちている。
鎖と手錠で動きを封じられ、澪はベッドの上に座らされる。
「怖かったでしょ? でも安心して。私がここにいるから」
抱きしめられた瞬間、恐怖と甘い温もりが同時に押し寄せる。
逃げ場はなく、体は縛られているのに、心は妙に落ち着く。
翌日、葵は新しい道具を取り出した。
柔らかい革の首輪。手首を固定する細い鎖。足首の鎖も少し強化され、長さを調節された。
「これは飾り。澪が私の大切なものだって証」
言葉は優しいのに、目は逃げようとする澪を射抜く。
澪は首輪を手に取り、指で触れる。冷たい革の感触が肌に伝わると、胸が締め付けられる。逃げたい気持ちと、ここに留まりたい気持ちが交錯する。
――この人に守られるなら、どんな檻でも悪くないかもしれない。
昼は映画を見ながら、澪は鎖に繋がれた足をじっと見つめる。
自由を奪われている現実と、愛されているという安心感。二つの感覚が交互に心を揺らす。
葵は澪の手を握り、耳元で囁く。
「怖いときは私のところにおいで」
澪はその声に頷き、逃走の意思は徐々に薄れていく。
けれど、心理の奥底ではまだ小さな反抗心がくすぶっていた。
夜になると、足首の鎖は再び少しだけ短くされる。手首には手錠がはめられ、自由はさらに制限される。
その束縛は怖くもあるが、同時に「守られている」という感覚を強めていく。
絆の象徴となり、澪はその重みによって守られる安心感を得るのだった。
鎖や手錠が、もはや罰ではなく、愛の証として心に響くのだった。
【第三章 日常の中の束縛と安心】
朝日が窓から差し込み、部屋を淡い光で満たす。
澪はベッドに座り、足首の鎖の冷たさに手を触れる。金属の感触は、昨日よりもずっと重く、確かに自分を縛る現実を伝える。
葵は台所で朝食を整え、パンの香ばしい香りと、カフェオレの甘い香りが部屋中に広がる。
澪は鎖に繋がれたまま、テーブルにつく。手首の自由も制限され、皿を持つ動作すら慎重になる。
「おはよう、澪」
葵は澪の隣に座り、そっと髪を撫でた。
澪は目を逸らし、頷くだけ。言葉は出ない。恐怖と安心が混じり合い、心は複雑に揺れる。
朝食を終えた後、澪は本を手に取り、ベッドで読むことにした。
ページをめくる指先は鎖の重さに注意を払いながら、ゆっくりと動かす。
外の世界のことを考えようとすると、胸が締め付けられた。
――外に出たら、また孤独や恐怖にさらされるかもしれない。
でもここにいると、誰かに完全に守られているという安心感がある。
昼には葵と映画を見た。
ベッドに並び、足首の鎖が微かに床に当たる音を聞きながら、澪は心の奥に小さな疑問を抱く。
――本当に、ここでいいのだろうか?
