テラーノベル
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りん
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『今日帰り遅くなる』
「…ああ」
『行ってきます』
いつものようにそう言って外に出る。見慣れた風景を歩いてある場所へ向かう。今日、違うところがあるとすれば___
「君が凛くん?」
ある場所で人を待っていると、声をかけられる。事前に知っていた情報と一致する見た目。
(コイツか…)
声は出さずに、静かに頷く。目の前の男は顔から足まで順に見たあと満足そうに「いこうか」と告げた。男についていこうとしたとき、ふと視線を感じて後ろを振り向いた。
(気のせい、か__)
拭いきれない不安を抱えながらも、俺は男のあとに続いた。
「楽しかったよ。じゃあこれ、今日の分ね?」
差し出されたものを受け取り、帰路へつく。今更ながら、罪悪感が湧き出る。していることは愛する兄への裏切りで、最低なことだとわかっている。それでも、ここ半年ほどできていない行為への欲求はそう簡単に収まるものではなかった。
(最低だ、俺)
できることならば兄としたい。凛、凛、と自分のことを呼び、甘やかしてくれた少し前のことが愛おしい。でも、できないのはわかっているから。普段の兄の優しさでは我慢できない自分が悪いけれど。
(ごめん、にいちゃん___)
心のなかで謝罪を続けながら俺は家に戻った
コメント
1件
うわあ、これ…すごく切ない始まり方ですね。冒頭の“今日帰り遅くなる”という兄のメッセージと、“行ってきます”の距離感がもう、胸に刺さりました。「できることならば兄としたい」という凛くんの本音と、でも叶わないから別の相手を求めてしまう罪悪感…その葛藤が静かに、でも重く描かれていて、一瞬で引き込まれました。続きがすごく気になります。とばさんの繊細な空気感、とても好きです。