テラーノベル
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「なぁおいクロさんやい、大丈夫か~? 昼休みだぞー? 購買行くぞー?」
友達に声を掛けられて、ノソリ頭を上げた。
あぁ、不味い。
また授業中に居眠りをかましてしまったらしい。
ここ最近、9Kこと兄貴から教育し直して貰っている日課が続いている為、昼間はとにかく眠い。
というか、物凄く体力を持っていかれるのだ。
兄貴ならスパッと当てる所を、俺は何発も使って、更には時間を掛けてやっと。
むしろ集中力が切れて、全然当たらない事だって毎度発生するくらいだ。
そんな自分に苛立ち、こんなんでシックスに勝てるのかって焦燥感ばかりが強くなっていくのだが。
「ガンサバにガッツリハマるのも良いけど、あんまりのめり込み過ぎるなよ? あのゲーム、全然システムアシストないからガチで“来る”ぞ。本当に平気か? 傍から見ても疲労困憊だぞー?」
もう一人の友人も、少々心配そうな表情で此方を覗き込んで来た。
出っ歯とグレー。
ゲーム内だとあんな感じだけど、リアルでは俺同様オタクって感じの普通の高校生。
出っ歯に関しては、リアルとVRでテンションが違い過ぎる為、たまにバグるけど。
「二人は、アレからあんまりプレイしてないよね。ログインだけはしてるみたいだけど……結構被害デカいの?」
以前のイベント、賞金首のチーム戦。
あそこで曲がりなりにも“結果”を出してしまった俺等のチームには……運営側サポートが入る程に、ヘイトが集まったと言って良いだろう。
知らない人からダイレクトメールが届くのなんて毎日だし、罵倒や暴言が書かれている事も少なくない。
お前等はマグレで勝っただけだとか、プレイヤー同士のトーナメントさえ生き残れない奴がイベントを荒らすなとか。
それはもう、色々と書かれていた。
あの時の賞金首チームで言うと、これまでにキルログを残していなかったのはシックスとナイン。
兄貴は目立たないのが仕事って感じではあるんだけど、シックスの方は全く別だ。
だからこそ、ガンサバのアイドル的な扱いになり始めており、その分反発も出たって訳だ。
こういった事もここ最近のストレスに加算され、もはや溜息しか零れない毎日。
昨日は白川さんも久しぶりにログインしてくれたのに、すんごく格好悪い所を見せちゃったし。
今日何度目になるか分からないため息を零しつつ、自分の机に顎を乗っけながら脱力していると。
「まぁ、NPCをガッツリ導入して場を荒らしたからな。他の参加チームやら、有名どころのプレイヤーなら、そっちファンからも相当恨みを買っただろうし。こればっかりは時間が解決してくれるのを待つしかない、だろ? あぁちなみに、俺は別ゲーでレアキャラ引いたから、ちょっとそっちに時間使ってるだけ」
とか何とか、シレッと言い放つグレーだったが。
実際のところ、あの環境でプレイするのは色々思う所があるのだろう。
というのと、件の戦闘は本気でゲームの所持金を全て使う勢いで武装を集めたからね……。
普通にゲームをするにしても、また小遣い稼ぎから始めないといけないのが面倒になって来ている所もあるのだろう。
だからこそ、ログインボーナスだけを貰って撤退。
こうなってしまうと、このままゲームから離れてしまう恐れもあるのだ。
だからこそ、誹謗中傷騒ぎは早く収まって欲しい所ではあるのだが……。
「俺の方は、まぁアレだな! シックスのハンドガンドロップしたぜ! って大々的に公表したら、滅茶苦茶シックスのファンからアタック掛けられてる! 正直、めっちゃ怖い! 流石にテンション上げ過ぎたわ!」
「むしろお前のせいで余計なヘイト買ってんだよなぁ……俺等の行為は一応規定範囲内だし、誰がどう見てもラッキーパンチだったって分かるのに。どこかの中二病がデカい口叩くから」
「正直、すまんかった! 煽り過ぎたわ! あの、どっちか……シックスのハンドガン、要る? もはやログインした瞬間から狙われるレベルでさ、気が気じゃないのよ。段々落ち着いて来たけど、まだ狙って来るヤツ多くてさぁ……」
ゲーム内なら自信満々の出っ歯だったが、実害にあった途端に怖くなったらしく。
リアルではずっとこの調子なのだ。
試合後に受けたインタビュー的な、そういう場所で。
俺達なんて運が良かっただけですって謙虚にしていれば良かったものを。
コイツ、周囲のプレイヤーを煽り倒す様な発言をした上に……「俺はシックスを超えたハンドガンマスターだ!」みたいな事を生放送で言っちゃったからね。
そりゃヘイト買うでしょって感じなんだけど、とりあえず先程の質問に対して静かに手を上げてみると。
「お、おぉ!? そんじゃクロのアカウントに銃送っておくから! 俺、もう持ってませんって言って良いよな!? 正直ヤベェってシックスの人気。俺等に対してそんな事をやってる奴等に運営が直接動いたり、賞金首まで使って対処してるって話だぜ? 皆どんだけ熱狂的なんだよ……」
