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(SE: 食器の音、パンを焼く匂い)

(朝食時。ダイニングキッチンは相変わらず賑やかだが、どこか疲労の色が見える。りゅうきはキュウリの漬物をご飯に乗せている)

りゅうき

んん~!やっぱ朝はキュウリと米に限るぜ!……そういや、昨日の一件、ニュースになってたな。

ニュースキャスター(ナレーション)

(声のみ)

……佐世保市内で発生した謎の集団幻覚事件、および不審な黒い影の目撃情報について、警察は引き続き調査を進めております。市民の皆様には、デマに惑わされず冷静な行動を呼びかけております。

かいと

(パンを口いっぱいに頬張りながら)

デマってか……がっつり悪霊だったじゃねえか。

ひろふみ

(静かにパンを食べていたが、ふと顔を上げる。彼の耳には、ニュースを聞いている皆の心の声が流れ込んでくる)

(心の声:『デマ?いや、あれは現実だ』『怖い……』『また出るのか?』『能力のこと、誰かに話したいけど……』)

……(眉間にしわを寄せ、パンを置く)

すいれん

(ひろふみの様子に気づき、心配そうに)

ひろふみくん、どうしたの?顔色が悪いよ?

ひろふみ

(小さくため息)

いえ……。少し、頭が痛くて。皆さんの『心の声』が、いつもより騒がしいみたいで。街の人の不安も、響いてくる。

れあ

(りゅうきのキュウリ漬けをちら見しつつ)

まーた変な能力使ってんのかよ、ひろふみ。他人の心なんて覗いて楽しいか?デリカシーねぇな。

りこ

(れあの隣で、パンケーキをナイフで切り分けながら)

れあ、そういう言い方ないでしょ。ひろふみくんも大変なんだから。

ひまり

(自分のパンケーキにシロップをたっぷりかけて)

ふーん。人の心読めるんだ。じゃあ、私のパンケーキ、誰が取ろうとしてるか分かる?……あ、これ、ひでゆきのパンケーキだった。

ひでゆき

(慌てて自分の皿を抱え込む)

ひまり!俺の今日のヒットの糧だぞ!

れいか

(自信満々に)

皆さん、心配はいりません!私の意見では、きっともう悪霊は出ません!断言します!

かれん

(れいかの言葉に、冷めた視線を向ける)

……「きっと」では、人々は安心しないわ。言葉は、そう単純じゃない。

りゅうき

お、かれん、なんかカッコいいこと言ってる!

【シーン2】 街中 - 擬態悪霊の暗躍と、言葉の無力さ

(SE: ざわめき、人々の足音)

(日中。佐世保の商店街。人々は表面上は平静を保っているが、どこか疑心暗鬼になっている。能力者たちは、クロードから情報収集を命じられ、数人ずつで街を巡回している)

(ひろふみ、かれん、すいれんの3人)

すいれん

(笑顔で)

ひろふみくん、かれんちゃん、お疲れ様!今日も街の様子を見て回ってるんだよね?

ひろふみ

はい。人々の心には、まだ不安が根強く残っています。疑念、不信感……。特に、最近は隣人を疑うような声が増えています。

かれん

それは悪霊の仕業ね。きっと、彼らは人々に不信感を植え付けて、社会を分断しようとしている。

(その時、前から歩いてくる通行人AとBが、すれ違いざまに耳打ちしているのが聞こえる)

通行人A

……ねぇ、昨日もあの人、変なところで立ち止まってたのよ。まさか、あの噂の……?

通行人B

うちの近所でも、急に物を隠す人がいるって。もしかしたら、悪霊と繋がってるんじゃ……。

ひろふみ

(通行人Aの心を読む。心の声:『怖いわ。もしあの人が悪霊だったらどうしよう……』)

(顔をしかめる)

すいれん

(通行人Aの心の感情を察知し、悲しそうな顔で)

こんな風に、みんながみんなを疑い始めたら……。

(かれんが、その通行人Aに近づく)

かれん

(穏やかな口調で)

あなたの中に、疑念の種が植え付けられています。ですが、それは真実ではありません。あなたの隣人は、あなたを裏切ったりはしません。

通行人A

(かれんの言葉に一瞬戸惑うが、すぐに顔を曇らせる)

……何よ、急に。あんたに何が分かるって言うのよ。よけいなお世話だわ。

(通行人Aは、かれんを避けるように足早に去っていく)

かれん

(残された言葉に、唇を噛む)

……通じない。言葉を変える能力でも、心の奥底にある不信感までは、変えられない……。

すいれん

(かれんの肩にそっと手を置く)

大丈夫だよ、かれんちゃん。気持ちは伝わらなくても、言葉には力があるから。

(その頃、別の場所。りゅうき、かいと、こうき、たつきの4人組)

りゅうき

なあ、なんか最近、街の空気がギスギスしてね?キュウリを買いに行っただけなのに、八百屋のおばちゃんに不審な目で見られたぜ……。

かいと

(透明になりながら、商店街の裏路地を覗き込む)

お、あそこに肉まん屋が!偵察ついでに、ちょっとだけ……。

こうき

(かいとの足元に手をかざす)

……無駄だ。お前の食い意地の縁、断ち切っておいた。肉まん屋には辿り着けない。

かいと

(透明なまま、急に肉まん屋の方へ向かって行けなくなる)

え?なんで!?足が勝手にこっちに戻る!?