けれど隣にいる葵の柔らかな呼吸や、手の温もりを感じると、その疑問は霧のように消えていく。
午後になると、外の光が窓から差し込む。
街の喧騒や、他の人々の声は完全に届かない。澪の世界はこの部屋だけに凝縮されていた。
鎖や手錠があることで、自分の行動は制限される。だが、その制限はもはや不自由ではなく、安心の象徴に変わりつつある。
夜、澪はベッドに座り、足首の鎖をじっと見つめる。
手首の手錠や首輪も身につけている。外への衝動はまだ小さく残っているが、日常に埋もれるうちに薄れていく。
葵はそっと澪の肩に手を置き、囁く。
「澪、怖いときはいつでもここにおいで」
澪は小さく頷き、鎖の重みを受け入れる。
――逃げる必要はない。ここが私たちの世界なのだ。
この日々の繰り返しの中で、澪の心は少しずつ外の世界から離れ、葵と二人だけの空間に満ち足りた幸福を見出すようになる。
鎖も手錠も、罰ではなく、二人の絆の象徴となり、澪はその重みによって守られる安心感を得るのだった。
【第四章 逃走の再挑戦と深まる依存】
夜、澪はまた外に出たい衝動に駆られた。
ベッドから足を下ろし、鎖の重さを確かめる。冷たく硬い金属が肌に食い込み、体の自由はほとんど奪われていた。
窓のロックに手を伸ばす指先が微かに震える。呼吸は荒く、心臓は喉元まで跳ね上がる。
――もう一度、逃げてみようか。
だが、背後から静かな声が響いた。
「……また逃げようとしてるね」
振り返ると、葵が手錠と革の首輪を手にして立っていた。
その目は怒りや悲しみではなく、深く澪を愛する眼差し。逃げ場はなく、動こうとすればするほど縛りが強まる。
「怖かったでしょ。でも安心して。私がいるから」
抱きしめられた瞬間、恐怖と甘美な安心が入り混じり、胸が締め付けられる。
翌日、葵はさらに監禁道具を追加した。
足首の鎖は微妙に短くされ、手首にはより硬い手錠、首には革の首輪。
「これは、澪が私の宝物だって証」
優しい言葉の裏で、逃げられない現実がはっきりと突きつけられる。
昼の時間、澪はベッドに座り、窓の向こうの街を眺める。
遠くの光は美しいが、触れることはできない。
胸の奥でまだ逃げたい気持ちがくすぶるが、葵の存在と目線に触れるたびにそれは和らぐ。
――ここにいる方が安心だ。外の世界より、ずっと安全で、穏やかだ。
夜、ベッドで横たわる澪に葵が囁く。
「澪、もう逃げなくてもいいよ」
その声は命令でもなく、強制でもなく、ただ愛に満ちていた。
澪は目を閉じ、深く息をつく。
――怖い。でも、この人と一緒なら、ここで生きていくのも悪くない。
その夜、澪は初めて、自分から鎖や手錠の重みを受け入れた。
それは逃げられない恐怖の象徴ではなく、葵に守られる安心の証となった。
こうして、逃走未遂の度に監禁は深まり、二人の依存関係も濃密になっていく。
澪は逃げる意思と、ここに留まる幸福の間で揺れながらも、徐々に後者に心を委ねていった。
【第五章 共依存としての決意】
朝の光が部屋に差し込み、澪はベッドの縁に座る。足首の鎖が冷たく肌に食い込み、手首の手錠も小さく軋む。動きは制限されているが、恐怖よりも安心が心を満たしていた。
葵は朝食を整えてくれる。焼き立てのパンの香り、カフェオレの甘い香り。鎖に繋がれたまま、澪は慎重にテーブルに座る。手が自由に動かせないことは不便だが、それでも葵の隣にいる時間は、奇妙な安らぎを与えてくれた。
「おはよう、澪」
葵は微笑み、髪を撫でる。
「……おはよう」
言葉は小さく震え、胸の奥に恐怖と甘美な安心が交錯する。
昼、二人はベッドで映画を観る。
足首の鎖が微かに床に当たる音、手首の手錠の軽い軋み。全てが二人の生活のリズムとなる。澪は心の奥で、まだ逃げたい気持ちが微かに残るのを感じるが、葵の存在と手の温もりでその衝動は薄れていく。
