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それは、いつのことだったろうか……? 空っぽの部屋でひとり、私は本を読んでいた。
窓の外では雨が降り続いている。
部屋の中はとても静かだった。
だからだろうか……
耳鳴りのような音が聞こえる。
最初は気にもならなかったのだが、だんだんと強くなってゆく……。
それに呼応するようにして、今度は幻聴まで聞こえ始めた。
遠くで鳴っているはずの雷の音と、すぐ近くで響いているはずの自分の鼓動が重なっているように感じる……。
身体の内側からも外界からも響く騒音のせいで、周りのことがよくわからなくなる……。
そして、次第に周囲の状況が見えなくなっていく……。……。
ここはどこだろう? 目の前に広がる白い霧の中にいるようだ。
目を開けていても閉じていてもよくわからない……。
手を伸ばせば届きそうな距離にいる人の姿も見えないし、足元に転がっていた石ころだって見つけられない……。
音もなく広がる暗闇の世界……。
ここが何処なのかも、自分が何をしていたかも思い出せない……。
ただひとつわかることは……とても嫌な気分だということだけ。
このままではいけないと思うけれど、どうすればいいかわからなくて、動くことができない。
頭の中ではずっと警笛のようなものが鳴り続けているのに……。
それでも、時間が経つにつれて、少しずつ……
歪んでいたパズルが、組み合わさっていくように……
様々なことが分かってきたよ。
まず最初に分かったことは、 この世界にはもともと「形」がなかったということさ。
だが、「かたち」という概念を生み出したことで、 世界はこの姿になったんだろうね。
つまり、世界の創造者は人間ではなく、 人間の想像したものということになるわけだ。
次に理解できたのは、 なぜこんなにも世界が歪んでしまったかということだった。
それはおそらく、あの忌まわしい事件が原因だったと思う。
あれが起こったこと自体については、 特に驚くことはない。
もともと存在していたものなんだしね。
ただ、それがここまで歪みを大きくしてしまったことには、正直驚いた。
僕自身でさえ、予想していなかったぐらいだからね。
あの事件は、本当に予想外の出来事だったんだよ。
だが、その原因を突き止めたことで、 僕はようやく納得することができた。
どうしてこうなったかをね……。
原因となったであろう、あの夢の中にあった、 最後の断片たち。
それらは、すでに失われてしまったようだが、 それでもまだいくつか残っているはずだ。
それらを繋ぎ合わせてみれば、あるいは……
答えを得られるかもしれない。