たつき

(ニヤニヤしながら、こうきに)

兄貴、ちょっと意地悪すぎね?(かいとの足と、肉まん屋の暖簾の間に、縁を「結びつける」ように手をかざす)

ほらよ、これで肉まん屋に一直線だぜ、かいと!

かいと

(透明なまま、肉まん屋へ猛ダッシュしていく)

おお!たつき、サンキュー!

こうき

(舌打ち)

たつき、俺の能力に逆らうな。

たつき

兄貴の能力が間違ってんだろ。人を縛り付けんなよ。

(りゅうきは二人の喧嘩に慣れたように、呆れた顔で空を見上げている)

【シーン3】 クロードの作戦室 - 心を読む者への指令

(SE: パソコンのタイピング音、無線通信のノイズ)

(共同生活を送る一軒家の地下にある、簡易的な作戦室。クロードがPCの画面を見ながら、ひろふみに話している)

クロード

……ひろふみ。最近の悪霊は、物理的な攻撃だけでなく、人々の『心』に干渉してきている。特に、不信感や疑念を増幅させているようだ。

ひろふみ

(深刻な顔で)

はい。私にも、それがはっきりと伝わってきます。街全体が、少しずつ、負の感情で蝕まれているようです。

クロード

そこで、君に頼みたいことがある。君の『心を読む』能力は、悪霊がどこで、どのようにして人々に干渉しているか、その『意図』を探る上で最も有効な手段だ。

ひろふみ

……悪霊の意図、ですか。

クロード

そうだ。人間社会に深く潜り込み、混乱を招いている悪霊は、おそらく擬態型だ。人間に紛れている可能性が高い。君の能力で、彼らがどこに潜んでいるか、彼らが何を考えているのか、探ってほしい。

ひろふみ

……分かりました。やってみます。

クロード

ただし、無理はするな。悪霊の負の感情に、君の心が侵食される危険性もある。

ひろふみ

(頷く)

【シーン4】 夜の街角 - 言葉の壁と、悪霊の幻覚

(SE: 夜の静けさ、遠くで犬の吠える声)

(夜。ひろふみ、かれん、すいれんの3人が、人通りの少ない街角を歩いている。ひろふみは目を閉じ、集中して周囲の心の声を探っている)

ひろふみ

……このエリアに、強い負の波動を感じます。特に、誰かを激しく『憎む』ような感情が……。

すいれん

(ひろふみの隣で、彼の心に寄り添うように)

無理しないでね、ひろふみくん。

(その時、道の向こうから、一人の通行人Aがやってくる。彼の表情は暗く、まるで何かに怯えているようだ。しかし、ひろふみには、その男の心から強い『悪意』が発せられているのが感じ取れる)

ひろふみ

(目を開け、通行人Aを見る。心の声:『……違う。この男の心は、憎しみで満たされている。これは、擬態悪霊だ!』)

かれんさん!すいれんさん!あれは……!

(通行人Aが、かれんたちに気づき、顔を歪ませる。その体が、微かに黒い靄を纏い始める)

悪霊(擬態型)

(通行人Aの声で、低く)

……お前たち。我らの邪魔をするな。人々は、互いを疑い、争うべきだ。それが、お前たちの真の姿だ!

かれん

(悪霊に向かって、毅然とした声で)

違う!人間の心は、憎しみだけじゃない!あなたは、その間違った言葉で、人々の心を惑わそうとしているだけだ!

(かれんが能力を発動させる。悪霊の言葉が、突然、「人々は、互いを信じ、助け合うべきだ!」という、正反対の言葉に変わる!)

悪霊(擬態型)

(混乱したように)

な……!?私の言葉が……!?

すいれん

(悪霊の心に、動揺と混乱が広がっていくのを感じ取る)

効果がある!かれんちゃん!

(悪霊は混乱しながらも、周囲の景色を歪ませ、かれんたちに幻覚を見せ始める。目の前に、お互いが醜い姿に変貌した幻影が現れる)

れあ(幻影)

(毒々しい緑色に変色し、牙を剥く)

お前らなんか、裏切り者だろ!

りゅうき(幻影)

(キュウリの頭に変形し、憎々しげに)

俺のキュウリを奪うな!

ひろふみ

(幻覚に一瞬ひるむ)

これは……!

かれん

(幻覚を見ても、冷静さを保つ)

こんな幻覚で、私たちの絆は壊れない!あなたは、言葉の真の意味を理解していない!

(かれんが再び能力を発動させ、幻覚を打ち消すような言葉を投げかける。幻覚が揺らぎ、消えていく)

ひろふみ

(心を読む能力で、悪霊の焦りを読み取る)

悪霊は、言葉の力に動揺しています!そして、幻覚が消えても、まだここにいる……!

すいれん

(笑顔で、無線機を取り出す)

クロードさん、ひろふみくんが擬態悪霊を見つけました!かれんちゃんの言葉も効いてるみたいです!

(悪霊は、焦りと共に、その擬態を解き、醜い本来の姿を現す。その瞬間、他の能力者たちも現場に急行する準備を始める)

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