とか言いつつ、前回のドロップ品であり、そして出っ歯の元に舞い込んだシックスが使っているハンドガン。
それを此方のアカウントへと転送したらしく、俺のスマホからプレゼント受け取りの通知が。
#このキャラでログインしたい
298
スナイパーだから、コレの出番はあんまりないかもしれないけど。
しかしながら、シックスの……そして、白川さんのお兄さんが使っている武器だというのなら。
少しでも対等になる為に、同じ物を使いたいというもの。
俺には彼ほどの近接戦なんて出来ないし、その後に見せた活躍からするに。
一度やられた事で、プレイヤーからは“シックスが本気になった”なんて言われているくらいだ。
あの実力を見せられると、俺なんて……本当に足元にも及ばないんじゃ――
「く、黒沢君……あのぉ……」
オタク三人衆の会話が繰り広げられていた所に、突然女子の小さな声が混じって来た。
そして俺に声を掛ける女子など、普段は居ない。
しかしながら、唯一、更には本当~にたまに声を掛けてくれるその声は。
思わず、ガバッと上体を起こしてしまう相手の声だったのだ。
「え、えと……その。お約束した通り、作って来たんですけど……今日で、良かったでしょうか? あっ、えっと! 自分のお弁当持って来てたりとか、学食へ行くというのなら、その……無理にとは、言いませんので」
学校指定の鞄を胸に抱きながら、白川さんがプルプルしていた。
多分、二人と話している所に声を掛けるのが気まずかったのだろう。
という事で、ガタッと席を立ちあがってから。
「全然、大丈夫です! 今日、お昼無いです! 欲しいです!」
自分でも良く分からない短文発言をしてみると、白川さんはホッとした様に表情を緩め。
周囲に居る二人からは、驚愕の眼差しを向けられてしまった。
「く、くろ……貴様、まさか……今の白川さんの発言からするに、まさか……」
「止めろ、俺等の出る幕じゃない……今日コイツは、購買にはいかない。それだけなんだよ……」
そんな事を言いながら、グレーが出っ歯を引っ張って教室を出て行った。
スマン、友よ。
俺は今日、恋愛ラノベ主人公みたいなイベントが発生してしまったんだ。
いやうん、白川さんが“そういう気持ち”じゃないってのは、重々承知してるんですけどね?
むしろ、昨日の話は本気だったのか……と、心の底から感動している所なんですけどね?
「え、と……お友達と、食べる予定でしたか? でしたら、私に気にせず、皆さんと……」
ちょっとだけ気まずそうに、胸に抱いた鞄をギュッとする白川さん。
駄目だ、もう。
なんかシュンとした小動物みたいで、これすらも可愛い。
シックス、絶対コロス。
そしてお兄さんに俺を認めてもらった後、ちゃんと白川さんに気持ちを伝えるんだ。
多分本人からしたら、俺なんて友達の一人でしかないのだろうけど。
それでも、こっちは特別に思っているんだって、ちゃんと言うんだ。
「いや、ううん、全然! 普段から一緒ってだけだから、ホント、気にしないで!」
「で、でもやっぱり……あ、そうだ。でしたらお弁当だけお渡しするので、黒沢君は皆さんと一緒に――」
「白川さんが作ってくれたお弁当、超楽しみにしてたから! 出来れば、ですね……今日は一緒に食べて……もらえると、嬉しい、といいますか。白川さんと一緒に食べたいです!」
という事で、カタコトになりながらも思い切り頭を下げてしまうのであった。
やっぱり白川さんは凄い。
どんなに疲れていようと、気持ちが落ち込んでいようと。
ちょっと声を掛けてくれるだけで、俺はこんなにも元気になれるんだから。
とはいえ流石に、俺達は二人共結構“日陰者”的な雰囲気がありまして。
教室で、堂々と男女二人でお弁当を広げる度胸はございませんで。
どうにかこうにか、人目の無い場所へと移動していくのであった。
段々俺にも慣れて来てくれたのか、白川さんが後ろにピタッと隠れる様にくっ付いた状態で。
もうっ! なんというか、もうっ!
何でこの子、こんなに保護欲を掻き立てられるんだろう。
女子耐性皆無の男子高校生にとっては、これだけでも結構グッと来てしまうのです。
コメント
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うわ、59話お疲れさまです!今回は日常パートでほっこりしましたね。ヘイト管理の話題はリアルでしんどそうだけど、白川さんとのお弁当イベントが尊すぎて……「今日、お昼無いです!欲しいです!」の直球告白(?)に思わず笑顔になりました。出っ歯の反省やグレーの冷静さもキャラ立ってるし、シックスへのライバル心と白川さんへの片思いが交錯するクロの心情が甘酸っぱくてたまらないです。次も楽しみにしてます!