夕方、外の光が窓から差し込み、街の景色は遠くに霞む。
澪はベッドに座り、窓の外を見つめるが、もう外の世界を欲する気持ちは弱まっていた。
鎖や手錠が自由を奪う一方で、安心感と愛情を深く感じるようになっていた。
夜、ベッドで葵に抱かれ、澪は囁く。
「僕……もう外に出なくてもいいかも」
葵は微笑み、額に唇を重ねる。
「その通り。ここがあなたの世界。私もずっとそばにいる」
その瞬間、澪は決意する。
――ここにいることが、私たちにとっての幸せなんだ。外の世界はもう必要ない。
鎖や手錠、革の首輪は、もはや拘束ではなく、愛の証。二人だけの密室は閉鎖的でありながらも、安心と甘美な幸福を提供する空間となった。
日々は同じように過ぎていく。朝の香り、昼の映画、夜の抱擁。
日常の一つ一つが濃密で、澪の心を満たしていく。
逃げたい衝動は、もはや微かにくすぶる程度で、ほとんど消えていた。
澪は鎖を見つめ、手首の手錠を握り、革の首輪に触れる。
その重さを、もはや恐怖としてではなく、愛として受け入れた。
外の世界はもう必要ない。二人だけの空間、閉じられた高級マンションは、二人の楽園になったのだ。
澪の心は、外に出る自由を捨てる代わりに、葵との甘美な共依存に満たされていた。
夜、ベッドで二人は寄り添う。鎖の音、手錠の軽い軋み、革の首輪の感触。全てが二人の幸福のリズムになり、外界の喧騒は永遠に届かない。
こうして、二人は閉じられた空間の中で、共依存として生きることを選んだ。
檻の中で見つけた幸福は、外の世界では決して得られないものだった。
【第六章 閉じられた楽園と幸福】
澪は朝日が差し込む部屋で、鎖と手錠、首輪の感触を確かめる。冷たく硬い金属の重みが、もはや恐怖ではなく、安心感を伝えてくる。
葵は朝食を整え、柔らかな香りが部屋を満たす。澪は鎖に繋がれたまま、テーブルにつく。手首の自由は制限されているが、隣にいる葵の存在が胸を温める。
「おはよう、澪」
葵は微笑み、髪を撫でる。
「……おはよう」
澪は小さく頷き、胸の奥に温かさが広がる。
昼には二人で映画を観たり、本を読んだり、ベッドで静かに過ごす。
足首の鎖が床に擦れる音、手首の手錠の軋む音、革の首輪の柔らかい感触。全てが二人の生活のリズムとなった。
外への衝動は微かに残っていたが、葵の手の温もりに触れるたびに消えていく。
夕方、澪は窓の外の街を眺める。
遠くに見える光は美しいが、触れることはできない。
しかし心はもはや外には向かない。
――ここにいる方がずっと安全で、幸福なのだ。
夜、澪は葵に抱かれ、囁く。
「僕……もう外に出なくてもいい」
葵は微笑み、額に唇を重ねる。
「その通り。ここがあなたの世界。私もずっとそばにいる」
その瞬間、澪は決意する。
――ここで生きることが、私たちの幸福なのだ。
二人の時間は、繰り返される日常の中で濃密さを増す。朝の香り、昼の映画、夜の抱擁。
日々の小さな行為が、心に満たされる幸福を与える。
鎖や手錠、革の首輪はもはや束縛ではなく、愛の証。
澪の心は外の世界を忘れ、二人だけの空間に満たされる。
夜、ベッドで二人は寄り添い、鎖の音、手錠の軋み、革の首輪の感触を感じる。
すべてが二人の幸福のリズムとなり、外界の喧騒は届かない。
こうして、澪と葵は共依存として生きることを選んだ。
閉じられた高級マンションは二人だけの楽園となり、檻の中で見つけた幸福は外の世界では決して得られないものだった。
鎖の重みが愛に変わる瞬間、手錠の窮屈さが安心に変わる瞬間、革の首輪の締め付けが幸福の証に変わる瞬間。
澪は穏やかに目を閉じ、葵の腕の中で心からの安堵を感じる。
二人はここで生きる。外界の自由ではなく、二人だけの幸福の中で。
檻の中の幸せ。それは恐怖ではなく、甘美で濃密な愛だった。
――そして二人は、永遠に共依存として生きることを選んだ。
──完