「食事の用意が出来ました」
クルカが声を掛けて来た。もう用意が出来たらしい。全く優秀な少女である。
「ありがとう、クルカ。行きましょう?すまない君」
「……コク」
ダイニングに並べられた今日の昼食はパンとスープ、サラダにグリルチキンだった。
「ふふっ、歓迎されてるわよ」
エウリがそう笑う。すまないは首を傾げた。
「いつもより少し手が込んでるもの」
スープとグリルチキンを差してそう言う。すまないは首を傾げつつそっと口に運ぶ。
「美味しいかしら?」
エウリはすまないにそう問う。しかしすまないは顔を俯けたまま中々反応しない。反応しないとどうだったのか分からないので少し困っていると、小さな水滴がすまないのズボンに落ちて丸いシミを作った。
「?」
ポロポロ……
すまないが大粒の涙を流し始めた。
「え!?ちょっ、どうしたの???」
落ち着かせようと背中をさするがすまないは一向に泣き止まない。
「ど、どうしたの?」
「……なぃ……」
「何???」
「……わから……ない……」
泣いている理由は分からないと言う。泣いていると言う事は何かしら理由があるはずなのだ。しかし、自分でも分からないのなら無理に気付かせる必要も無いと考え、それ以上は詮索しなかった。
「……お墓……つくりたい……」
すまないがふと呟いた。
「お墓?」
「……うん……父さんと、母さんの……」
「じゃあ、行こうか。すまないくんの故郷に」
エウリとすまないはみずほの国へと向かう。蛇一族のエウリからすれば敵地も良いところだし、すまないも自分を見捨てた同族が暮らす憎き土地であるが、父親と母親の遺体をそのままにしておくわけにはいかないのでなんとか来たのだ。
「……こっち……」
すまないは震える足で自分が生贄にされた場所に足を運ぶ。たった数日前の事である。まだ全く治っていない心の傷の瘡蓋が嫌でも剥がされ、血が噴き出す。
「……っ……」
足が竦んで体の震えが止まらなくなる。エウリが背中をさすりながら
「……無理しなくていいのよ?」
と言う。しかしすまないは首を振る。
「……それは、いや……父さんと、母さんは……俺を、守ろうとして……」
そう言って一歩一歩前に進む。
「無理だけは絶対にしないでね?」
すまないは無言で頷き、自分が立たされた所の前に行った。
「……あ……そ、んなっ……」
すまないの両目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。それは止まることを知らず足元にシミを作った。
「……そんな……酷い……」
エウリも口を抑えた。
____すまないの両親の遺体は
野ざらしにされてあった____
「……そんな……酷いよ……」
すまないはそう呟いて意識を失った。
コメント
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えぇ?!すまない先生の両親! 嘘でしょ…死体野ざらしとか酷すぎる…すまない先生の気持ちを思うと泣ける…